2009年5月13日

Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein L (HnRNP-L) is a subunit of human KMT3a/Set2 complex required for H3 lys36 trimethylation activity in vivo.

Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein L (HnRNP-L) is a subunit of human KMT3a/Set2 complex required for H3 lys36 trimethylation activity in vivo.

Yuan W, Xie J, Long C, Erdjument-Bromage H, Ding X, Zheng Y, Tempst P, Chen S, Zhu B, Reinberg D.

 

ヒストンH3K36のメチル化の存在は活発に転写されている遺伝子と相関することが知られている。酵母では、H3K36meはKMT3(別名Set2)によって触媒され、ヒストン脱アセチル化酵素複合体Rpd3sをリクルートすることで転写開始の場所を保証している。この論文において著者らは、ヒトのKMT3a(別名HYPBあるいはhSet2)の複合体を精製する中で高等生物特異的なサブユニットとしてhnRNP Lが含まれていることを見出している。興味深いことに、in vitroではKMT3aのみでH3K36メチル化活性を示すが、in vivoではhnRNP-Lが必須であることである。また、in vitroではKMT3aはH3K36me1, me2, me3を生じさせるが、KMT3aあるいはhnRNP-LのRNAiを行うとin vivoではH3K36me3がほぼ特異的に減少する。

これらの結果は、hnRNP-Lがクロマチン修飾に関与しており、クロマチンテンプレートと共転写・pre-mRNAプロセッシングとの間にクロストークが存在していることを示唆している。

 

図1 ヒトKMT3a複合体の新規サブユニットとしてのhnRNP-L

(A) 酵母KMT3とヒトKMT3aのドメイン構造。Flag-tagを付したC端領域(KMT3a-C)をHEK293に導入したstable cell lineを樹立して実験に使用。(B) Flag-KMT3aとともに溶出されるタンパクの銀染色像。Stable cell lineより核抽出液を調製し、Superrose 6にてゲル濾過した各フラクションをM2 anti-Flag resinにてアフィニティー精製。パネル上に各フラクション番号を示す。(C) KMT3aとhnRNP-Lとの相互作用はRNAse処理に影響されない。hnRNP-LはRNA recognition motifを3つ有するRNA結合タンパクであることから、間接的にRNAを介してKMT3aとhnRNP-Lが共沈してきた可能性もあるのでRNAseにて予め処理をして免沈を実施したが、RNAseの有無にかかわらずKMT3aとhnRNP-Lとが共沈する。(D) Flag-hnRNP-Lを発現するstable cell lineの核抽出液からのFlag-hnRNP-Lの免沈によって内在性のKMT3aが精製される。(E) HeLa細胞において内在性のKMT3aとhnRNP-Lとが相互作用している。hnRNP-L抗体を用いた免沈によってKMT3aが共沈、KMT3a抗体を用いた免沈によってhnRNP-Lが共沈することがWestern blotによって確認される。

 

図2 相互作用ドメインマッピング

(A) 左:相互作用解析に用いたGSTタグ付きKMT3a deletion mutantの模式図。中央:精製したリコンビナントGST-KMT3a deletion mutantの銀染像。右:His-hnRNP-Lを用いたニッケルアガロースpull-downアッセイの結果。KMT3aはSETとWWドメインとのリンカー配列およびSRIドメインを介してhnRNP-Lと相互作用している。(B) 左:Hisタグ付きhnRNP-L deletion mutantの模式図。右:His-tagged hnRNP-L deletion mutantとGST-KMT3aを用いたニッケルアガロースpull downアッセイの結果。KMT3aのC端(K4)との結合にはhnRNP-Lの一つめのRRMドメイン(RRM1)で十分(右下図)、二つめのRRMによってKMT3aのSETとWWドメインとのリンカー部分との結合が安定化される(右上および中央図)。

 

図3 KMT3aのヒストンリジンメチル化活性

(A) Flag-hnRNP-Lを発現するHEK293 stable cellから精製したKMT3a複合体はヌクレオソームヒストンを基質とするメチル化酵素であり、コアヒストンを基質とするものではない。(B) KMT3a複合体はH3K36に特異的である。H3K36のK36A mutantはメチル化されないが、たのK→A mutantではメチル化される。(C) Mass解析の結果より、in vitroにおいてKMT3aはmono-, di-, tri-メチル化活性を示す。対照的に、in vivoではKMT3aのノックダウンによってH3K36me3が特異的に減少する(Supplementary Figure)。

 

図4 hnRNP-LのRNAiはH3K36me3レベルを低下させる

Western blotの結果より、hnRNP-Lに対する2種類のsiRNAをHeLa細胞に処理することによってhnRNP-LとH3K36me3が特異的に減少することがわかる。

 

図5 hnRNP-Lに対するsiRNAをトランスフェクトしたHEK293細胞においてH3K36me3レベルはhnRNP-Lレベルと相関して減少する

siRNAを処理した細胞のhnRNP-Lおよび他のヒストンタンパクを用いた免疫染色像。hnRNP-Lのレベルが低下している細胞を矢印で示してある。hnRNP-Lの発現が低い細胞ではH3K36me3のレベルが低いが、他のヒストンマークは影響されない。

 

図6 in vitroではhnRNP-LはKMT3aの活性を亢進させない

hnRNP-LのノックダウンはKMT3aのノックダウンと同様にH3K36me3レベルを変動させることから、バキュロウィルスにてKMT3a-CおよびhnRNP-Lを作製して、KMT3aの活性に及ぼす影響を検討。しかしながら、hnRNP-Lによる活性化は認められない。

(田中)