2009年5月アーカイブ

発生途上のインターフェロンγ遺伝子座におていコヒーシンはシスの相互作用の制御にかかわる  インペリアルカレッジ Merkenschlagerら nature 2009.May 30, e-pub

 

コヒーシンによる姉妹染色体の接合は、染色体分離と複製後のDNA修復に重要な役割をはたす。最近の解析は、遺伝子発現制御におけるコヒーシンの役割を示している。これはCTCF結合サイトと、DnaseI感受性サイトの一部へコヒーシン複合体が動員されることにより担われていると考えられている。CTCFは、プロモーターとエンハンサーの相互作用を制御するインスレーターであり、コヒーシンはエンハンサー効果をブロックするが、そのメカニズムは不明である。

我々は、今回、コヒーシンが発生途上で制御されているインタフェロンγ遺伝子領域においてシスの染色体の立体的な位置関係を制御していることを報告する。このコヒーシンの作用は発生にみならず病気にも重要である。

 

図1a マウスのB3-preG cell lineとヒトゲノムでのインタフェロンγ遺伝子座でのコヒーシンとCTCF結合(rad21とCTCFの結合をlog2enrichmentで表示)は、マウスでは-73kbと+66kbにある。インタフェロンγの遺伝子座では、保存されたコヒーシン結合サイトは第一イントロン+1.5kbにある。この遺伝子座では、多数の制御領域がコーディング領域から離れたところにある。ヒト細胞では、-63kbと、保存された結合が+1.5kbと+119kbに見られる。

-63kbと+1.5kbにはH2AZとH3K4me3の結合も見られる。

隣のIL26はマウス(げっ歯類)では偽遺伝子でヒトでは機能している。

図1b  chip-PCRでのrad21(上)とCTCF(下)のヒトエフェクターメモリー細胞のCCR5陽性Th1細胞(赤)とCRTH2(プロスタグランディンD2受容体;別名CD294またはGPR44)陽性Th2細胞(黒=)、コントロールは293T細胞(白)、CD4 T細胞

-63kbには古典的CTCF結合配列があり、マウスとヒトで59%保存されている。

+1.5kbと+119kbにも保存されている領域がある。この結合は特に、ヒト抹消血から分離したCD4陽性細胞(未分極)にも見られる。この細胞はTH1とTh2になる前の細胞である。Th1になると結合が特に強くなる。図1c ヒトエフェクターメモリー細胞の分離をすると、TH1ではインタフェロンγのRNAが多いがTH2ではコヒーシンの結合も増加せず、インタフェロンRNAも増加しない。。

 

図2 1.5kbサイトをバイトとした3Cでの-63kbと+119kbの接近が赤のTH1細胞でだけみえる。2b.細胞の核の大きさはTh1とTH2でかわらない。2つの遺伝子ローカスは別々になるので、シスに起こっている。2c  G1フェーズでも起こっている。

 

図3 Th1細胞では、rad21のsiRNAでの3C接近の消失と、basal IFNG発現誘導の低下がみられる。ネガコンとしてIL2の発現はかわらず、ポジコンのPaternal アレルのIGF2の発現は増加する。

 

これらの結果をまとめると、CD4 T細胞のTH1への分化は、コヒーシンの結合の-63kbと+119kbのサイトへの増加からlong range interactionを増加させ、発現量を増加させる。

 

こうした現象は、IGF2/H19, IL4,IL5, IL13 and IFNG MHC class II遺伝子ほかのローカスでもみられる。

(児玉)
A Role of DNA-PK for the Metabolic Gene Regulation in Response to Insulin

Roger H.F. Wong,1,2 Inhwan Chang,1 Carolyn S.S. Hudak,1 Suzanne Hyun,1 Hiu-Yee Kwan,1 and Hei Sook Sul1,2,*

1Department of Nutritional Science and Toxicology

2Comparative Biochemistry Program

University of California, Berkeley, Berkeley, CA 94720, USA

Cell 136, 1056-1072, March 20, 2009

 

脂肪酸合成酵素(FAS)は脂肪合成の中心的な酵素であり、摂食およびインスリンシグナルによって転写活性化される。転写因子のUSFはFAS遺伝子の転写活性化に必須で、本論文において摂食に応答してDNA-PKがPP1によって脱リン酸化され、USFがDNA-PKによってリン酸化されることが引き金となってスイッチ様のメカニズムが生じることを報告しています。絶食下では、USF-1はHDAC9によって脱アセチル化されており、プロモーターの不活性化を引き起こしている。対照的に、摂食によってUSF-1へのDNA-PKのリクルートメントが誘導されてリン酸化され、それによってP/CAFがリクルートされた結果としてUSF-1がアセチル化されてFASプロモーターが活性化される。USFに結合しているDNA切断/修復コンポーネントによってFASの活性化時に一過性にDNA切断が誘導される。DNA-PKが欠損しているSCIDマウスでは、摂食誘導性のUSF-1のリン酸化/アセチル化、DNA切断、およびFAS活性化による脂肪合成が障害されており、結果としてトリグリセライドレベルが低下している。これらの結果は、DNA損傷反応の中心的なキナーゼが代謝遺伝子の活性化に寄与していることを示している。

 

図1 USF-1結合タンパクの精製

(A) 左から、USF-1結合タンパクリスト。USF-1溶出生成物のSDS-PAGE(銀染)。TAP溶出物のイムノブロット。293細胞をUSF-1モノクローナル抗体にて免沈後のイムノブロット。293F細胞からのTAP溶出物のイムノブロット。(B) RT-PCRによる発現チェック。(C) USF-1結合タンパク質の-444 FAS-CATプロモーター領域のChIP(FAS-CAT promoterトランスジェニックマウス)およびmGPATプロモーター領域のChIP(野生型マウス)。(D) 定量的real-time PCRによる肝臓におけるFASおよびGPATの絶食および摂食時の遺伝子発現変動。(E) FLAG-tag USF-1を過剰発現させたHepG2からの免沈イムノブロット。(F) -444(-65m) FAS-CAT promoter過剰発現マウスの肝臓を用いたChIP。USF-1のsiRNAによるノックダウンを行ったHepG2細胞でのChIP。(G) -444 FAS-CATプロモーターおよび-444 (-150m) FAS-CATプロモータートランスジェニックマウスの肝臓を用いたUSF-1結合タンパク質のChIP。(H) -444 FAS-CATのDNA切断、内在性FASプロモーターの切断、DNA-PKおよびTopoIIbのChIP解析。

 

図2 摂食誘導性のUSF-1のS262リン酸化およびK237アセチル化

(A) USF-1免沈サンプルの抗S262リン酸化USF-1抗体を用いたイムノブロット。(B) -444 FAS-CATプロモーターの抗S262リン酸化USF-1抗体を用いたChIP。(C) 野生型USF-1およびS262変異体を過剰発現させた293FT細胞でのChIP、FASプロモーター活性、およびFASタンパク発現量。(D) USF-1免沈サンプルの抗K237アセチル化USF-1抗体を用いたイムノブロット。(E) -444 FAS-CATプロモーターのK237アセチル化USF-1抗体を用いたChIP。(F) 野生型USF-1およびK237変異体を過剰発現させた293FT細胞でのChIP、FASプロモーター活性、およびFASタンパク発現量。

 

