2011年5月アーカイブ

An Epigenetic Signature for Monoallelic Olfactory Receptor Expression
Cell Volume 145, Issue 4, 13 May 2011, Pages 555-570

Background

マウスの嗅覚受容体は1400以上あることが知られており、ゲノム上で巨大なクラスターを形成している。Stem cellからolfactory nerveに分化する際にこの中から一つのgeneが選ばれ、その他はOFFとなることが知られている。また、マウスでは特にその中でもsignle alleleが選ばれ、もう一つのalleleは選ばれないことが知られている。

本研究ではこのpositive selection (一つのgene, alleleが選ばれる過程)negative selection(その他のgene, alleleOFFになる過程)におけるepigenetic制御を解析した。


Figure 1

A; 嗅上皮細胞及び肝臓の細胞を用いてH3K9me3, H4K20me3ChIP-on-chipを行い、特定の染色体においてその濃縮を見たところ、ORVRといったchemoreceptorで2種類のヘテロクロマチンマークが入っている事を見いだした。

B; 全遺伝子でランダムに1000個の遺伝子を選び、この両者のmarkdoubleで入っているものをsortingしてみるとやはりchemoreceptorが多い。

C; 全遺伝子の中からdouble heterochromatin markが入っている上位1000この遺伝子を調べるとほとんどchemoreceptorであった。


Figure 2

A-C; 具体的な例として2番染色体のOR clusterlocusH3K9me3, H4K20me3の両者を調べてみるとChIP-on-chipと同様な結果が得られた。

D-G; もう一つの例として11番染色体のOR clusterで調べても同様な結果であった。


Figure 3

Doublerepression markが入っている領域が実際にheterochromatin状態になっているかどうかをDNase I cut効率を用いて調べたところ、MOEでのみ確かにheterochromatinを形成していた。


Figure 4

Olfactory nerveの幹細胞、支持細胞、嗅上皮細胞の3種類でrepression markを調べたところ、ORの発現に関わらず分化した細胞ではdouble repression markが入っている事が確認された。


Figure 5

Figure 4と同様な結果をvivo sampleを用いて示した。


Figure 6

外因性にGFP付きのOR-Xknockinしたマウスを用いた

GFPsortingして、外因性に入れたallelechoiceされた細胞とされなかった細胞でhistone markを調べたところchoiceされた細胞ではdouble heterochromatin markが外れ、H3K4me3が入っていた。一方でchoiceされなかった細胞ではrepressive markが入りっぱなしだった。


Figure 7

OR cluster内に外因性にOMP-LacZ遺伝子を導入したマウスを用いてhistone mark解析を行ったところ、この領域にknockinされた遺伝子はdouble repressive markが入っていた。

また、LacZの発現を+/- mice+/+ miceで比べたところ、+/+ miceLacZの発現は約2倍であった。Single allele choice ruleが外因性に入れた遺伝子に関しても適用されたことをvivoで示した。


Conclusion

OR genes are repressed via H3K9me2 in stem cells of the olfactory epithelium. During differentiation, OR silencing is mediated by the trimethylation of H3K9 and H4K20. H3K9 and H4K20 likely get demethylated at a single OR allele during OR choice. This epigenetic system induces OR-like expression on an heterologous promoter


(担当:神吉)


TET1 and hydroxymethylcytosine in transcription and DNA methylation fidelity
Nature 473, 343-348 (13 April 2011) doi:10.1038/nature10066 Article

(担当:永江)
Class IIa Histone Deacetylases Are Hormone-Activated Regulators of FOXO and Mammalian Glucose Homeostasis
Cell 145, 607-621, May 13, 2011

Highlights
・Class IIa HDACs play an essential role in activating FOXO via deacetylation
・The fasting hormone glucagon induces class IIa HDAC nuclear translocation in liver
・Class IIa HDACs are inhibited by insulin and metformin-dependent activation of AMPK
・Class IIa HDACs play a critical role in glucose homeostasis and metabolic disease

