2011年4月アーカイブ

理研とLSBMの共同でエピゲノム創薬研究会を開催

理化学研究所とシステム生物医学ラボラトリーの共同でエピゲノム創薬研究会を開催致しました。




エピゲノム創薬研究会




日時: 2011 年4 月28 日(木曜)午後2時~午後5時15分
場所: 東京大学先端科学技術研究センター4号館3階セミナー室
東京都目黒区駒場4-6-1
http://www.lsbm.org/access/index.html

 (1) PR-SET7 阻害薬

児玉(先端研) 14:00 ~ 14:15
 (2) 質量分析によるヒストン修飾のリード阻害薬スクリーニング

川村(先端研) 14:15 ~ 14:30
 (3) ヒストン修飾ライブイメージングと阻害剤評価

吉田(理研) 14:30 ~ 14:45
 (4) ゲノム解析からのエピゲノム創薬標的探索

油谷(先端研) 14:45 ~ 15:00
 (5) ヒストンメチル化阻害剤スクリーニング

竹本(理研) 15:00 ~ 15:15
 (6) LSD1 の阻害剤探索とエピゲノムの試験管内再構成

梅原(理研) 15:15 ~ 15:30
 
休憩

15:30 ~ 15:40
 


 (7) エピゲノムと生活習慣病

酒井(先端研) 15:40 ~ 15:55
 (8) SUMO 化・脱SUMO 化阻害剤スクリーニング

伊藤(理研) 15:55 ~ 16:10
 (9) PRC2複合体の大量発現とモノクローナル抗体作製

穴井(先端研) 16:10 ~ 16:25
 (10) 分裂酵母の表現型スクリーニング(Tankyrase)

八代田(理研) 16:25 ~ 16:40
 (11) エピゲノム標的のヒット化合物についての考察と、リード化合物を目指した今後の展開

福西(産総研) 16:40 ~ 16:55
 (12) 検証サイクルを経るインシリコスクリーニング  knowledge-based docking screening

本間(理研) 16:55 ~ 17:10
  閉会の挨拶

後藤(理研) 17:10 ~ 17:15

No-nonsense Function for Long Noncoding RNAs

Cell 145, 178-181
Non coding RNA
<200, short/small ncRNAs
>200 ,long noncoding RNAs (lncRNAs)

New functions of lncRNAs
・recruit chromatin-modifying complexes to the site of transcription
・formation of nuclear compartment enriched with chromatin modifiers
・formation of nuclear structures and functional nuclear subcompartment

Fig.1A
Xistはメスの発生過程で、一方のX染色体から発現しそのX染色体の表面を覆うように結合
して、H3K27me3するPRC2をリクルートしてくることでX染色体を不活化する。
Xistの発現は、Tsix, RepAと Xcite(enchance Tsix in active X & upregulating Xist on inactive
X),  JpxとFtx(negative regulator of Tsix)のlncRNAにより複雑に調節されている。Tsixは
Xistにオーバーラップした逆向きに転写されるRNAであり、Xistの発現を抑制する。
TsixRPC2に結合することが報告されている。
Airはallele-specificなSlc22a3, S22a2, Igf2rのサイレンシングに必要であることが知られて
おり、Slc22a3のプロモーター部位に結合しH3K9 methyltransferaseのG9aをリクルートす
ることが示されている。
Kcnq1o1(Lit1)は、91kbのnon-coding RNAであり、クロマチンに結合しG9a, PRC2をリク
ルートする。

・p53により制御されるlincRNAs(long intergenic noncoding RNAs)であるlincRNA-p21は、
p53パスウェイでの転写抑制に働き、p53あるいはlincRNA-p21をノックダウンした場合は
多くの遺伝子において共通の発現変動が見られる。また、lincRNA-p21はp53パスウェイの
構成因子であるhnRNP-Kと結合していることがわかりこれを介して発現制御に関わると考
えられる。

Fig.1B
PRC2-RIPによるクロマチン修飾複合体に結合するlncRNAの解析から、PRC2に結合す
るlncRNAのノックダウンで抑制解除される遺伝子は、PRC2(EZH2,SUZ12,EED-1)のノ
ックダウンのときに抑制解除される遺伝子にエンリッチされていることがわかった。(例
:GLT2はPRC2のRNA cofactorとして、imprinted遺伝子Dlk1の発現制御に働く)
PRC2が結合しbivalent なクロマチン修飾(H3K27me3とH3K4me3)が見られる部位では、
転写と同時にヒストン修飾因子がリクルートされるモデルが考えられる。