図3 摂食誘導性のUSF-1リン酸化は摂食時に脱リン酸化/活性化されたDNA-PKを介している

(A) USF-1とDNA-PKをインキュベートするとS262がリン酸化される。(B) USF-1とともにDNA-PKおよびkinase-deadのT3950Dを過剰発現させた細胞からUSF-1を免沈して抗P262リン酸化USF-1抗体にてイムノブロット。USF-1とT3950A DNA-PKを過剰発現させた細胞からUSF-1を免沈して抗P262リン酸化USF-1抗体にてイムノブロット。野生型あるいはS262A USF-1とDNA-PKとを過剰発現させた細胞からUSF-1を免沈して抗P262リン酸化USF-1抗体にてイムノブロット。(C) DNA-PKのsiRNAによるノックダウンのUSF-1リン酸化に及ぼす影響。FASプロモーター活性に及ぼすDNA-PKのsiRNAによるノックダウンの影響。(D) 絶食および摂食マウス肝臓中のp53ペプチドを用いたDNA-PK活性測定。(E) 絶食および摂食時のDNA-PKのリン酸化状態。(F) DNA-PKおよびUSF-1のリン酸化に及ぼすオカダ酸およびタウトマイシンの効果。(G) USF-1のリン酸化に及ぼすPP1のsiRNAによるノックダウンの効果。(H) PP1は摂食時またはインスリン刺激時に核に移行する。

 

図4 USF-1のK237はP/CAFによってアセチル化され、HDAC9によって脱アセチル化される

(A) USF-1抗体による免沈サンプルのイムノブロット。USF-1はP/CAFによってアセチル化される。USF-1はP/CAFとAcetyl CoAの存在下でアセチル化される。(B) 野生型USF-1はアセチル化されるが、K237A変異体はアセチル化されない。抗アセチル237K抗体を用いた検討結果より、USF-1はK237がアセチル化される。K246R変異体は野生型と同様にアセチル化される。(C) HDAC9によってアセチル化されたUSF-1の脱アセチル化が生じる。(D) GST pull-downアッセイ。(E) -444 FAS-CATプロモーター活性に及ぼすHDAC9の影響。(F) -444 FAS-CATプロモーター活性をP/CAFが増加させ、HDAC9が低下させる。

 

図5 摂食/インスリン誘導性のUSF-1のリン酸化およびアセチル化はDNA-PKの欠損によって顕著に低下する

(A) USF-1とDNA-PKとのコトランスフェクションによってS262のリン酸化のみならず、K237のアセチル化が増加する。(B) K237のアセチル化はオカダ酸処理によって減少する。PP1 siRNAによるノックダウンによりS262のリン酸化およびK237のアセチル化がほとんど消失する。(C) K237アセチル化に及ぼす野生型およびS262変異体の影響。S262Aでアセチル化が低下し、hyperphosphorylationをmimicするS262Dでアセチル化が増加。(D) HepG2細胞からの過剰発現USF-1の免沈イムノブロット。S262DとP/CAFとが、S262AとHDAC9とがより共沈している。P/CAF, HDAC9, SREBP1の発現レベルは両細胞で同等(下:イムノブロット)。(E) HepG2細胞のインスリン刺激によるUSF-1のS262のリン酸化およびK237のアセチル化に及ぼすDNA-PKのsiRNAによるノックダウンの影響。DNA-PKをノックダウンするとS262のリン酸化およびK237のアセチル化がほとんど認められない。(F) DNA-PKcsが欠損しているglioblastoma cell line M059JとDNA-PKを有する関連株M059K細胞におけるインスリン刺激によるUSF-1のリン酸化およびアセチル化に及ぼす影響。(G) M059JおよびM059K細胞でのUSF-1相互作用タンパクのChIP。インスリン非存在下では、両細胞ともHDAC9がリクルートされているが、インスリン刺激時においてはDNA-PKが欠損しているM059J細胞では、DNA-PKを始め、Ku-80, PARP-1, TOPOIIb, PP1, P/CAFのリクルートが認められない。(H) SCIDマウス(DNA-PK遺伝子の自然発症的な変異を有するため、90%タンパクレベルで低下が認められる)では摂食時のUSF-1のS262のリン酸化が低下している。(I) 野生型およびSCIDマウス肝臓のChIP。USF-1は両マウスにおいて同等にFAS promoter上に結合しているが、摂食時におけるリン酸化フォームの結合がSCIDマウスではほとんど認められない。同様に、DNA-PK, Ku-80, TOPOIIb, PP1のリクルートも認められない。定量的PCRの結果を下に示す。(J) SCIDマウスでは摂食に伴うUSF-1のK237のアセチル化が障害されている。(K) ChIP解析。摂食時のFASプロモーター上へのアセチル化USF-1のリクルートがSCIDマウスでは減少している。

 

図6 脂肪酸合成酵素の誘導の減弱に伴うde novo脂肪合成の低下と肝臓および血清トリグリセライドレベルの減少

(A) 絶食および摂食時の肝臓におけるFAS mRNAレベルのRT-PCRによる解析。 (B) 定量的PCR解析。SCIDマウスでは摂食に伴うFASの誘導が減弱している。(C) run-on assayによるFAS転写速度の解析。野生型マウスでは摂食後6時間でFAS転写物が10倍に増加するが、SCIDマウスでは6倍程度で40%の低下が認められる。(D) DNA切断および関連タンパクのChIP-PCR。野生型マウスでは、摂食後3時間においてDNA切断が認められるが、SCIDマウスではDNAの切断およびDNA-PKやTOPOIIbのリクルートが認められない。(E) 野生型およびSCIDマウス肝臓における脂肪de novo合成。24時間摂食後のde novo合成はSCIDマウスでは野生型と比較して60%低下していた。(F) 24時間摂食後の肝臓におけるFASタンパクのイムノブロット。SCIDマウスの肝臓のFASタンパクの発現量は野生型と比較して有意に低下していた。(G) 24時間摂食後の肝臓中のトリグリセライドおよび血清トリグリセライドレベルの比較。SCIDマウスでは肝臓中のトリグリセライドレベルが30%低下、血清トリグリセライドの有意な低下が認められた。(H) モデル。

(田中)

 
Histone modification at human enhancers reflect global cell-type-specific gene expression

Heintzman ND, Hon GC, Hawkins RD, Kheradpour P, Stark A, Harp LF, Ye Z, Lee LK, Stuart RK, Ching CW, Ching KA, Antosiewicz-Bourget JE, Liu H, Zhang X, Green RD, Lobanenkov VV, Stewart R, Thomson JA, Crawford GE, Kellis M, Ren B.

Ludwig Institute for Cancer Research, UCSD School of Medicine, 9500 Gilman Drive, La Jolla, California 92093-0653, USA.

