2008年7月アーカイブ

論文1、2 PR-SET7のノックアウトの表現系 ショウジョウバエでの検討
論文3 白血病細胞でのRUNX1の発現サイレンシング

論文1 Aberrant monomethylation of histone H4 lysine 20 activates the DNA damage checkpoint in Drosophila melanogaster
Ayako Sakaguchi and Ruth Steward
JCB 176, 2007, 155-162

概要 ショウジョウバエでPR-SET7のノックアウトを解析すると、DNA損傷のチェックポイントが活性化されている。サイクリンBが減少し、有糸分裂への進展が阻害される。染色体の凝集も低下する。PR-SET7は染色体の凝集に必須なのであろう。

図1 三齢の幼虫の脳を解析した。野生型は二重のリングと活発な細胞分裂を示す。これがPR-SET7変異体ホモでもヘテロでも大きく乱れている。H4モノメチルが低下している。 H4モノメチルの免疫染色は凝集した染色体(リン酸化H3セリン10で示される)にみられる。

図2 
(a) 濃縮されていないところではH4K20モノメチルが検出できていないだけかもしれないので、有糸分裂にはいる細胞をていねいに観測した。野生型では2%、 PR-SET7変異では1.3%であった。Prophaseの細胞がPR-SET7変異で増えている。コルヒチン処理への反応性は悪くないので紡錘糸の形 成は異常ないと思われる。
(b) この変異は、DNA損傷のチェックを担うATR変異のmei41D3変異株では正常化する。
(c) 野生型ではH3のリン酸化は染色体凝集とともに現れるが、PR-SET7変異体では最初から染色体全体に現れる。染色体凝集と紡錘糸形成がカップルしていないと思われる。

図3 サイクリンBが低下する。これを分解するユビキチンリガーゼ複合体APC/Cの構成タンパクのcdc27が変異であれば回復するので分解の亢進と思われる。

図4 異常な染色体パターン(II-IV)が増し、(d)でみるDNA量が2n以下(矢印)が検出される。 遅延染色分体の頻度はPR-SET7にmei41変異(ATR変異)を加えると最も悪い。

図5 DAN損傷チェックポイントの活性化 S期と有糸分裂インデックスが減少し、細胞周期がストップしていることが推測される。これはチェックポイントを壊したMei変異体では回復かむしろ逆の増加するのでチェックポイントによる制御と思われる。

図6 ダブルストランドブレイク(DSB)を検出するH2Avのリン酸化(PH2Av)はγ線照射によりPR-SET7変異でも増加するので正常に反応している。PR-SET7変異でもγ線照射後のPH3陽性の分裂細胞減少はきちんとおこる。

以上よりPR-SET7の変異は凝集以上で染色体異常を感知するATRの系を介して細胞周期のG2/Mチェックポイント停止をおこさせているのであろう。グローバルな状態の規定にPR-SET7は従来想定されていたより重要と思われる。

論文2。Suv4-20は生存に必須ではない
Functional characterization of the Drosophila Hmt4-29/Suv4-20 Histone Methyltransferase Ayako Sakaguchi and Ruth Steward
Genetics 179, 2008, 317-322

概要 H4K20のメチル化はヒトでは2個の遺伝子 suv4-20h1とsuv4-20h-2でになわれるが、ショウジョウバエでは1個 のsuv4-20が行う。この変異体ではジメチルおよびトリメチルが減少し、モノメチルが増加するが生育異常はみられず、クロマチン上にサイレントな領域 を作るPEVも正常である。

図1 2種の決失変異 109はsuv4-20欠失、となりのskpAも欠失のためトランスジーンでレスキューしている。コントロールの174はsuv4-20は正常、skpA欠失は同様にレスキューしている。
図2、図3 メチル化の変異 
表1 突然変異源への感受性は109と174で変わらない。
表2 γ線への感受性も亢進していない。
表3 stubble PEVへの影響も変わりない。
すなわち、suv4-20は染色体の安定性、サイレンシングには関与していないと思われる。 これからみるとモノメチル化のPR-SET7が重要に思われる。 

論文3。PR-SET7による白血病細胞における遺伝子発現抑制    L3MBTL1を動員してRUNX1の転写活性化を抑制する
PR-SET7 establishes a repressive trans-tail histone code that regulates differentiation
Jennifer K Sims and Judd C Rice ;   Mol Cell Biol  Epub May12 2008

