2009年5月26日

Rtr1

Rtr1 Is a CTD Phosphatase that Regulates RNA Polymerase II during the Transition from Serine 5 to Serine 2 Phosphorylation

Mol Cell. 2009 Apr 24;34(2):168-78

Mosley AL, Pattenden SG, Carey M, Venkatesh S, Gilmore JM, Florens L, Workman JL, Washburn MP.

Stowers Institute for Medical Research, Kansas City, MO 64110, USA.

 

背景

ヒストン修飾酵素の同定、修飾のパターン、クロストークについては個別遺伝子の同定が進んでいるが、時系列変化については不明の点が残されている。現在まで、転写に伴うヒストン修飾は主に出芽酵母によって詳細に検討されている。TFIIHのKin28(cyclin dependent kinase)によってPol IIのC-terminal domainの5番目のセリンがリン酸化されると、Set1-COMPASS複合体が動員されて、プロモーター周囲のH3K4me3が蓄積する(Krogan, et. al. (2003). Mol. Cell. Biol., Liu et. al. (2005). PLoS Biol., Ng, et. al. (2003). Mol. Cell, Pokholok, et al. (2005). Cell)。

さらに、Ctk1(CTDK-I complex)によってCTDの二番目と5番目のセリンがリン酸化されると、Set2が動員されてH3K36me2, 3が増加する(Kizer, et. al.(2005). Mol. Cell.Biol. Krogan, et. al. (2003). Mol. Cell. Biol., Li, J., et. al. (2002). J. Biol. Chem. , Schaft, et. al. (2003). Nucleic Acids Res. , Xiao, et. al. (2003). Genes Dev. )。

現在までに酵母で二つの脱リン酸化酵素が同定されており、

Fcp1はS2-Pを、Ssu72はS5-Pを脱リン酸化することが知られている。

しかし、S2-PからS5-Pへの移行に関わる酵素はまだ同定されていなかった。

Rtr1 (regulator of transcription, Saccharomyces cerevisiae homolog of a novel family of RNA polymerase II-binding proteins (RPAP2 RNA polymerase II associated protein 2) Eukaryotic Cell 2008 Jue; 7(6):938-948)がこの役割を担っていることを見いだした。

 

結果1.Rtr1は実際にRNAP結合蛋白である。

1. multidimensional protein identification technology (MudPIT) analysis:RNAPIIに結合する複合体解析を行ったところ12個の蛋白に加えてRtr1を同定した。

2. In vitro transcription:Rtr1はRNAPIIの伸長に抑制的であった。

3. WB: アールはS5-P CTDに結合するがS2-P CTDには結合しない。

 

結果2.Rtr1はPMA1, PYK1のopen reading frameに存在する。

1. ChIP-PCR: Rtr1は二つのよく調べられた遺伝子上にあり、そこでRNAPII CTDリン酸化が変化している。

 

結果3.Rtr1はearly RNAPII elongationにおいてS5-Pの脱リン酸化に必要である。

1. Rtr1を欠損した株でS5-Pが増加する。

2. ChIP-PCRの結果から、この株ではS5-Pを持つRNAPIIが増加していた。

 

結果4.Rtr1の欠損によってRNAPIIの転写に異常が起こる。

1. Rtr1欠損株では、PMA1の転写が低下する。

2. NRD1とMRPL17が隣接する部位では転写が停止しなくなっている。

 

結果5.Rtr1はCTDの脱リン酸化酵素である。

1. in vitroでTFIIH, ctdk-I, MAPK2によってリン酸化ラベルしたCTDと精製したRtr1を反応させるとリン酸化レベルが低下した。

2. この活性はC73Aの変異で活性中心を変化させることによって失われた。

3. 実際のRNAPII複合体ににたternary complexを作ってみると、Rtr1は転写伸長複合体にあるRNAPIIに結合することが確認できた。

(和田)