【概要】

ヒトの体は限られた機能を持つ、様々な細胞によって構成されている。系統特異性は、プロモーターやエンハンサー、インシュレーターや他のcis-制御DNA配列によって誘導される細胞特異的な遺伝子制御であると知られているが、細胞特異性における、これらの制御因子の相互的な役割はまだ明らかになっていない。私達は以前、ヒトゲノムのプロモーター、エンハンサー、インシュレーターの位置を特定するため、ChIP-chipシステムを発展させてきた。今回、私達は同様の手法を用い、様々な細胞種におけるこれらの制御因子を特定し、その細胞種特異的な遺伝子発現における役割を調べた。その結果、プロモーターやインシュレーターのCTCF結合のクロマチン状態は細胞種に関わらず変化がないことが観察された。一方、エンハンサーにおいては、細胞主特異的なヒストン修飾パターンが観察され、細胞種特異的な遺伝子発現との強い相関が見られ、機能的にも活性があることが示された。今回の結果は、ヒトゲノム上の55000以上の潜在的な転写エンハンサーを規定し、ヒトのエンハンサーについての現在の知見を広げただけでなく、細胞種特異的な遺伝子発現のけるこれらの要素の働きを明らかにした。

【実験方法】 ChIP-chip (H3K4me1, H3K4me3, H3K27ac)

【細胞】5種類の細胞  Hela; immortalized lymphoblast GM06690 (GM); leukaemia K562; embryonic stem cells (ES); BMP4-induced ES cells (dE)

1. プロモーター、インシュレーター、エンハンサーのヒストン修飾パターン

  • 414か所のプロモーター領域の±5kbの領域についてヒストン修飾を見ると、細胞種に関わらず、大体同じようなパターンであることが観察される。(Fig.1 (a))
  • CTCFの結合からインシュレーターを特定し、5つの細胞種間で比較したところ、ほとんど細胞種間での違いはなく、同様のパターンが観察された。
  • p300の結合部位からエンハンサーを探し出した所、細胞種特異的なパターンが観察された。
  • ヒストン修飾(H3K4me1、H3K4me3)によるエンハンサー予測についても同様に、細胞種特異的なパターンが観察された。(Fig.1(b))

2. ゲノムワイドなエンハンサー予測

  • HeLa細胞におけるH3K4me1、H3K4me3データから36589か所のエンハンサーサイトを予測した。(Fig.2(a))
  • この予測エンハンサーの中には、既に報告のある、β-globin HS2、PAX6、PLATのエンハンサーも含まれていた。(Fig.2(b))
  • これらのエンハンサーの位置を調べると、56.3%がintergenicな遠位なものであった。(Fig.2(c))
  • 予測エンハンサーの中から9か所を選び、luciferase assayにより転写活性を調べると、ランダムに選択したものに比べ、高確率でエンハンサーとしての活性が確認された。(Fig.2(e))
  • 予測されたエンハンサーは、intergenic regionやプロモーターサイトに比べ、保存性が高かった。
  • エンハンサー領域で濃縮されているmotifの検索を行ったところ、41のモチーフが明らかになり、そのうち19個は転写因子モチーフとして知られているものであり、22個は新規のものであった。これらの保存性は7から22%と、有意に高かった。41個のうち、90%以上はエンハンサー特異的なものであり、4個はプロモーターでも濃縮されているが、12個はプロモーターでは減少していた。

3. HeLaでのエンハンサー予測と細胞種特異的な遺伝子発現の相関

  • 予測されたエンハンサーはHeLaで特異的に発言している遺伝子の近く、特にプロモーターから200kb以内に多く存在した。(Fig.3(a))
  • K562において予測されたエンハンサー24566か所について、HeLaで予測されたエンハンサーと比較すると、ほとんどの部分で細胞特異的であった。(Fig.3(b))しかし、遺伝子発現を比較すると、ほとんど共通の遺伝子が発現していることがわかった。(Fig.3(c))
  • HeLa特異的に発現している遺伝子はHeLaのエンハンサーの近傍に多く存在しているが、K562エンハンサーの近傍では少ない。(Fig.3(e))
  • レポーターアッセイで確認をしてみると、K562で予測された9個のエンハンサーのうち、HeLaでもエンハンサー活性をもっていたのは2つだけであった。

4. エンハンサーと遺伝子発現誘導

  • HeLaで予測されたエンハンサーと、様々な細胞における転写因子の結合サイトの比較を行った。その結果、21.4%から32.6%という有意な割合で転写因子の結合サイトとHeLaでのエンハンサーが重なった。(Fig.4(a))
  • HeLaにinterferon-γを添加した際に誘導される発現遺伝子のエンハンサーの機能について調べた。1969か所のSTAT1結合部位のうち、429か所は誘導前のエンハンサーサイトと重なり(group I)、1260か所はH3K4me1は見られたなかった(group II)。(Fig.4(b))
  • H3K4me1が入っているSTAT1結合部位の近傍の遺伝子(group I)の方が、H3K4me1が入っていないSTAT1結合部位の近傍の遺伝子(group II)に比べ、遺伝子発現の割合が高いことが確認された。(fig.4(c))

(岡部)

Rtr1

Rtr1 Is a CTD Phosphatase that Regulates RNA Polymerase II during the Transition from Serine 5 to Serine 2 Phosphorylation

Mol Cell. 2009 Apr 24;34(2):168-78

Mosley AL, Pattenden SG, Carey M, Venkatesh S, Gilmore JM, Florens L, Workman JL, Washburn MP.

Stowers Institute for Medical Research, Kansas City, MO 64110, USA.

 

背景

ヒストン修飾酵素の同定、修飾のパターン、クロストークについては個別遺伝子の同定が進んでいるが、時系列変化については不明の点が残されている。現在まで、転写に伴うヒストン修飾は主に出芽酵母によって詳細に検討されている。TFIIHのKin28(cyclin dependent kinase)によってPol IIのC-terminal domainの5番目のセリンがリン酸化されると、Set1-COMPASS複合体が動員されて、プロモーター周囲のH3K4me3が蓄積する(Krogan, et. al. (2003). Mol. Cell. Biol., Liu et. al. (2005). PLoS Biol., Ng, et. al. (2003). Mol. Cell, Pokholok, et al. (2005). Cell)。

さらに、Ctk1(CTDK-I complex)によってCTDの二番目と5番目のセリンがリン酸化されると、Set2が動員されてH3K36me2, 3が増加する(Kizer, et. al.(2005). Mol. Cell.Biol. Krogan, et. al. (2003). Mol. Cell. Biol., Li, J., et. al. (2002). J. Biol. Chem. , Schaft, et. al. (2003). Nucleic Acids Res. , Xiao, et. al. (2003). Genes Dev. )。

現在までに酵母で二つの脱リン酸化酵素が同定されており、

Fcp1はS2-Pを、Ssu72はS5-Pを脱リン酸化することが知られている。

しかし、S2-PからS5-Pへの移行に関わる酵素はまだ同定されていなかった。

Rtr1 (regulator of transcription, Saccharomyces cerevisiae homolog of a novel family of RNA polymerase II-binding proteins (RPAP2 RNA polymerase II associated protein 2) Eukaryotic Cell 2008 Jue; 7(6):938-948)がこの役割を担っていることを見いだした。

 

結果1.Rtr1は実際にRNAP結合蛋白である。

1. multidimensional protein identification technology (MudPIT) analysis:RNAPIIに結合する複合体解析を行ったところ12個の蛋白に加えてRtr1を同定した。

2. In vitro transcription:Rtr1はRNAPIIの伸長に抑制的であった。

3. WB: アールはS5-P CTDに結合するがS2-P CTDには結合しない。

 

結果2.Rtr1はPMA1, PYK1のopen reading frameに存在する。

1. ChIP-PCR: Rtr1は二つのよく調べられた遺伝子上にあり、そこでRNAPII CTDリン酸化が変化している。

 

結果3.Rtr1はearly RNAPII elongationにおいてS5-Pの脱リン酸化に必要である。

1. Rtr1を欠損した株でS5-Pが増加する。

2. ChIP-PCRの結果から、この株ではS5-Pを持つRNAPIIが増加していた。

 

