2009年5月26日

発生途上のインターフェロンγ遺伝子座におていコヒーシンはシスの相互作用の制御にかかわる

発生途上のインターフェロンγ遺伝子座におていコヒーシンはシスの相互作用の制御にかかわる  インペリアルカレッジ Merkenschlagerら nature 2009.May 30, e-pub

 

コヒーシンによる姉妹染色体の接合は、染色体分離と複製後のDNA修復に重要な役割をはたす。最近の解析は、遺伝子発現制御におけるコヒーシンの役割を示している。これはCTCF結合サイトと、DnaseI感受性サイトの一部へコヒーシン複合体が動員されることにより担われていると考えられている。CTCFは、プロモーターとエンハンサーの相互作用を制御するインスレーターであり、コヒーシンはエンハンサー効果をブロックするが、そのメカニズムは不明である。

我々は、今回、コヒーシンが発生途上で制御されているインタフェロンγ遺伝子領域においてシスの染色体の立体的な位置関係を制御していることを報告する。このコヒーシンの作用は発生にみならず病気にも重要である。

 

図1a マウスのB3-preG cell lineとヒトゲノムでのインタフェロンγ遺伝子座でのコヒーシンとCTCF結合(rad21とCTCFの結合をlog2enrichmentで表示)は、マウスでは-73kbと+66kbにある。インタフェロンγの遺伝子座では、保存されたコヒーシン結合サイトは第一イントロン+1.5kbにある。この遺伝子座では、多数の制御領域がコーディング領域から離れたところにある。ヒト細胞では、-63kbと、保存された結合が+1.5kbと+119kbに見られる。

-63kbと+1.5kbにはH2AZとH3K4me3の結合も見られる。

隣のIL26はマウス(げっ歯類)では偽遺伝子でヒトでは機能している。

図1b  chip-PCRでのrad21(上)とCTCF(下)のヒトエフェクターメモリー細胞のCCR5陽性Th1細胞(赤)とCRTH2(プロスタグランディンD2受容体;別名CD294またはGPR44)陽性Th2細胞(黒=)、コントロールは293T細胞(白)、CD4 T細胞

-63kbには古典的CTCF結合配列があり、マウスとヒトで59%保存されている。

+1.5kbと+119kbにも保存されている領域がある。この結合は特に、ヒト抹消血から分離したCD4陽性細胞(未分極)にも見られる。この細胞はTH1とTh2になる前の細胞である。Th1になると結合が特に強くなる。図1c ヒトエフェクターメモリー細胞の分離をすると、TH1ではインタフェロンγのRNAが多いがTH2ではコヒーシンの結合も増加せず、インタフェロンRNAも増加しない。。

 

図2 1.5kbサイトをバイトとした3Cでの-63kbと+119kbの接近が赤のTH1細胞でだけみえる。2b.細胞の核の大きさはTh1とTH2でかわらない。2つの遺伝子ローカスは別々になるので、シスに起こっている。2c  G1フェーズでも起こっている。

 

図3 Th1細胞では、rad21のsiRNAでの3C接近の消失と、basal IFNG発現誘導の低下がみられる。ネガコンとしてIL2の発現はかわらず、ポジコンのPaternal アレルのIGF2の発現は増加する。

 

これらの結果をまとめると、CD4 T細胞のTH1への分化は、コヒーシンの結合の-63kbと+119kbのサイトへの増加からlong range interactionを増加させ、発現量を増加させる。

 

こうした現象は、IGF2/H19, IL4,IL5, IL13 and IFNG MHC class II遺伝子ほかのローカスでもみられる。

(児玉)