概要
 筆者らはPR-SET7によるH4K20のモノメチル化とH3K9のモノメチル化のテイル間の相互作用するコードが重要である。PR-SET7 の触媒作用をなくした変異酵素を用いてもこの抑制的相互作用がおこるところから、タンパク質相互作用をになうことが大事と考えられる。  H4K20モノメチルは、L3MBTL1抑制タンパク(ポリコーム)を動員し、RUNX1の発現を抑制する。白血病細胞K562で、PR-SET7を ノックダウンするとRUNX1が活性化される。巨核球の分化の上で重要な役割を果たしていると思われる。

イントロ
 ヒストン修飾酵素は、細胞種特異的な転写因子の発現を制御することにより、細胞分化を制御する。代表例はH3K27のトリメチル化を制御する ショウジョウバエESC-E(Z)複合体である。H3K27トリメチルはポリコーム複合体PRC1のクロモドメインに結合し、HOX遺伝子クラスターを制 御する。
 H4K20は転写抑制されているクロマチン部位に多くPR-SET7はH4K20のモノメチル化、Suv4-20は、ジおよびトリメチル化を になう。H4K20モノメチルは、L3MBTL1の3つのMBTリピートに結合する。L3MBTL1は、クロマチンを抑制型とし、E2Fの標的遺伝子を抑 制する。特にRUNX1の抑制は白血病発症に関係する。この経路の役割を検討する。

図1 PR-SET7によるH3K9のモノメチル化
Hela細胞でのsiRNAの効果 ラミン、G9a, PR-SET7と、触媒部位を変異させたcatalytically dead PR-SET7(R265G変異体)の過剰発現
G9asiRNA H3K9モノおよびジメチルが減る
PR-SET7siRNA H4K20モノメチルが減ると同時にH3K9モノメチルが減る
変異体過剰発現 H4K20 モノメチルが減る

A) RUNX1の発現量は、PR-SET7のshRNA、触媒作用のないPR-SET7過剰発現、L3MBTL1のshRNAで増加する。
B) RUNX1タンパク量の増加
C) RUNX1 プロモーターと160kb上流のH4K20モノメチルのない領域のChipアッセイ PR-SET7のノックダウンはH4K20およびH3K9のモノメチ ルの消失、L3MBTL1結合低下 PR-SET7触媒欠損はL3MBTL1結合と、H3K9モノメチルは維持できるがH4K20メチル化ができない。
D) C)の判定量的図示

図3 HELA細胞でのPR-SET7とL3MBTL1コトランスフェクションでのH4K20メチル化への効果。L3MBTL1だけだと H4K20モノメチル中心だが、PR-SET7が過剰発現でジおよびトリメチルが増える。RUNX1プロモーターのL3MBTL1とH4K20モノメチル

図4 H4K20メチル化の低下が巨核球への分化をうながす。K562細胞でのRUNX1プロモーター ヘミンやTPA処理でPR-SET7は減少する。H4K20モノメチルはTPA処理で特に低下する。同時にH3K9も低下する。

図5 K562のTPAでの分化
(A) H4K20モノメチルとH3K9モノメチルの低下と、L3MBTL1結合が低下する。
(B) 半定量化
(C) CD41陽性の細胞はH4K20モノメチルが少ない。
(D) 反定量化。

図6 PR-SET7 酵素活性変異の過剰発現による巨核球への分化

補足 プリント参照
HistoneH4K20 monomethylation promotes transcriptiona; repression by L3MBTL1
Kalakonda et al. Oncogene 2008 1-12

図3 L3MBTL1の結合ペプチド
L3MBTL1のH4K20とH3K9のモノメチルへの結合は、histoneテイルのacidic な環境を好む。3つのMBTドメインの2番目のD355Nはこの2つへの結合がなくなる。

図4 PR-SET7とL3MBTL1の相互作用
(a) 293細胞一過性過剰発現したHA-L3MBTL1とmycPR-SET7の共沈 核抽出液
(b) K562細胞にHA-L3MBTL1を強制発現し、stableをとり、antiHAでの免疫沈降でPR-SET7との相互作用を検出した。なおPRMT1,G9aとは相互作用しない。ESET,EZH1,EZH2とも相互作用しない。
(c) 大腸菌で作成したHis-tagged-PR-SET7とin vitro translationでS35標識されたL3MBTL1の各ドメインとの相互作用。なおホモ2量体を作る性質を使ってレーン8ではダイマーをコントロールとしてみている。