結果4.Rtr1の欠損によってRNAPIIの転写に異常が起こる。

1. Rtr1欠損株では、PMA1の転写が低下する。

2. NRD1とMRPL17が隣接する部位では転写が停止しなくなっている。

 

結果5.Rtr1はCTDの脱リン酸化酵素である。

1. in vitroでTFIIH, ctdk-I, MAPK2によってリン酸化ラベルしたCTDと精製したRtr1を反応させるとリン酸化レベルが低下した。

2. この活性はC73Aの変異で活性中心を変化させることによって失われた。

3. 実際のRNAPII複合体ににたternary complexを作ってみると、Rtr1は転写伸長複合体にあるRNAPIIに結合することが確認できた。

(和田)

DNA-PK, ポリメレースII、コヒーシン

Cohesins form chromosomal cis-interactions at the developmentally regulated IFNG locus.
Hadjur S, Williams LM, Ryan NK, Cobb BS, Sexton T, Fraser P, Fisher AG,Merkenschlager M.
Nature. 2009 May 20. [Epub ahead of print]

Circadian Clock Feedback Cycle Through Biosynthesis + NAMPT-Mediated NAD + Biosynthesis.
Kathryn Moynihan Ramsey,et al.
Science 324, 651 (2009); 

Circadian Control of the NAD+ Salvage Pathway by CLOCK-SIRT1
Yasukazu Nakahata, Saurabh Sahar, Giuseppe Astarita,Milota Kaluzova, Paolo Sassone-Corsi*
Science 324, 654 (2009);

A Role of DNA-PK for the Metabolic Gene Regulation in Response to Insulin.
Roger H.F. Wong, Inhwan Chang, Carolyn S.S. Hudak, Suzanne Hyun, Hiu-Yee Kwan, and Hei Sook Sul
Cell 136, 1056-1072, 2009

Histone modification at human enhancers reflect global cell-type-specific gene expression
Heintzman ND, Hon GC, Hawkins RD, Kheradpour P, Stark A, Harp LF, Ye Z, Lee LK, Stuart RK, Ching CW, Ching KA, Antosiewicz-Bourget JE, Liu H, Zhang X, Green RD, Lobanenkov VV, Stewart R, Thomson JA, Crawford GE, Kellis M, Ren B.
Nature 459|7 May 2009,109-112

Rtr1 Is a CTD Phosphatase that Regulates RNA Polymerase II during the Transition from Serine 5 to Serine 2 Phosphorylation
Mol Cell. 2009 Apr 24;34(2):168-78
Mosley AL, Pattenden SG, Carey M, Venkatesh S, Gilmore JM, Florens L, Workman JL, Washburn MP.
Stowers Institute for Medical Research, Kansas City, MO 64110, USA.

γH2AX and cancer

Nat Rev Cancer. 2008 Dec; 8(12):957-67.

γH2AX and cancer

William M. Bonner, Christophe E. Redon, Jennifer S. Dickey, Asako J. Nakamura, Olga A. Sedelnikova, Stéphanie Solier and Yves Pommier

H2AX

  • H2A : H2AX, H2AZ, H2A.Bbd, macroH2Aの4種類のバリアントが存在
  • H2AXは、主要なヒストンH2Aに非常によく似ているが、C末端尾部が十数アミノ酸長く、DNA損傷に応答してリン酸化されるg-セリン残基を含んだ特異的なSQモチーフ(SQRY)を持つ。
  • 通常の細胞では約10%程度含まれる。H2Aは、約80%程度。HeLaやLymphocyteでは2%程度、SF268(human Glioma)では、20%程度と細胞によって異なる。
  • Yeast(出芽酵母)のH2A(H2A1,H2A2)は、mammalianのH2AXに相当。
  • 多くのreplication-dependentヒストンは、polyAを持たないStem loop型のmRNAでイントロンを持たない単一エクソン型であるが、H2AXは、単一エクソン型のStem loop型でありながらpolyA配列を持つ。

H2AX and cancer

  • ヒトの癌(特にAMLやALL)で高頻度に変異や欠失が見られる領域である11q23にコード。頭頚部癌、乳癌などでも欠失やコピー数異常の報告あり。乳癌の場合は約37%でコピー数異常。
  • Imatinib mesylate(Gleevec)によるGIST細胞株のアポトーシス際にはH2AXの発現上昇がみられる。
  • H2afx-/-及び+/-マウスは、正常に生まれるが、特に癌を作らない。ただし、p53 nullのbackgroundでは癌を作る。
  • H2afx-/-マウスのオスは、精子形成不全のため不妊。イムノグロブリンクラススイッチの異常により免疫不全。成長遅延。

DSB (Double Strand Break) Formation

DSB形成には種々の要因によって引き起こされる。

  • IRやbreomycinなどは、DNAと直接相互作用しDSBを形成するもの。
  • ROS(Reactive Oxygen Species)。細胞の酸化的リン酸化やcytochrome P450の代謝、炎症反応、金属イオンなどによって惹起されるROSによる障害。1細胞あたり1日平均5000ヶ所程度のSingle strand breakが引き起こされていると考えられており、そのうちの約1%程度がDSBに移行。
  • DNAの複製とカップルしたDSBの産生。多くの抗癌剤がこれに含まれる。dNTP poolに干渉することで作用する抗癌剤としてgemcitabine, melphalan, cisplatin及びhydroxyureaなどがある。また、Topoisomeraseに干渉することで作用するものとしてcamptothecin、indolocarbazole、etoposide、mitoxantrone、doxorubicinなどがある。camptothecin、indolocarbazoleは、TOPⅠに作用し、etoposide、mitoxantrone、doxorubicinは、TOPⅡに作用する。
  • DNA修復(ヌクレオチド除去修復)不全。ヌクレオチド除去修復欠損によって塩基が取り除かれた修復中間体等が生じ、その結果、DSBが引き起こされる。ヌクレオチド除去修復欠損による疾患として色素性乾皮症がある。また、ミスマッチ修復遺伝子であるMYHは、大腸線種症の原因遺伝子としていられており、その不活化は、ゲノム不安定化を引き起こし、大腸癌のリスクを上げる。
  • テロメアの短小化。テロメアの短小化は、セネッセンスと呼ばれる不可逆的な細胞周期停止を引き起こす。その際、テロメアは、それまで末端部位を保護していたタンパクが消失し、保護されない2本鎖末端ができる。その結果、DSBと認識され、gH2AX Focusが誘導される。
  • その他として、イムノグロブリンクラススイッチや減数分裂、アポトーシス、レトロウイルスのインテグレーション際にもDSBが形成される。

Measuring γH2AX

多くの抗癌剤処理は、DSBを誘導する。 gH2AXは、DSBと密接な相関関係があるため、その測定は、診断や治療効率の指標となる可能性がある。測定には、現在、ヒトH2AXのC末のリン酸化ペプチド : CKATQAS(PO4)QEYを抗原としたgH2AX抗体による。gH2AX Fociの計測法としては、顕微鏡もしくはfluorescence-activated cell sorting (FACS)が考えられる。また、DNA障害時にgH2AX Fociと共局在する因子と同時に検討することで抗癌剤の作用点をより詳細に明らかにすることが可能となる。ただし、S期においてgH2AXのシグナルはより強く出るためS期の細胞は、その他の細胞と区別する必要がある。免疫蛍光顕微鏡ではgH2AXのシグナルがfocusなのかそうでないのかを区別可能だがイムノブロットでは区別できない。ただし、イムノブロットでは、総H2AXに対する相対的なgH2AXを測定できるため異なる細胞間を比較するときに有用(FACSも同様)。