(担当: Tsurutani)
乳癌細胞株におけるエストロゲン刺激に対する迅速で広範な一過性の転写レスポンス
Cell 145, 1-13, May 13, 2011

<SUMMARY>

・GRO-seq で nascent RNA の生成ダイナミクスを観測した

・ホルモン刺激に反応して迅速に、かつ一過性の転写が起きる

・その転写反応はあらゆる種類の RNA を含むものである

Figure 1. MCF-7 における E2 応答性トランスクリプトームの GRO-Seq による観測

(A) 実験プランの scheme(MCF-7 を E2 刺激し 0, 10, 40, 160 分後にサンプル回収し GRO-Seq)

(B) 特定 locus における GRO-Seq (刺激 0, 40 分後) および Pol II ChIP-Seq (0, 60 分後) シグナル

(C) GRO-Seq シグナルから転写産物を隠れマルコフモデルで detection すると RefSeq とよく一致

(D) 転写産物の内訳(Annotated, Antisense, Divergent, Enhancer, ERα binding site, Intergenic, Others)

Figure 2. MCF-7 のトランスクリプトームのうち、相当数がエストロゲンの制御下にある
(A) E2-Regulated 26% (6003), Nonregulated 74% (16,890)

(B) E2-regulated transcripts 全体での Upregulated or Downregulated 時間別内訳

(C) 転写産物クラス別の時系列ヒートマップ

(D) 転写産物クラス別の Upregulated or Downregulated 内訳

Figure 3. GRO-Seq の結果から、E2 による制御パターンは4つのクラスに分類できる

(A) E2-regulated RefSeq genes の時系列ヒートマップで4つのクラスが見られる

(B) 各クラスの発現量推移の時系列折れ線グラフ

 1:下がる群、2:10 分で最大になりあと下がる、3:40 分で max、4:160 分まで上がり続ける

(C) 各クラスの発現 Fold Change の箱ひげ図

(D) GRO-Seq での Fold Change と Microarray での Fold Change の相関(ρ=0.75)

(E) GRO-Seq の結果で作った発現量推移のグラフと qPCR の結果で作ったグラフの比較

Figure 4. E2 依存転写のダイナミクスを GRO-Seq で観る

(A) 4クラスそれぞれの TSS 周辺での GRO-Seq シグナルの時系列変化

(B) 発現上昇遺伝子 JARID2 で見られる Pol II wave の "leading" edge

(C) 発現減少遺伝子 ESR1 で見られる Pol II wave の "lagging" edge

Figure 5. E2 に制御される miRNA 遺伝子群

(A) E2 依存の miRNA 群の時系列ヒートマップ

(B) miRNA 個々の GRO-Seq シグナルの例

(C) TargetScan (miRNA のターゲット予測プログラム)でターゲットと予測される遺伝子の内訳

(D) 上昇した miRNA 群と低下した miRNA 群の時系列グラフ

Figure 6. E2 は Pol I ないし Pol III による転写も制御する

(A) 45S rDNA (by Pol I) と tRNA (by Pol III) 発現の E2 依存 Fold Change 時系列グラフ

(B) tRNA 群の E2 依存性変化の時系列ヒートマップ

(C) tRNA・rRNA の生合成に関わる蛋白をコードする遺伝子群の E2 依存性変化の時系列ヒートマップ

(D) rDNA 遺伝子座における GRO-Seq シグナルの時系列変化

Figure 7. E2 標的遺伝子のプロモーター領域に ERα 結合部位がエンリッチされている

(A) E2-regulated 遺伝子群のクラス別に、ERα 結合部位を TSS 付近に持つ遺伝子の割合を示す

 → 40 min Max の遺伝子群で約 50%と最も高い enrichment が見られる

(B) 40 min Max の遺伝子群をさらに Transcript Class で類別(Annotated, Antisense, etc...)した場合の

 それぞれのクラスでの enrichment

(担当:山本)