Fig.1C
Hoxクラスターintergenic regionから発現するHOTAIRはPRC2(H3K27me3)および
LSD1(H3K4me2 demethylase)に結合する。HOTAIRがscaffoldとして働いてターゲット部
位のサイレンシングを促進する。

・enhancer部位から転写されるnoncoding enhancer RNAsは、その下流のコーディング遺
伝子の発現量と相関することが多いが、その役割はよくわかっていない。
lncRNA自体がenhancerとして機能する例もある。コーディング配列より1kb以上離れた部位にあるlncRNAでコーディング配列に見られるクロマチン修飾(5',
H3K4me3とdownstream, H3k36me3)を持つものについてknockdownを行った結果、近傍のコーディング遺伝子の発現量が減少することが報告されている。(メカニズムについてはまだわかっていない)

Fig. 1D
DEAD-box RNA helicase p68は、lncRNA SRAと結合しCTCFと複合体を形成する。
CTCF1のinsulatorとしての機能はp68, SRAに依存しており、SRAはCTCFとcohesinの結合
を安定化するのに働く。

・homeodomain ranscription factorであるDlx-5, Dlx-6の間に見られるintergenic ultraconserved region(200base以上の魚から人まで95%以上保存された配列)はlncRNA Evf-2の一部として転写されるが、Evf-2の持つ転写活性化機能に重要な部位であり転写因Dlx-2と結合することが知られている。Evf-2/Dlx2複合体はDlx5/6のenhancerに安定的結合してDlx5/6の発現を活性化すると考えられる。Evf-2はmethyl CpG-binding protein ECP2をDNAにリクルートするので、Evf-2によるpositive,およびnegativeな制御が適当なD/x5/6の発現に重要である。

・lncRNAs upregulated in iPSC 、iPS細胞誘導において重要なlincRNA
もとの細胞およびES細胞と比較して、iPSCで発現上昇の見られるlincRNAの多くは
OCT4, SOX2, NANOGが結合する近傍から転写されていることがわかった。そのうち
lincRNA-RoRをノックダウンするとiPSCのcolony formationが低下することが確認でき
た。(lincRNA-RoRをノックダウンすると、p53の制御する遺伝子などが上昇することか
らlincRNA-RoRはiPSCのサバイバルに関係していると考えられる。)

・paraspeckleをつくるlncRNA
Men e/b (NEAT1)。Nascent Men e/bのみparaspeckleを形成することが報告されており、
新たにNEAT1が合成された箇所にすばやくparaspeckle複合体を形成できるという利点が
あるかもしれない。

(担当:堀内)

24  MARCH  2011  |  VOL  471  |  NATURE  |  513-518 
• SETDB1 significantly accelerated melanoma onset.
• Melanomas overexpressing SETDB1 were more aggressive and locally invasive than control.
• SETDB1 overexpression does not have the same effect as loss of p53 in tumour formation.
• SETDB1 overexpression led to a broad pattern of transcriptional changes.
• The direct targets of SETDB1 are the promoters of genes encoding developmental regulators,
including Hox genes.
• A major consequences of SETDB1 amplification is repression of SETDB1-bound target genes.
• The activity of the methyltransferase complex containing SETDB1 and SUV39H1 alters gene
expression in a way that leads to the acceleration of melanoma onset and to increased invasiveness.
• The majority of malignant human melanomas overexpress the SETDB1 protein.
• SETDB1 is focally amplified in a broad range malignancies, suggesting that alterations in histone
methyltransferase activity could define a biologically related subset of cancers.

(担当:Royhan)

2130-2135 | PNAS | February 1, 2011 | vol. 108 | no. 5

Summary

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、環状構造の二本鎖DNAウイルスである。欧米の子宮頸癌でよく発見される16HPVの場合、初期遺伝子 (E1,E2,E4,E5,E6,E7) と後期遺伝子(L1L2)というORFを持っている。特にE6E7が発癌に関与していると考えられている。E7pRbと結合、分解・不活化することでpRbと結合している転写因子E2Fを遊離し活性化することで発がんに寄与している。以前、著者らはHPV16 E7E2F6のポリコーム複合体を消失させることを報告している。この論文では、ポリコーム複合体の結合に必要なヒストンH3K27me3HPV16 E7KDM6A(UTX)KDM6B(JMJD3)の転写誘導を介して減少させること、同時にpRbと結合、分解・不活化を介さずp16INK4aHOX遺伝子の発現を亢進し癌の増殖に関与することを見出した。

 