γH2AX in clinical research and therapy

Diagnostic uses
癌遺伝子の活性化は、単独もしくはhypoxiaや炎症のようなストレスとともに前癌細胞でのDSBの形成を誘導する。gH2AXのレベルはゲノムの不安定性を反映するため前癌病変検出に役立つ可能性がある。metastatic renal cell carcinomaとadenocrtical carcinomaの診断、潰瘍性大腸炎のモニタリング、毛細血管拡張性運動失調症(AT)などのゲノム不安定性症候群の診断など。

Pharmacodynamic uses
Leukocyte及びSkin punch biopsyに対する電離放射線照射実験によりgH2AXのレベルは、電離放射線照線量と強く相関する。正常細胞とtumor biopsyへの放射線や放射線類似物質の作用をgH2AXのレベルで検討することでより効果的な容量を評価できる可能性がある。

Drug development and phase 0 protocols.
DSBは、genotoxic stressの現れであることから、gH2AXの測定はLymphocyte、skin及びtumour biopsyを用いた新規抗癌剤の作用を評価できる可能性がある。

Conclusion

gH2AXを用いたDSBのモニタリングは、治療の進展や癌の進行の判定を可能とすることを示唆している。この手法は、低侵襲性に得られる検体を用いた薬剤の効果をモニタリングできる有用な迅速で安価なツールである。より迅速なアッセイへ向けたELISAやDNA障害のレベルをリアルタイムでのモニタリングの自動化と開発する必要がある。

 

Fig1.

a)Human peripheral blood mononuclear cellsに1GyのIRを照射後30分でのgH2AXとDNAの染色像。核内にドット状のgH2AX Fociがみられる。

b)Campthotecin処理したColon Cancer Cell

c)Etoposide処理したLeukemia Cell

d)normal human colonの凍結切片

e)colon adenocarcinomaの凍結切片

f)mouse fibroblast cellに1GyのIRを照射後30分でのgH2AXとp53BP1の染色像。

g)agingにより短縮化したテロメアにおけるgH2AXとテロメアの染色像。

h)インドキョン細胞に0.6Gyを照射後90分でのmetaphaseの切断されたchromosome。White Arrow : 切断されたmetaphase chromosome末端, Black Arrow : 正常metaphase chromosome

i)left panel : human fibroblastに1 Gyを照射後30分でのmetaphaseの切断された一部のchromosome(最も長いもの。Chr1もしくは2と予想される)。約245Mbのchromosome。middle, gH2AX Fociの大きさは、約40Mbと約16Mb。right panel : 同時期、同スケールでの異なるその他2つのchromosome。middleは、約169MbでgH2AX Fociの大きさは、約20Mb、rightは、約149MbでgH2AX Fociの大きさは、約45Mbと約22Mb。chromosomeの長さは全てwhite dot barの部分で計測。

j)Colon cancer cellにTRAIL(TNF-related apoptosis-inducing ligand)を処理後のgH2AXの染色像。left : 照射後1時間、辺縁型染色像。middle : 核全体に染色。right : 処理後3時間、apoptoticな核全体に染色。

k)一過的にUV-Cを照射したnormal human fibroblast。核全体にgH2AXが染色。

Fig2.

a)種々のDSB(double strand break)発生源。

IRやTposiomerase阻害剤や白金製剤などの抗がん剤、活性酸素、DNA障害応答タンパクの変異、テロメアの短小化、イムノグロブリンクラススイッチ、減数分裂、ウイルス感染、アポトーシスなど。

b) gH2AX fociの構成因子とその形成機構

H2AXのリン酸化酵素としてPI3kinase familyのATR, ATM, DNA-PKの3種類が存在し、redundantに働いていると考えられている。ただし、上流の刺激で主に使われる酵素が異なり、DSBは、ATMにより、SSBの際は、ATR、高浸透圧刺激やアポトーシスの際に生じるDNA断片化等ではDNA-PKが引き起こすと言われている。DSBが生じるとATMによりSer139がリン酸化されH2AXは、gH2AXとなる。その結果、NBS1-MRE1-RAD50のtri-complexがMRE1のBRCT-FHAドメインを介して結合し、さらなるATMの活性化とDSB部位へのリクルートによるH2AXのリン酸化を誘導し、gH2AX はspreadingしていく。

c)下流経路

gH2AX fociの形成後の下流経路には、修復因子の集積に伴うDSB修復とそれに伴うチェックポイント制御、そしてDSBのランドマークとしてのpost-translationalな修飾の除去があげられる。具体的には、gH2AX foci の形成にもかかわるMDC1 complexによる修復タンパクのDSBへの集積および、ATM/ATRによるチェックポイントキナーゼの活性化が引き起こされる。まずMDC1 complexによりDSB部位へのRNF8-Ubc13及びBRCA1複合体がリクルートされ、H2AおよびH2AX-K119のpoly-Ub化が誘導される。このpoly-Ubをランドマークとして種々のUb結合モチーフを持った修復因子の集積が起こる。また、Ubc13は、ヒストンアセチル化酵素であるTip60によるH2A(X)-K5のアセチル化を誘導する。これら、Ub化とアセチル化を受けたH2A(X)は、nucleosomeを緩め、H2A(X)のリリースを誘導する。また、このnucleosomeの緩和は、ヒストンH3/H4のさらなる修飾(H4-K20me)を誘導し、p53BP1などの修復因子が動員される。DSB修復の完了は、gH2AXの消失により起こる。H2AXがnucleosomeからのリリースすることでDSB修復が完了するが、その為にはUb化とアセチル化に加えPP2AやPP4CによるSer139の脱リン酸化が必要である。

Fig3.

c)mammalianでは平均的に5 nucleosome毎にH2AXを持った30nm fiberを形成。Yeastでは全nucleosomeがH2AX。Yeastの場合、配列的にmammalianのH2AXと同一。gH2AX foci内の約10%がリン酸化。d)Mre11及びRad51の位置は、DSB部位に一致。H2AXの機能的Yeast analogであるH2Aのリン酸化シグナルは、DSB部位周辺30k程度にわたって見られる。

連続的なユビキチン化によるゲノム修復

Cell 136, 435-446, February 6, 2009

RNF168 Binds and Amplifies Ubiquitin Conjugates on Damaged Chromosomes to Allow Accumulation of Repair Proteins

 

DNA double-strand breaks (DSBs)が起こると近傍のH2AXがATMによりリン酸化される(γ-H2AX)。MDC1はDSB部位に最初にリクルートされてくるアダプタータンパクであり、BRCTドメインを介してγ-H2AXのS139に結合し、引き続きリクルートされてくるRNF8など修復因子のプラットフォームを作る。RNF8はユビキチンリガーゼであり、DSB近傍のクロマチンをユビキチン化して53BP1やBRCA1などの修復因子がさらにリクルートされてくる。

53BP1のDSB部位へのretentionを指標にRNAiでのスクリーニングを行い、DSB修復に関わる新規因子RNF168を同定した。RNF168もE3リガーゼであり、RNF8, MDC1と同レベルの強い53BP1のretentionが見られた。RNF168はRNF8がDSBにリクルートされた後、そのユビキチン化を増強、安定化することで修復シグナルを維持する。連続的なユビキチン化により数種のE3リガーゼが協力してゲノムの維持に関わるという点で興味深い論文である。

 