図5 レポーター系 stable発現系で抑制レポーターをセットしているが十分なシグナルは難しいように見える。
HEK2930TK22 株を用いる。 GAL4結合サイトを5個もった下にTKプロモーターとルシフェレースをおいてある。ここに、GAL4のDNA binding domainのみか、DNA binding domainとPR-SET7融合タンパク、触媒ドメインに変異をいれたD356N変異を含む融合タンパクをいれたものでレポーター活性をみている。 PR-SET7だけでは20%低下、L3MBTを共発現すると45%低下する。しかし50%以上の活性が残っている。酵素活性欠損タンパクでは活性が 100%残っている。

図6 L3MBTL1のクロマチンへの結合
筆者らはL3MBTL1のE2F結合を報告してきた。そこで今回は、サイクリンEプロモーターのE2F結合サイトへのL3MBTL1結合をみた。 細胞にG9a, PR-SET7, L3MBTL1をトランスフェクとして、siRNAの効果をみている。L3MBTL1のノックダウンは50%までは細胞が生存できるがそれ以上になると致 死的である。50%のノックダウンでは1.5倍のサイクリンE上昇にとどまる。

この論文筆者らの先行研究
A trans-tail histone code defined by monomethylated H4K20 and H3K9 demarcates distinct region of silent chromatine
Jennifer K Sims, -----Judd C Rice JBC 2006, 281, 12760
概要
抗体を作成して検討したところ、H4K20モノメチルは、ダイメチル、トリメチルと異なるクロマチン領域を染色する。特にH4K20モノメチルとH3K9モノメチルはサイレントクロマチンを特異的に反映している。

図1 H4K20メチル化モノ、ジ、トリ特異抗体の作成 16?25番目のアミノ酸を抗原にポリクロナル抗体を作成した。
図2 
(a) メスのMEFでモノとジ抗体は特異的な染色体領域を染色した。主に核周辺部でPol IIと一致しないサイレントな領域に多い。トリメチルはちょっと違った染色パターンを示す。
(b) モノとジ抗体での染色はマージしない。
図3
(a) H4K20モノメチルとH3K9モノメチルは一致する。
(b) H4K20モノとH3K9ジメチルは一致しない。H4K20ジとH3K9ジメチルは一致する。
(c) H4K20トリメチルとH3K9トリメチルは一致する。
図4
(a) HeLa細胞の伸ばしたクロマチンファイバーでみるとH4K20モノとH3K9モノが一致する。
(b) (c) はジメチル、トリメチル
(c) H4K20ジメチルはH3K9モノメチルの隣に位置する。
図5 
(a) HeLa細胞から調整した、モノヌクレオソームをH4K20モノ抗体で免沈するとジおよびトリメチルはあまり落ちてこない。
(b) H4K20トリメチル抗体で免沈すると、モノもジもよく落ちてくる。

これと矛盾する論文は
H4K20 monomethylation is increased in promoter and coding regions of active genes and correlates with hyperacetylation
Heribert Talasz, Wilfried Hellinger JBC 2005 280 38814
Activation of b-major globin gene transcription is associated with recruitment of NF-E2 to the b-globin LCR and gene promoter
Tomoyuki Sawada, Kazuhiko Igarashi and Mark Groudine PNAS 2001 98 10226

SETを理解する。Suppressor of variegation, enhancer of zeste and trithorax、この3つを理解する。Su(v)は前のPEVの回、E(z)とtrxは今回で基本を知る。そしてメチル化酵素のなかでどれをエピゲノ ム創薬の標的とするか考える基礎としたい。 今回は、ポリコームPcGがエピゲノム制御にかかわることの発見の経緯を知る。PcGの3つの複合体、K27メチル化のPRC2, それを認識してH2Aユビキチン化によりまわりの染色体を変えていくPRC1, PHOとMBT複合体、一方、PcGと拮抗するTRX複合体の構造を理解する。 PcGとTRXをよびよせるPREを理解し、それに伴うクロマチン構造変化仮説を考える。

