2011年4月21日
Human papillomavirus E7 oncoprotein induces KDM6A and KDM6B histone demethylase expression and causes epigenetic reprogramming
2130-2135 |
PNAS | February 1, 2011 | vol. 108 | no. 5
Summary
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、環状構造の二本鎖DNAウイルスである。欧米の子宮頸癌でよく発見される16型HPVの場合、初期遺伝子 (E1,E2,E4,E5,E6,E7) と後期遺伝子(L1とL2)というORFを持っている。特にE6とE7が発癌に関与していると考えられている。E7はpRbと結合、分解・不活化することでpRbと結合している転写因子E2Fを遊離し活性化することで発がんに寄与している。以前、著者らはHPV16 E7がE2F6のポリコーム複合体を消失させることを報告している。この論文では、ポリコーム複合体の結合に必要なヒストンH3K27me3をHPV16 E7がKDM6A(UTX)とKDM6B(JMJD3)の転写誘導を介して減少させること、同時にpRbと結合、分解・不活化を介さずp16INK4aやHOX遺伝子の発現を亢進し癌の増殖に関与することを見出した。
Fig.1 RecessiveヒストンマークH3K27me3がHPV E7を発現させたプライマリーのヒト表皮角化細胞(HFK)で減少
Fig.2 HPV E7を発現させたHFK細胞でKDM6AとKDM6Bの発現が上昇
Fig.3 HPV E7によるKDM6Bの発現上昇に伴いp16INK4aの発現が上昇し、KDM6BをsiRNAで抑制するとp16INK4aの発現が減少
Fig.4 Rbに結合・分解できないHPV
E7変異体(delD21-C24) を導入してもKDM6Bとp16INK4aの発現上昇が認められることから、KDM6Bのターゲットであるp16INK4aの上昇はHPV E7のRb分解に依存しないこと確認
Fig.5 ポリコーム複合体(PRCs)の標的であるHOX
A-Dの遺伝子発現が、HPV E7によるKDM6A/B発現によって亢進
Fig.6 HPV E7テトラサイクリン誘導システムによりKDM6B, H3K27me3の脱メチル化, p16INK4Aが可逆的に亢進することと、また、ChIPでH3K27me3にKDM6A/Bの結合することを確認した。
Fig.7 KDM6AとKDM6BをshRNAで抑制すると子宮頚部扁平上皮癌(CaSki)細胞の腫瘍増殖(コロニー形成能)が抑制された。
(担当 大澤)