Fig.1A, B, C DSB部位への53BP1の蓄積に必要な因子としてRNF168を同定した。

RNF168はE3リガーゼ Fig.1E, F IRによるDSB部位への53BP1の集積にはRNF168が必要。Rescue実験でも確認。

 

Fig.S3  Laser microirradiationでDSBを細胞の一部分に起こしたときの修復因子の局在。

Fig.2A  RNF168をノックダウンすると、Ub, 53BP1, BRCA1のDSB部位への集積が認められない。→RNFはRNF8の下流でDSB部位へのユビキチン化を維持し、下流の修復因子のリクルートに必要である。RNF8があってもユビキチン化が減じる。

Fig.2B, S4 RNF168をノックダウンすると、MDC1がDSB後DSB部位に集積しつづける。→RNF168はDSBからの回復に必要

Fig.2C, D リン酸化されたまま。G2 arrest。

 

Fig.3A, B 内因性のRNF168もDSB部位に集積することを確認。RNF168はMIUドメインを解してDSBに集積。(MG132はクロマチンのユビキチン結合を壊す。)

Fig.3B, D RING mutantもMIU mutantもDSB部位のユビキチン化が起こらない。適度に発現するStable cell lineで確認。

Fig.S7A MIU mutantでは、53BP1のDSB部位への集積も見られない。DSB近傍のクロマチン成熟(修飾および回復タンパクのリクルート)には、ユビキチン化を介したRNF168のリクルートが必要。

 

Fig.4A DSBに集まることが知られているE3リガーゼである、RNF8とBRCAをノックダウンしてRNF168のDSB部位への集積を調べた。 その結果RNF168のDSBへの局在にはRNF8が必要。

MDC1はRNF8の上流で、ポジコン。Fig. S6B RNF168のタンパク量自体は変わらない。Fig. S8

DSB以外ではRNF168の動きはRNF8と関係ない。

 

Fig.S9 GFP-RNF8, RNF168, BRCA1を使ったtime-lapse。Microirradiation後、RNF8→RNF168→BRCA1の順(時間的に)でDSBに集積する。RNF8→RNF168→BRCA1。

Fig.4C RNF8はH2Aをユビキチン化し、その脱ユビキチン化酵素としてはUSP3が知られている。USP3を過剰発現すると、IRで誘導される53BP1, RAP80のfocus formationがなくなる。RNF8の下流でDSBに集まることが知られているクロマチン結合タンパク53BP1とRAP80の局在を指標に解析。その結果、RNF8によるユビキチン化がDSBへのタンパクの集積に必要であることがわかった。

Fig.4D RNF168のDSBへの集積にはH2Aのユビキチン化が必要。USP3のcatalytically inactive mutantを用いた。

 

Fig.5A Strep(RNF168)でpull down→H2AでWestern。RNF168はH2Aに結合する。よりH2A-Ubに結合する。

Fig.5B RNF8をノックダウンするとRNF168とH2Aの結合はなくなる。RNF8によるH2Aのユビキチン化がRNF168のDSBへのdocking siteを作っている。

Fig.5C RNF8→RNF168の2つのE3 ligaseがどのように関係して働くのか、まずRNF168のターゲットをin vivo ubiquitylation assayで調べた。RNF168はH2A, H2AXをユビキチン化する。これはRNF8と同じである。RNF168はRNF8によるユビキチン化を増幅/安定させるか?

 

Fig.6A RNF8はUBC13(E2)とK63Ub鎖を形成する。IRによるnuclear fociにはK63ユビキチン鎖が集積する。ということから、RNF168もDSB部位のK63Ub化をするか?調べた。Laser microirradiationによるDSB部位にK63Ub鎖の集積が見られるがRNF168をノックダウンすると見られなくなる。すなわち、DSB部位にK63Ub化にはRNF168が必要。

Fig.6B→K63Ub化

Fig.6C Pull downでRNF168とUBC13(E2)の結合を確認

Fig.S10A RNF168のDSB部位へのretensionとK63ユビキチン化を詳しくtimelapseで見ると、①K63ユビキチン化とRNF168の局在化は相関している②が、RNF8がないと見られない

 

Fig.7A, Fig.S11 RNF8とRNF168は共通のパスウェイで共同に働く。抑制程度の異なるRNF168 siRNAで検討した。#1 強く抑制 #6 少し残る siRNA。#6にRNF8を過剰発現するとRescueできる。

Fig.7B, Fig.S11 RNF168が少し残っていればRNF8の過剰発現でrescueできる。

Fig.7C,D Cell survivalについても、RNF168が少し残っている状態でRNF8をノックダウンすると、顕著に減少する

 

Fig.7 まとめ

DNA切断により修飾を受けたクロマチンにはE3リガーゼであるRNF8が最初に会合するが、これだけではDSB修復経路に十分なユビキチン化は起こせない。RNF8によるユビキチン化はもうひとつのE3リガーゼであるRNF168をリクルートするのに重要で、RNF168はDSB部位のユビキチン化を増幅し、さらなる修復因子のリクルートに寄与している。

  (堀内)
Histone H2AX is integral to hypoxia-driven neovascularization

Matina Economopoulou, Harald F Langer, Arkady Celeste, Valeria V Orlova, Eun Young Choi1,Mingchao Ma, Athanassios Vassilopoulos, Elsa Callen, Chuxia Deng, Craig H Bassing, Manfred Boehm,Andre Nussenzweig & Triantafyllos Chavakis

 

タイトル:ヒストンH2AXは低酸素による血管新生に必須である.

 

H2AヒストンファミリーメンバーXとそのC末端側(γ-H2AX)のリン酸化はDNA損傷時のDNA修復に関わることが知られている。低酸素はDNA損傷を誘導する生理的なストレスである一方,血管新生を引き起こすことが知られている.すなわち,低酸素により産生した血管増殖因子が内皮細胞の増殖を誘導する。

以上のように, H2AXと低酸素時の内皮機能には関わりがあることが推測される.

本論文では低酸素時の内皮細胞におけるH2AXの機能解析を行っている.

 

結果:
  1. 内皮細胞で低酸素状態はγ-H2AXを誘導した。
  2. H2AXの欠損により低酸素状態での内皮細胞の増殖が抑制された。
  3. H2AX-/-マウスにおいて発生段階での血管新生には変化がみられない.一方,増殖性網膜症,後肢の虚血,腫瘍血管新生時の低酸素が誘導する血管新生は低下した。
  4. 内皮細胞特異的H2afx欠損では,低酸素による網膜における血管新生,腫瘍血管新生が低下した。

結論:

H2AXは低酸素時の内皮細胞の増殖に必要であり,低酸素による血管新生に重要である。

 

Figure 1

(a) γ-H2AXの免疫細胞染色(緑色:γ-H2AX,青色:DAPI).

→normoxiaでは染色が見られないが,hypoxiaでは1時間,6時間ともに見られた.

(DNA損傷を引き起こす放射線照射やhydroxyureの添加と同様の染色像が見られた)

 

(b) siRNAを用いたATR,ATMのノックダウンの検討(ウエスタンブロッティング).

(c) ATR,ATMノックダウン時のγ-H2AXの発現検討(ウエスタンブロッティング).

→ATRノックダウンによりhypoxiaによるγ-H2AXの産生が抑制された.ATMノックダウンは影響しない.

 

 

(d) siRNAを用いた-H2AXのノックダウンの検討(ウエスタンブロッティング).