Fig.1     RecessiveヒストンマークH3K27me3HPV E7を発現させたプライマリーのヒト表皮角化細胞HFK)で減少

Fig.2 HPV E7を発現させたHFK細胞でKDM6AKDM6Bの発現が上昇

Fig.3    HPV E7によるKDM6Bの発現上昇に伴いp16INK4aの発現が上昇し、KDM6BsiRNAで抑制するとp16INK4aの発現が減少

Fig.4   Rbに結合・分解できないHPV E7変異体(delD21-C24) を導入してもKDM6Bp16INK4aの発現上昇が認められることから、KDM6Bのターゲットであるp16INK4aの上昇はHPV E7Rb分解に依存しないこと確認

Fig.5    ポリコーム複合体(PRCs)の標的であるHOX A-Dの遺伝子発現が、HPV E7によるKDM6A/B発現によって亢進

Fig.6    HPV E7テトラサイクリン誘導システムによりKDM6B, H3K27me3の脱メチル化, p16INK4Aが可逆的に亢進することと、また、ChIPH3K27me3KDM6A/Bの結合することを確認した。

Fig.7    KDM6AKDM6BshRNAで抑制すると子宮頚部扁平上皮癌(CaSki)細胞の腫瘍増殖(コロニー形成能)が抑制された。

(担当 大澤)

NATURE REVIEWS | GENETICS     VOLUME 12  |  APRIL 2011 | 283-293

(担当:岡部)

世界で最初の肝細胞がん全ゲノム解読解析

先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野の辰野研究員、山本研究員らは、独立行政法人国立がん研究センターとの共同で、最新型高速シークエン サーを用いてC型肝炎ウイルス陽性肝細胞がん症例の全ゲノム解読を行い、その研究成果に関する論文が英国科学誌『Nature Genetics』オンライン版に掲載されました。これは肝細胞がんの全ゲノム解析としては世界で初めてのものであり、国際がんゲノムコンソーシアムとし ては英国の乳がんの解析に次ぐ2番目の報告です。

今回の研究の主な成果は以下の点です。

  • 世界で初めて肝細胞がんの全ゲノム解読を報告し、63個のアミノ酸置換を引き起こす遺伝子変異と4個の融合遺伝子を含め肝臓がんで起こっているゲノム異常の全体像を明らかにした。
  • 肝細胞がんにおける特徴的な遺伝子変異パターンを明らかにした。
  • 高精度なエクソン解読によって、ごく一部のがん細胞でのみ起こっているがん抑制遺伝子の変異、がん組織の複雑さ(complexity)を発見した。

本研究の意義として、肝細胞がんにおける遺伝子変異のパターン・新しいがん遺伝子・融合遺伝子の同定・腫瘍内におけるゲノムの複雑性、を初めて明ら かにし、肝細胞がんの発生や進展の分子機構の解明から、新たな予防・診断・治療法の開発を推進するために有益な情報をもたらした点に加え、世界レベルでの がんゲノム解読研究基盤の確立と実力を実証することができた事が挙げられます。

肝細胞癌のみならず、がんゲノム解析に関する国際競争が激しさを増す中で、ゲノム情報に基づいた医療の実現へ向けての大きな一歩となりました。今後更に解析症例数を追加し、ゲノム診断の確立・画期的な治療法開発といった研究を目指す予定です。

なお、本研究は独立行政法人医薬基盤研究所「保健医療分野における基礎研究推進事業」からの支援によって行なわれました。

[プレスリリース]日本語解説PDF

PubMed
Jounal Website

LSBM血管生物医学部門、システム生物医学部門の研究員神吉康晴、大学院生戸澤英人らはIL-4刺激が培養血管内皮細胞、in vivoにおいて動脈硬化発症に関わるVCAM-1遺伝子の持続的な発現を誘導することを示し、またその結果誘導される単球の接着においてIL-4下流で 転写因子STAT6が重要な役割を果たしていることを見出した。

また、ゲノムサイエンス部門と共同で血管内皮細胞においてIL-4刺激下でのmicroarray解析及びSTAT6 ChIP-sequence解析に成功し、炎症性刺激下での持続的なVCAM-1誘導における新たなenhancer領域を同定した。

これらの成果は動脈硬化における新たな治療方針に向けた基礎となる発見であり、2011年4月付でMolecular and Cellular Biology (MCB)に掲載された。


Tozawa H, Kanki Y, Suehiro JI, Tsutsumi S, Kohro T, Wada Y, Aburatani H, Aird WC, Kodama T, Minami T.
Genome-wide approaches reveal functional IL-4 inducible STAT6 binding to the vascular cell adhesion molecule-1 promoter.
Mol Cell Biol. 2011 Apr 4. [Epub ahead of print]

PubMed
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