2011年1月アーカイブ

Nature. 2010 Dec 16;468(7326):927-32.

TRIM24 links a non-canonical histone signature to breast cancer.

Tsai WWWang ZYiu TTAkdemir KCXia WWinter STsai CYShi XSchwarzer DPlunkett WAronow BGozani OFischle WHung MCPatel DJBarton MC.

Department of Biochemistry and Molecular Biology, Program in Genes and Development, Graduate School of Biomedical Sciences, University of Texas M.D. Anderson Cancer Center, Houston, Texas 77030, USA.

タンパク質内の特定の構造ドメインによって、修飾されたヒストン種を認識することは、遺伝子発現の調節に重要な役割をもつ。クロマチン調節因子であるTRIM24tripartite motif-containing 24)が、ヒトで植物ホメオドメイン(PHD)領域とブロモドメイン(Bromo)領域のタンデム配列を用いてヒストンの2つの標識を読み取ることを報告する。TRIM24PHD-Bromo領域の三次元構造から、同一ヒストンテール内の非修飾H3K4H3K4me0)とアセチル化H3K23H3K23ac)の組み合わせを認識する単一機能ユニットであることがわかった。TRIM24はクロマチンとエストロゲン受容体に結合し、細胞増殖や腫瘍発生に関連するエストロゲン依存性遺伝子群を活性化する。TRIM24の異常な発現は乳がん患者の予後不良と相関する。TRIM24PHD-Bromo領域は非標準的なヒストンの標識を介してクロマチン活性化が起こることの構造的根拠となり、クロマチン読み取り機構ががん発生に影響を及ぼすと考えられる。

図1 TRIM24タンパクのドメイン構造

 

図2a-d) TRIM24 PHD-BromoH3K4me0とアセチル化ヒストンリジンに同時に結合 a) PHD-Bromo domainの立体構造

e),ITC-bindingアッセイ f) FP(fluorecense polarization)から

TRIM24 PHD-Bromo H3(1-15)K4に比べH3(1-33)K4K23acと親和性が高いことがいえる。また、Bromo PHD fingerいづれかのドメインの構造変化で親和性は低下する。

F979A/N980ABromoドメイン結合部位を変異させた株

C840WPHD fingerの結合部位を変異させた株

図3 TRIM24ERaと共にH3K4me2の減少したEREにリクルートされる。 EREER-response elements

図4 TRIM24は活性化補助因子として、またERαクロマチン相互作用を安定させるのに機能している。GREB1ER応答性遺伝子

図5 TRIM24過剰発現は乳がん患者において予後不良因子となる

(担当、菊池)

Nature. 2010 Dec 23;468(7327):1124-8.

Transcriptional activation of polycomb-repressed genes by ZRF1.

Richly HRocha-Viegas LRibeiro JDDemajo SGundem GLopez-Bigas NNakagawa TRospert SIto TDi Croce L.

Centre de Regulació Genòmica (CRG)/UPF, 08003 Barcelona, Spain.

(担当、米沢 理人)

Cancer Cell. 2010 Jul 13;18(1):23-38.

Siah2-dependent concerted activity of HIF and FoxA2 regulates formation of neuroendocrine phenotype and neuroendocrine prostate tumors.

Qi JNakayama KCardiff RDBorowsky ADKaul KWilliams RKrajewski SMercola DCarpenter PMBowtell DRonai ZA.

Signal Transduction Program, Sanford-Burnham Medical Research Institute, La Jolla, CA 92037, USA.

<要旨>

前立腺癌にみられるneuroendocrine (NE) differentiation(神経内分泌分化)は予後不良の因子とされ、ホルモン治療抵抗性で非常に進行が早いことが特徴である。筆者らは、TRAMP(トランスジェニック腺癌マウス前立腺) モデルマウスを用いて、ユビキチンリガーゼであるSiah2を抑制することにより、NE tumor(神経内分泌腫瘍)を抑制することを見出した。そして、Siah2PHDの分解によりHIF-1aを安定化し、NE特異的に発現する転写因子FoxA2と協調してHes6, Sox9, Jmjd1a遺伝子の発現を亢進していることが示唆された。さらに、Hes6, Sox9, Jmjd1aは転移性前立腺癌で高発現し、神経内分泌分化、転移、および神経内分泌腫瘍の形成に関与していることが明らかとなった。

 

Fig.1        Siah2のノックアウトにより、TRAMPマウスにおける神経内分泌癌が減少

Siah結合ペプチドPHYLによってHIF-1a発現量が減少

Fig.2        Siahノックアウトにより、各臓器における転移病変が減少

Fig.3        FoxA2の強制発現・抑制により、HIF転写活性を増強することを確認

                FoxA2N-TADforkhead domainHIF活性増強に寄与

293T細胞を用いた強制発現系、およびTRAMP-C細胞に内在発現しているHIF-1aFoxA2を用いた免疫沈降により、両者が相互作用することを確認

Fig.4        TRAMP-C細胞においてHIF-1a/FoxA2により発現制御されている遺伝子を特定

                p300FoxA2依存的にHIF標的遺伝子のプロモーターにリクルートされる

Fig.5        TRAMP-C細胞へのPHYLshFoxA2の安定導入によりコロニー数が減少、

                Hes6, Sox9, Jmjd1a (HSJ) を共発現させることでコロニー数が上昇

                PHYL, shFoxA2安定導入TRAMP-C細胞をマウス前立腺に移植すると、

腫瘍形成が抑制され、HSJを共発現すると回復

Fig.6        NE phenotypeを示すRv1細胞を用いた、Fig.5と同様の実験

                PHYL, shFoxA2により血中Rv1細胞数、リンパ節転移が減少、HSJで回復

Fig.7        Gleason scoreNSE, Siah2, FoxA2, Hes6の発現量
(担当、合田)

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