(e) H2AXのノックダウン時にnormoxia,hypoxia状態にし,FGF-2,FCSを加えた場合の内皮細胞(HUVEC)の増殖の検討.

→hypoxiaにするとFGF-2,FCS刺激による増殖が減少した.

 

(f)H2afxノックアウトマウスの肺における内皮細胞を用いたnormoxia,hypoxia状態での細胞増殖.

→ノックアウトマウスではhypoxia状態でのFCS刺激による内皮細胞の増殖がみられない.

 

(g) 未成熟網膜症(ROP)での γ-H2AXの免疫組織染色(赤色:lectin=内皮細胞,緑色:γ-H2AX,青色:DAPI).

→未成熟網膜症(ROP)の病変部でγ-H2AXが誘導されていた.

 

Figure 2 野生型マウスとH2AfXノックアウトマウスの比較.

(a) ROP時の網膜における新生血管の定量.

(b) 網膜のPAS,ヘマトキシリン染色.

→ノックアウトマウスではROP時に網膜の新生血管が減少していた.

 

(c) 網膜全体のレクチン染色.

→ノックアウトマウスにおいて病的な血管新生は抑えられており,より生理的な血管網が観察された.

 

(d) 網膜のレクチン,BrdU染色.

(e) BrdUによる増殖の定量.

(f) TUNELアッセイによるアポトーシスの定量.

→ ノックアウトマウスでは増殖が抑えられ,アポトーシスが増加していた.

 

(g) 内皮特異的H2afxノックアウトマウスを用いた網膜の新生血管の定量.

→内皮特異的H2afxノックアウトマウスでも同様に,新生血管の減少が見られた.

 

Figure 3 後肢を虚血状態にした場合のH2AX欠損による影響.

(a) ドップラー流速計による血流の定量.

→ノックアウトマウスの方が虚血状態からの血流の戻りが弱い.

 

(b) 虚血させた筋肉におけるCD31+(内皮細胞),BrdU+細胞の定量.

(c) 虚血させた筋肉における免疫組織染色(緑色:CD31,赤色:BrdU,青色:DAPI)

→ノックアウトマウスで内皮細胞の増殖が抑えられていた.

Figure 4  H2AX欠損による腫瘍血管新生への影響.

(a) CD31による血管の定量.

(b) CD31による免疫組織染色

→腫瘍における血管密度がノックアウトマウスで減弱していた.

 

(c) BrdUによる内皮細胞増殖の定量.

(d) caspase-3によるアポトーシスの定量.

→腫瘍における内皮細胞の増殖は抑えられ,アポトーシスが亢進していた.

 

(e) NG-2によるペリサイトの定量

→ペリサイトの数に影響していない.

 

(f) 腫瘍サイズの経時変化.

(g) 25日における腫瘍の重さ比較.

→ノックアウトマウスにおいて腫瘍サイズの減少が見られた.

(末弘)
Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein L (HnRNP-L) is a subunit of human KMT3a/Set2 complex required for H3 lys36 trimethylation activity in vivo.

Yuan W, Xie J, Long C, Erdjument-Bromage H, Ding X, Zheng Y, Tempst P, Chen S, Zhu B, Reinberg D.

 

ヒストンH3K36のメチル化の存在は活発に転写されている遺伝子と相関することが知られている。酵母では、H3K36meはKMT3(別名Set2)によって触媒され、ヒストン脱アセチル化酵素複合体Rpd3sをリクルートすることで転写開始の場所を保証している。この論文において著者らは、ヒトのKMT3a(別名HYPBあるいはhSet2)の複合体を精製する中で高等生物特異的なサブユニットとしてhnRNP Lが含まれていることを見出している。興味深いことに、in vitroではKMT3aのみでH3K36メチル化活性を示すが、in vivoではhnRNP-Lが必須であることである。また、in vitroではKMT3aはH3K36me1, me2, me3を生じさせるが、KMT3aあるいはhnRNP-LのRNAiを行うとin vivoではH3K36me3がほぼ特異的に減少する。

これらの結果は、hnRNP-Lがクロマチン修飾に関与しており、クロマチンテンプレートと共転写・pre-mRNAプロセッシングとの間にクロストークが存在していることを示唆している。

 

図1 ヒトKMT3a複合体の新規サブユニットとしてのhnRNP-L

(A) 酵母KMT3とヒトKMT3aのドメイン構造。Flag-tagを付したC端領域(KMT3a-C)をHEK293に導入したstable cell lineを樹立して実験に使用。(B) Flag-KMT3aとともに溶出されるタンパクの銀染色像。Stable cell lineより核抽出液を調製し、Superrose 6にてゲル濾過した各フラクションをM2 anti-Flag resinにてアフィニティー精製。パネル上に各フラクション番号を示す。(C) KMT3aとhnRNP-Lとの相互作用はRNAse処理に影響されない。hnRNP-LはRNA recognition motifを3つ有するRNA結合タンパクであることから、間接的にRNAを介してKMT3aとhnRNP-Lが共沈してきた可能性もあるのでRNAseにて予め処理をして免沈を実施したが、RNAseの有無にかかわらずKMT3aとhnRNP-Lとが共沈する。(D) Flag-hnRNP-Lを発現するstable cell lineの核抽出液からのFlag-hnRNP-Lの免沈によって内在性のKMT3aが精製される。(E) HeLa細胞において内在性のKMT3aとhnRNP-Lとが相互作用している。hnRNP-L抗体を用いた免沈によってKMT3aが共沈、KMT3a抗体を用いた免沈によってhnRNP-Lが共沈することがWestern blotによって確認される。

 

図2 相互作用ドメインマッピング

(A) 左:相互作用解析に用いたGSTタグ付きKMT3a deletion mutantの模式図。中央:精製したリコンビナントGST-KMT3a deletion mutantの銀染像。右:His-hnRNP-Lを用いたニッケルアガロースpull-downアッセイの結果。KMT3aはSETとWWドメインとのリンカー配列およびSRIドメインを介してhnRNP-Lと相互作用している。(B) 左:Hisタグ付きhnRNP-L deletion mutantの模式図。右:His-tagged hnRNP-L deletion mutantとGST-KMT3aを用いたニッケルアガロースpull downアッセイの結果。KMT3aのC端(K4)との結合にはhnRNP-Lの一つめのRRMドメイン(RRM1)で十分(右下図)、二つめのRRMによってKMT3aのSETとWWドメインとのリンカー部分との結合が安定化される(右上および中央図)。

 

図3 KMT3aのヒストンリジンメチル化活性

(A) Flag-hnRNP-Lを発現するHEK293 stable cellから精製したKMT3a複合体はヌクレオソームヒストンを基質とするメチル化酵素であり、コアヒストンを基質とするものではない。(B) KMT3a複合体はH3K36に特異的である。H3K36のK36A mutantはメチル化されないが、たのK→A mutantではメチル化される。(C) Mass解析の結果より、in vitroにおいてKMT3aはmono-, di-, tri-メチル化活性を示す。対照的に、in vivoではKMT3aのノックダウンによってH3K36me3が特異的に減少する(Supplementary Figure)。

 

図4 hnRNP-LのRNAiはH3K36me3レベルを低下させる

Western blotの結果より、hnRNP-Lに対する2種類のsiRNAをHeLa細胞に処理することによってhnRNP-LとH3K36me3が特異的に減少することがわかる。

 

