2011年7月アーカイブ

ストレス誘導性ATF-2依存エピゲノム変化の非メンデル遺伝

Cell 145, 1049-1061, June 24, 2011



<SUMMARY>

dATF-2はヘテロクロマチン形成に必要である

・ ストレス刺激により、Mekk1-p38-dATF-2経路を介してヘテロクロマチン構造が崩される

・ ストレス誘導性のヘテロクロマチン構造の変化は世代を越えて遺伝する



PB-c06407 (dATF-2PB) : piggyBac insertion dATF-2 TSS近傍に入っている株

In(1)wm4 (wm4) : PEVのモデル株

In(3L)BL1 : ヘテロクロマチン領域の近傍にhsp70- lacZ transgene を持つ株


Figure 1. dATF-2 はヘテロクロマチン形成に必要である

PEV株において、dATF-2が無くなるとヘテロクロマチン形成不良でPEVが解除される

・ヘテロクロマチン領域近傍にlacZを持つ株でも同様


Figure 2. ヘテロクロマチン領域におけるHP1, H3K9me2に対するdATF-2 Mekk1 の影響

・ヘテロクロマチン領域でHP1dATF-2は共局在する

Mekk1-p38-dATF-2 Pathway はヘテロクロマチン形成を負に制御する


Figure 3. ストレス誘導性dATF-2リン酸化によってdATF-2がヘテロクロマチンから離脱し、ヘテロクロマチン構造が崩れる

・ソルビトールによる浸透圧ストレスにより、dATF-2がクロマチンから離脱しChIPシグナルが下がる


Figure 4. ヒートショックによりdATF-2リン酸化が誘導され、ヘテロクロマチン構造が崩れる

・ヒートショックによりdATF-2がクロマチンから離脱しChIPシグナルが下がる


Figure 5. 体細胞・生殖細胞ともに、ヒートショックによるヘテロクロマチン破綻はMekk1依存である

・各条件でのヘテロクロマチン量を共焦点顕微鏡で観測した


Figure 6. ストレス誘導性のヘテロクロマチン破綻は世代を越えて非メンデル遺伝する

PEVの解除され具合がヘテロクロマチンの崩れを反映する

・父系/母系いずれからも伝達される


Figure 7. ヒートショック誘導性のヘテロクロマチン破綻の、複数世代に渡る伝達

・ヘテロクロマチン破綻すなわちPEV解除(赤眼の度合)は世代を越えて伝達される

・世代ごとに影響は段々薄まっていくが、毎世代ヒートショックを加えれば影響は蓄積する


担当:山本



YY1 Tethers Xist RNA to the Inactive X Nucleation Center
Cell. 2011 Jul 8;146(1):119-33.

Summary

X染色体の不活性化の機序はこれまでに様々な報告があるが、long noncoding RNAであるXist RNAPolycomb complexをリクルートすることにより哺乳類のX染色体の一方を不活性化することが知られている。筆者らは、Xist RNAPolycomb complexをリクルートするのにRNAにもDNAにも結合することが可能なYY1が、X染色体上のNucleation centerと名付けられた部位でXistと結合することが必要であることを明らかにした。


Key findings;

  • The long noncoding Xist RNA inactivates one X chromosome in the female mammal.

  • The authors define the nucleation center for Xist RNA and show that YY1 binds to Xist particles onto the X chromosome.

  • YY1 is a 'bivalent' protein, capable of binding to RNA and DNA through different sequence motifs.

  • YY1 interacts with Xist RNA through Repeat C.

  • Conclusions: YY1 acts as adaptor between regulatory RNA and chromatin targets.


担当:三村

CTCF-mediated functional chromatin interactome in pluripotent cells

Lusy Handoko et al.

Nat Genet. 2011 Jun 19;43(7):630-8. doi: 10.1038/ng.857.

About CCTC-binding factor (CTCF)

Insulator-binding protein (boundaries between euchromatin and heterochromatin)

CTCF-mediated interaction and its function have been studied in several selected regions, especially H19-Igf2 locus.

One of the leading candidates as a global genome organizer


Key findings

CTCF functions in promoter-enhancer interaction that is different from the previously proposed enhancer blocking model.

CTCF loops which contain Lamin B-associated domains may act as insulators by establishing boundary structures.


担当:岡部

Recognition of a mononucleosomal histone modification pattern by BPTF via multivalent interactions
Alexander J. et al  Cell 145, 692-706 May 27

ヌクレオソームのレベルでヒストンのマークがどのようなコンビネーションで働いているかを調べるために、ペプチドを用いてhuman BPTFがヌクレオソームをどのように結合させているのかを、システミックなスクリーニングと生物物理学的手法を用いて解析した。

Mononucleosomeでは、human-BPTFsecond PHD finger(=H3K4me2/3bind)と、bromodomain(=H4K16acに結合)は、共局在化しており、ヒストンのマークとしてヌクレオソームのパターンにおいて重要な役割を担っていることが推測された。


担当:山崎

ゲノムサイエンス分野の渡辺亮研究員(現京都大学iPS細胞研究所)及び東京大学医学系研究科大学院生の荻原英樹(脳神経外科、現国立成育医療研究センター病院)らは、膠芽腫においてホモ欠失を示す新規腫瘍抑制遺伝子DACH1を同定した。

本研究は、最も予後の悪い脳腫瘍の一つである膠芽腫の発症のメカニズムを明らかにすることを目的に行われた。SNPジェノタイピングアレイ及びハイ スループット質量分析装置によるDNAコピー数解析によって、膠芽腫で染色体13q21で特異的にホモ欠失を示す領域を同定した。 このホモ欠失領域に含まれる唯一の遺伝子であるDACH1が、脳腫瘍細胞の増殖を低下させ、皮下及び脳室内での腫瘍形成を抑制することを示し、DACH1 が膠芽腫の腫瘍抑制遺伝子であることが示された。 DACH1は腫瘍幹細胞を分化させると共に、幹細胞維持に必須な因子である繊維芽細胞増殖因子FGF2の発現を直接抑制することが示された。DACH1を 過剰に発現させた脳腫瘍細胞株は造腫瘍能が低下するが、FGF2の過剰発現によって造腫瘍能が回復された。

このように、DACH1の欠失によるFGF2の過剰発現が腫瘍幹細胞を維持を促し腫瘍を増悪させることが示され、本研究ではDACH1が「神経分化の守護神」として腫瘍化を抑制するモデルを提唱している。

以上の結果は米国科学アカデミー紀要オンライン版(7/12付)に掲載されました。

Watanabe A, Ogiwara H, et al.
Homozygously deleted gene DACH1 regulates tumor-initiating activity of glioma cells.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 [Epub ahead of print]

PubMed
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