Polycomb silencing mechanisms and the management of genomic programmes
Yuri B Schwartz and Vincenzo Pirrotta Neture Reviews Genetics 2007, vol8 9-22

概要 ポリコームグループ複合体PcGはショウジョウバエのホメオティック遺伝子群を制御し、数百のほ乳類遺伝子も制御する。最初はサイレ ンシングとクロマチンのパッケージングにかかわると考えられていたが、K27のメチル化にかかわるとわかってきた。今日ではポリコーム(PcG)は染色体 全域のエピゲノム制御を強化し、それとK4のメチル化をになうトリソラックスTRXが競合的に働く。このポリコームPcG/トリソラックスTRXの競合的 作用で、細胞の分化にかかわるときにエピゲノムがリプログラミングされることがわかってきた。

イントロ
図1 PcGは最初ショウジョウバエにおけるホメオ遺伝子の異常な発現を抑える遺伝子として同定された。ショウジョウバエのホメオ遺伝子Ubxは 胎児初期と胎児後期と成虫原基(imaginal disc)の頭と羽と平均棍(図の羽の下にみえる突起)を制御する。Ubxプロモーターには3つのエンハンサーが働き、その組み合わせで、働く場所がかわ る。一番下が3つのエレメントが働いた場合を示す。  青の胎児エンハンサーでだけは初期には体の後ろのほうで働く。後期には、全体で発現してしまう(前半の抑制の消失)。成虫原基では発現しない。それに polycomb responsive element(PRE)が加わると、胎児後期の発現も正常化する。  成虫原基エンハンサーだけでは、胎児の発現が抑制され、成虫原基全体で発現する。これにPREを加えるとすべて抑制される。  胎児エンハンサーと成虫原基エンハンサーを合わせると、胎児後期の全体と、成虫原基の全体に発現する。これにPREを加えると、胎児後期も成虫原基では 平均棍の後半だけの限定的な(正しい)発現になる。PREは胎児後期と成虫原基の遺伝子発現の、胎児前期の特異的な抑制の固定化を通じて、発現を制御して いることがわかる。  このPREの作用はショウジョウバエではペアとして存在する相同遺伝子の両方にあらわれる。

補足重要用語1 Transvection ハエでは相同遺伝子がペアとして存在する。このときPcGの作用は両方の遺伝子にあらわれる。これをtransvectionといい、PcGの効果が酵素として近傍のクロマチンも変化させていくことによる。
重要用語2 zeste ショウジョウバエでtransvectionにかかわる遺伝子として発見された。クローニングされてロイシンジッ パーをもつDNA 結合タンパクとわかり、ロイシンジッパーで多量体を作り、染色体のループを作らせUbxを活性化する。同時にPcGを動員してサイレンシングする。
 ショウジョウバエではzesteは、GAGA因子と、NTFIと3つが同じようにリダンダントに働く。しかしzesteおよびGAGAはPcGを動員で きるが、NFTIはPcGを動員できない。 Zesteによるwhiteのサイレンシングをマーカーにenhancer of zeste= E(z)とsuppressor of zeste = Su(z)がクローニングされた。例えばE(z)はサイレンシングをうながすポリコーム複合体のメチル化酵素などであり、Su(z)2(ヒトでは MEL18)は、ヒストンH2Aの近傍のMAPKAPキナーゼ3pKによるリン酸化を認識してRing1Bのユビキチン化を助け、選択した遺伝子の活性化 持続にかかわる。

PcGの3つの複合体
図2 PREに結合する3つのPolycomb複合体(polycomb repressive complex)と、同じところに結合しながら競合的に働くトリソラックス(TRX)複合体が知られる。 PRC1は4つのコアタンパク質とそれに付随するzeste, TATA 結合タンパク(TBP)からなる。 PC (ポリコーム) クロモドメインをもちH3K27Me3に結合する。 マウスではたくさんのクロモドメインのホモログある。 PH (ポリホメオティック) RING(別名 SCE) ユビキチンリガーゼE3のringドメイン H2A K119のモノユビキチン化 PSC (Posterior sec comb) ringドメインをもちRINGのコファクター マウスではBMI1またはMEL18 PRC2のsu(z)2と区別できない。 Su(z)2(ヒトではMEL18)は、ヒストンH2Aの近傍のMAPKAPキナーゼ3pK によるリン酸化を認識してRing1Bのユビキチン化を助け遺伝子の活性化持続 ヒトおよびマウスのPRC1複合体は HPC1,2,3、HPH1,2,3、RING1Aおよび1B、BMI1/MEL18からなる。