図5 hnRNP-Lに対するsiRNAをトランスフェクトしたHEK293細胞においてH3K36me3レベルはhnRNP-Lレベルと相関して減少する

siRNAを処理した細胞のhnRNP-Lおよび他のヒストンタンパクを用いた免疫染色像。hnRNP-Lのレベルが低下している細胞を矢印で示してある。hnRNP-Lの発現が低い細胞ではH3K36me3のレベルが低いが、他のヒストンマークは影響されない。

 

図6 in vitroではhnRNP-LはKMT3aの活性を亢進させない

hnRNP-LのノックダウンはKMT3aのノックダウンと同様にH3K36me3レベルを変動させることから、バキュロウィルスにてKMT3a-CおよびhnRNP-Lを作製して、KMT3aの活性に及ぼす影響を検討。しかしながら、hnRNP-Lによる活性化は認められない。

(田中)

ヒストンH2A

WSTF regulates the H2A.X DNA damage response via a novel tyrosine kinase activity.
Xiao, A., Li, H., Shechter, D., Ahn, S.H., Fabrizio, L.A., Erdjument-Bromage, H.,
Ishibe-Murakami, S., Wang, B., Tempst, P., Hofmann, K., Patel, D.J., Elledge, S.J. and Allis, C.D.
Nature 457, 57-62 (2009)


・ヒストンH2A にはゲノム上に複数のバリアントがあり、その一つであるH2A.X はH2A
の1 ~ 10%とマイナーなバリアントであるが、哺乳類においてはDNA 二重鎖損傷に応答
して、Ser139 がATM やATR によってリン酸化される(γ-H2A.X と表記)。
・しかしγ-H2A.X のリン酸化制御やDNA 修復中のクロマチンリモデリングにおける正
確な役割は不明である。
・著者らはWICH 複合体を構成するWSTF による新たな制御メカニズムを報告している。
・著者らはWSTF がチロシンキナーゼ活性を持つことを新たに示した。
・またWSTF はH2A.X のTyr142 をリン酸化するとともに、このキナーゼ活性が(基質は
H2A.X 以外の未知のものであるが)DNA 損傷時の反応として必須な制御機構に重要な役
割を果たしていることを示した。
図の説明
図1
a:H2A.X の142 チロシンが保存されている(ヒト、マウス、線虫、ツメガエル)
b:放射線照射後、正常状態でリン酸化されているTyr142 のリン酸化レベルは、時間と
ともに減弱し、8 時間で最も減弱する(MEF)。(アフリカツメガエルでも同様のデータを
SupFig1 で示す)
図2
a:H2A.X を含んだヌクレオソーム精製方法
b:WT の放射線照射(-)でH2A.X と結合しているペプチドは171kDa のWSTF と145kDa
のSNF2H である。この結合はIR(放射線照射)で消失。そのほかにはβアクチンが結合
している。(IP 中に含まれるヒストンに変化はない。)
c:H2A.X とWICH 複合体の結合を免疫沈降で確認。IR(-)でH2A.X はWSTF とSNF2H
と結合しており、この結合はIR(+)で消失。Tyr142Phe 変異体のH2A.X ではWICH 複合体
との結合は認めず(Tyr142 のリン酸化なしでは、Ser139 のリン酸化も低下することが示
唆される)。
d:WSTF をノックダウンすると、H2A.X のTyr142 のリン酸化も低下する
図3
a:WSTF の各種construct
b-f は昆虫細胞で作成したWSTF、g は大腸菌で作成(大腸菌にはチロシンキナーゼが少
ないので大腸菌を使用)
b:WSTF によるヌクレオソーム中のH2A.X のリン酸化確認。H2A.X のPhe142mutant は
- 2 -
リン酸化されない。
c:昆虫細胞で作成したWSTF によるH2A.X Tyr142 リン酸化の特異抗体での確認
d:WSTF のN 端がH2A.X のTyr142 リン酸化活性を持つ。C 端WSTF には活性がない
e:1-340 でキナーゼ活性が1/50 まで消失。
f:WSTF のCys338Ala mutant はキナーゼ活性を持たない
g:N 端(含むWAC domain)とC 端の共存下でキナーゼ活性が最大になる。
図4
a:WSTF k/d により、放射線照射後のH2A.X のSer139 リン酸化が維持出来なくなる。
b:H2A.X のSer139 リン酸化foci の変化。正常ではfoci の増大が認められるが、k/d では
foci が維持されない。
c:IR 8 時間後のMDC1 のfoci 形成がWSTF k/d 細胞では認められない
d:c と同条件でのATM の集積も認められない
e,f:c-d で示されたWSTF k/d で生ずる、IR 8 時間後のH2A.X のSer139 リン酸化、ATM
foci 形成異常が、WSTF キナーゼ活性で回復するかを示した。キナーゼ活性を持つWSTF
でのみH2A.X のSer139 のリン酸化やリン酸化ATM のfoci 形成回復が認められた。
まとめ
(1)H2A.X のTyr142 がリン酸化されることを示した。DNA 損傷に対する反応で重要な役
割を果たす
(2)WSTF は、WAC ドメインを持つN モチーフと保存性の低いC モチーフを持ち、H2A.X
Tyr142 のキナーゼである。H2A.X 以外の基質を持つ可能性がある。
(3)WSTF のキナーゼ活性とH2A.X のTyr142 のリン酸化は複数の意味を持つ。(a)定常状
態におけるTyr142 のリン酸化は、DNA 損傷後に生じるSer139 のリン酸化に必要であり、
DNA 損傷に引き続くTyr142 の脱リン酸化は、Mdc1 やATM の動員に必要であるととも
に、Ser139 のリン酸化に必要である、(b)WSTF は未知の機序により、Mdc1 やATM のfoci
への動員を通じてγ-H2A.X foci の維持を制御している、(c)Tyr142 のリン酸化が起こらな
いと、通常のH2A.X のSer139 リン酸化(通常DNA 損傷後16 時間以上維持される)・脱
リン酸化のサイクルが短くなり、foci の形成から消失までが短くなるのかも知れない。

(穴井)

RNF168 binds and amplifies ubiquitin conjugates on damaged chromosomes to allow accumulation of repair proteins.  
Doil C, Mailand N, Bekker-Jensen S, Menard P, Larsen DH, Pepperkok R, Ellenberg J, Panier S, Durocher D, Bartek J, Lukas J, Lukas C. 
Cell. 2009 Feb 6;136(3):435-46.

 WSTF regulates the H2A.X DNA damage response via a novel tyrosine kinase activity. 
Xiao A et al.  
Nature. 2009 Jan 1;457(7225):57-62.

GammaH2AX and cancer.  
Bonner WM, Redon CE, Dickey JS, Nakamura AJ, Sedelnikova OA, Solier S, Pommier Y. 
Nat Rev Cancer. 2008 Dec;8(12):957-67.

Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein L (HnRNP-L) is a subunit of human KMT3a/Set2 complex required for H3 lys36 trimethylation activity in vivo.
Yuan W, Xie J, Long C, Erdjument-Bromage H, Ding X, Zheng Y, Tempst P, Chen S, Zhu B, Reinberg D.
J Biol Chem. 2009 Mar 30. [Epub ahead of print]

Histone H2AX is integral to hypoxia-driven neovascularization.
Economopoulou M, Langer HF, Celeste A, Orlova VV, Choi EY, Ma M, Vassilopoulos A, Callen E, Deng C, Bassing CH, Boehm M, Nussenzweig A, Chavakis T.
Nat Med. 2009 May;15(5):553-8. Epub 2009 Apr 19.

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