ゲノムサイエンス分野の永江玄太助教、砂河孝行博士研究員は、ヒト正常臓器における網羅的DNAメチル化解析を行い、低CpGプロモーターにおける 組織特異的なメチル化消失を見出しました。また、熊本大学発生医学研究所の粂昭苑教授、白木伸明助教との共同研究においてES細胞からの分化誘導でこのよ うなメチル化消失が生じることを示し、この結果をHuman Molecular Genetics誌(published online)に報告しました。

ヒトのからだはさまざまな種類の細胞から成りたっていますが、DNAメチル化をはじめそれぞれ特有のエピゲノム情報を持っています。この組織特異的 メチル化領域(T-DMR)は、受精卵から分化していく過程でCpGアイランドのプロモーター領域にメチル化が加わっていくと考えられてきました。本研究 では、ヒトの12の正常臓器のメチル化プロファイルを比較し、CpG密度の低いプロモーター領域では組織特異的にDNAメチル化が消失していることを見出 しました。組織特異的脱メチル化遺伝子は、遺伝子発現や特定の転写因子の結合配列とも関連がみられました。この組織特異的脱メチル化遺伝子はES細胞にお いては高度にメチル化されており、in vitroでの肝細胞への分化誘導により徐々に低メチル化領域が拡大することを確認しました。逆に、iPS細胞(線維芽細胞由来)へのリプログラミングの 際に特異的低メチル化遺伝子のプロモーターではメチル化が再獲得されました。以上の結果は、終末分化過程において低CpGプロモーター領域は組織特異的に 脱メチル化を生じることを示唆しており、エピゲノム情報がヒトの発生分化における時空間的な遺伝子発現制御に重要であると考えられます。

Genta Nagae, Takayuki Isagawa, Nobuaki Shiraki, Takanori Fujita, Shogo Yamamoto, Shuichi Tsutsumi, Aya Nonaka, Sayaka Yoshiba, Keisuke Matsusaka, Yutaka Midorikawa, Shumpei Ishikawa, Hidenobu Soejima, Masashi Fukayama, Hirofumi Suemori, Norio Nakatsuji, Shoen Kume, and Hiroyuki Aburatani
Tissue-specific demethylation in CpG-poor promoters during cellular differentiation
Hum. Mol. Genet. (2011) first published online April 19, 2011
doi:10.1093/hmg/ddr170


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Galpha13によるp115RhoGEF活性制御機構の構造解析

LSBMシグナル伝達部門(小笹徹教授)のNicole Hajicek研究員、Christina Chow大学院生らは、Galpha13によるp115RhoGEFの活性化の詳細な分子機構を解析しその成果をJournal of Biochemistryに発表しました。

GPCR-G12/13-RhoGEFシグナル伝達系は、RhoGTPaseの活性制御を通して、細胞の癌化、形態変化、或いは細胞運動などの制御 に関わっています。特に、進行癌での転移や浸潤で重要と考えられていますが、その詳細な分子機構は未だ不明の点が多く残されています。今回精製タンパクを 用いた再構成アッセイ及び理研横浜研究所の横山茂之博士のグループと共同でX線結晶解析を行い、Galpha13と p115RhoGEFのN末端領域のRGSドメインの相互作用が、そのDH/PHドメインを介したRhoのGDP-GTP交換反応をアロステリックに促進 することを明らかにしました。これらの結果は、GPCRを介したRhoの制御機構についての原子レベルでの理解をすすめ、将来のGPCR創薬に重要な基盤 をあたえる点で重要と考えます。


Identification of critical residues in Galpha13 for stimulation of p115RhoGEF activity and the structure of the Galpha13-p115RhoGEF RH domain complex.
Hajicek N, Kukimoto-Niino M, Mishima-Tsumagari C, Chow CR, Shirouzu M, Terada T, Patel M, Yokoyama S, Kozasa T.
J Biol Chem. 2011 Apr 20. [Epub ahead of print]


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