PRC2複合体 4つのコアタンパク質E(z), ESC, Su(Z)12, P55それにHDACのRPD3やPCL, 幼虫の複合体では、NAD+依存的なHDACのSIR2も含まれる。 E(z)は、H3K27メチル化酵素で、ヒトではEZH2がこれに相当する。 ESCまたはESCLはWD40ドメインをもち、E(z)のコファクター。 P55(RBAP46/48)は、CAF1に共存するヒストン結合のクロマチン因子である。

第三の複合体はPHO複合体である。これはDNA結合タンパク(Zinc finger)のPHO(マウスのYY1,YY2)と、SFMBT(CG16975)これがヒトではL3MBTL1,L2というH1K26,H4K20も のメチルを認識するクロマチン凝集因子である。

一方TRX 複合体は次のコアタンパク質からなる。 TRXはヒトではMLL1,2,3,4,5のホモログ H3K4メチレース ASH1はヒストンメチレースだが、H3K4に加えてH3K9,H4K20もメチル化できる。ヒトでは、H3K36メチル化との報告がある。 ASH2またはASH2Lは、H3K4メチル化にかかわると考えられている。 これに加えてSWI/SNF複合体のヌクレオソームスライディングにかかわるATPaseとその小ファクターなどがある。

その関係をまとめたのは次の文献2の図1がわかりやすい Polycomb complexes and epigenetic states  Yuri B Schwarz and Vincenzo Pirraotta Current Opinion in Cell Biology 2008, 20, 266-273 PRC2はH3K27をメチル化し、それをPCが認識し、dRINGがH2AK119をユビキチン化する。一方、PHOはH4K20(またはH1K26)を認識しクロマチン凝集をおこす。 一方zesteやGAGA因子はクロマチンのループ化をうながす。 PRE (polycomb rescpoinsive element)への動員 TRXと競合する。

文献1図3  ショウジョウバエでは、数百塩基のPREが遺伝学が同定されているが、そこに何らかのDNA結合タンパク質の結合が必須と思 われる。ハエではPHOでそういう役割が証明されている。またchip解析からE(z)やPSC結合部位がPREであることもわかっている。PRE はヒストンがよく交換されている場所である。ZesteやGAGA因子結合配列も重要である。実際にはH3K27のメチル化がPcGの結合に重要であ る。(PRC2,PHO→PRC1)  トリソラックス複合体(TRX)はPREに結合しうる。TRXのヒトホモログはMLL1とよばれるH3K4メチル化酵素である。MLLという名前はこの 遺伝子の転座がさまざまな白血病になるからである。TRX複合体のもう一つの H3K27脱メチル化酵素は、UTXとJMJD3という2つの酵素がわかっている。この酵素はH3K4メチル化酵素のMLL3とMLL4(別名MLL2ま たはALR)と協調的に働く。そこでH3K4メチル化とH3K27の脱メチル化の協調的作用が注目される。

文献1図4 K27Me3,PC,E(Z),PSCの結合部位
PRE Binding versus spreading PCとヘテロクロマチンタンパク質のHP1はクロモドメインを共有する。これらは結合してから染色体の上を広がっていく(spread)ため多数の分子を 必要とし、dosage effectがみられやすいと考えたくなる。酵母ではこうした現象がRAP1に結合したSIR複合体で知られる。 だが高等動物では、PRC1とPRC2はPREにとどまっている。 そこでzesteなどの機能から遠くはなれたクロマチンにループを作らせる機能が考えられている。 文献1図5 これから見た仮説 H3K27に加えてH3K9およびH4K20がサイレンシングにかかわる。 文献2 その後の展開 UTXとJMJD3のH3K27脱メチル酵素としての発見。さらにUTXはH3K4メチル化のTRXホモログのMLL3,4と共局在することが発見されて いる。 我々のHUVECでのTNF刺激の解析では45分でJMJD3とMLL5が一緒に誘導されている。 なお文献2の図2はPcGとTRXの競合の生み出す4つの効果を示す。

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