2009年5月13日

連続的なユビキチン化によるゲノム修復

Cell 136, 435-446, February 6, 2009

RNF168 Binds and Amplifies Ubiquitin Conjugates on Damaged Chromosomes to Allow Accumulation of Repair Proteins

 

DNA double-strand breaks (DSBs)が起こると近傍のH2AXがATMによりリン酸化される(γ-H2AX)。MDC1はDSB部位に最初にリクルートされてくるアダプタータンパクであり、BRCTドメインを介してγ-H2AXのS139に結合し、引き続きリクルートされてくるRNF8など修復因子のプラットフォームを作る。RNF8はユビキチンリガーゼであり、DSB近傍のクロマチンをユビキチン化して53BP1やBRCA1などの修復因子がさらにリクルートされてくる。

53BP1のDSB部位へのretentionを指標にRNAiでのスクリーニングを行い、DSB修復に関わる新規因子RNF168を同定した。RNF168もE3リガーゼであり、RNF8, MDC1と同レベルの強い53BP1のretentionが見られた。RNF168はRNF8がDSBにリクルートされた後、そのユビキチン化を増強、安定化することで修復シグナルを維持する。連続的なユビキチン化により数種のE3リガーゼが協力してゲノムの維持に関わるという点で興味深い論文である。

 

Fig.1A, B, C DSB部位への53BP1の蓄積に必要な因子としてRNF168を同定した。

RNF168はE3リガーゼ Fig.1E, F IRによるDSB部位への53BP1の集積にはRNF168が必要。Rescue実験でも確認。

 

Fig.S3  Laser microirradiationでDSBを細胞の一部分に起こしたときの修復因子の局在。

Fig.2A  RNF168をノックダウンすると、Ub, 53BP1, BRCA1のDSB部位への集積が認められない。→RNFはRNF8の下流でDSB部位へのユビキチン化を維持し、下流の修復因子のリクルートに必要である。RNF8があってもユビキチン化が減じる。

Fig.2B, S4 RNF168をノックダウンすると、MDC1がDSB後DSB部位に集積しつづける。→RNF168はDSBからの回復に必要

Fig.2C, D リン酸化されたまま。G2 arrest。

 

Fig.3A, B 内因性のRNF168もDSB部位に集積することを確認。RNF168はMIUドメインを解してDSBに集積。(MG132はクロマチンのユビキチン結合を壊す。)

Fig.3B, D RING mutantもMIU mutantもDSB部位のユビキチン化が起こらない。適度に発現するStable cell lineで確認。

Fig.S7A MIU mutantでは、53BP1のDSB部位への集積も見られない。DSB近傍のクロマチン成熟(修飾および回復タンパクのリクルート)には、ユビキチン化を介したRNF168のリクルートが必要。

 

Fig.4A DSBに集まることが知られているE3リガーゼである、RNF8とBRCAをノックダウンしてRNF168のDSB部位への集積を調べた。 その結果RNF168のDSBへの局在にはRNF8が必要。

MDC1はRNF8の上流で、ポジコン。Fig. S6B RNF168のタンパク量自体は変わらない。Fig. S8

DSB以外ではRNF168の動きはRNF8と関係ない。

 

Fig.S9 GFP-RNF8, RNF168, BRCA1を使ったtime-lapse。Microirradiation後、RNF8→RNF168→BRCA1の順(時間的に)でDSBに集積する。RNF8→RNF168→BRCA1。

Fig.4C RNF8はH2Aをユビキチン化し、その脱ユビキチン化酵素としてはUSP3が知られている。USP3を過剰発現すると、IRで誘導される53BP1, RAP80のfocus formationがなくなる。RNF8の下流でDSBに集まることが知られているクロマチン結合タンパク53BP1とRAP80の局在を指標に解析。その結果、RNF8によるユビキチン化がDSBへのタンパクの集積に必要であることがわかった。

Fig.4D RNF168のDSBへの集積にはH2Aのユビキチン化が必要。USP3のcatalytically inactive mutantを用いた。

 

Fig.5A Strep(RNF168)でpull down→H2AでWestern。RNF168はH2Aに結合する。よりH2A-Ubに結合する。

Fig.5B RNF8をノックダウンするとRNF168とH2Aの結合はなくなる。RNF8によるH2Aのユビキチン化がRNF168のDSBへのdocking siteを作っている。

Fig.5C RNF8→RNF168の2つのE3 ligaseがどのように関係して働くのか、まずRNF168のターゲットをin vivo ubiquitylation assayで調べた。RNF168はH2A, H2AXをユビキチン化する。これはRNF8と同じである。RNF168はRNF8によるユビキチン化を増幅/安定させるか?

 

Fig.6A RNF8はUBC13(E2)とK63Ub鎖を形成する。IRによるnuclear fociにはK63ユビキチン鎖が集積する。ということから、RNF168もDSB部位のK63Ub化をするか?調べた。Laser microirradiationによるDSB部位にK63Ub鎖の集積が見られるがRNF168をノックダウンすると見られなくなる。すなわち、DSB部位にK63Ub化にはRNF168が必要。

Fig.6B→K63Ub化

Fig.6C Pull downでRNF168とUBC13(E2)の結合を確認

Fig.S10A RNF168のDSB部位へのretensionとK63ユビキチン化を詳しくtimelapseで見ると、①K63ユビキチン化とRNF168の局在化は相関している②が、RNF8がないと見られない

 

Fig.7A, Fig.S11 RNF8とRNF168は共通のパスウェイで共同に働く。抑制程度の異なるRNF168 siRNAで検討した。#1 強く抑制 #6 少し残る siRNA。#6にRNF8を過剰発現するとRescueできる。

Fig.7B, Fig.S11 RNF168が少し残っていればRNF8の過剰発現でrescueできる。

Fig.7C,D Cell survivalについても、RNF168が少し残っている状態でRNF8をノックダウンすると、顕著に減少する

 

Fig.7 まとめ

DNA切断により修飾を受けたクロマチンにはE3リガーゼであるRNF8が最初に会合するが、これだけではDSB修復経路に十分なユビキチン化は起こせない。RNF8によるユビキチン化はもうひとつのE3リガーゼであるRNF168をリクルートするのに重要で、RNF168はDSB部位のユビキチン化を増幅し、さらなる修復因子のリクルートに寄与している。

  (堀内)