2011年4月19日

世界で最初の肝細胞がん全ゲノム解読解析

先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野の辰野研究員、山本研究員らは、独立行政法人国立がん研究センターとの共同で、最新型高速シークエン サーを用いてC型肝炎ウイルス陽性肝細胞がん症例の全ゲノム解読を行い、その研究成果に関する論文が英国科学誌『Nature Genetics』オンライン版に掲載されました。これは肝細胞がんの全ゲノム解析としては世界で初めてのものであり、国際がんゲノムコンソーシアムとし ては英国の乳がんの解析に次ぐ2番目の報告です。

今回の研究の主な成果は以下の点です。

  • 世界で初めて肝細胞がんの全ゲノム解読を報告し、63個のアミノ酸置換を引き起こす遺伝子変異と4個の融合遺伝子を含め肝臓がんで起こっているゲノム異常の全体像を明らかにした。
  • 肝細胞がんにおける特徴的な遺伝子変異パターンを明らかにした。
  • 高精度なエクソン解読によって、ごく一部のがん細胞でのみ起こっているがん抑制遺伝子の変異、がん組織の複雑さ(complexity)を発見した。

本研究の意義として、肝細胞がんにおける遺伝子変異のパターン・新しいがん遺伝子・融合遺伝子の同定・腫瘍内におけるゲノムの複雑性、を初めて明ら かにし、肝細胞がんの発生や進展の分子機構の解明から、新たな予防・診断・治療法の開発を推進するために有益な情報をもたらした点に加え、世界レベルでの がんゲノム解読研究基盤の確立と実力を実証することができた事が挙げられます。

肝細胞癌のみならず、がんゲノム解析に関する国際競争が激しさを増す中で、ゲノム情報に基づいた医療の実現へ向けての大きな一歩となりました。今後更に解析症例数を追加し、ゲノム診断の確立・画期的な治療法開発といった研究を目指す予定です。

なお、本研究は独立行政法人医薬基盤研究所「保健医療分野における基礎研究推進事業」からの支援によって行なわれました。

[プレスリリース]日本語解説PDF

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