2007年4月アーカイブ

 肝臓・小腸でのステロール排出はATP結合ハーフトランスポーターABCG5およびABCG8によって担われる。ABCG5ならびにABCG8遺伝子は 同一遺伝子座に逆方向に存在し、2つの遺伝子間にはABCG5とABCG8の双方向プロモーターとして機能する介在配列が存在する。
 我々は、その領域内に互いに隣接するHNF4αおよびGATA結合部位を同定した。HNF4αとGATAは肝細胞の核内の同じコンパートメントに共局在 し、2つの蛋白質は直接相互作用、ならびに各々のエレメントへの結合依存的にABCG5とABCG8プロモーターは各々相乗的かつ双方向性に活性化され た。
 このことからABCG5とABCG8の肝細胞・小腸上皮細胞で共発現し、同様の制御を受けるメカニズムにHNF4αとGATAが中心的な役割を果たしていることが示された。

Sumi K, Tanaka T, Uchida A, Magoori K, Urashima Y, Ohashi R, Ohguchi H, Okamura M, Kudo H, Daigo K, Maejima T, Kojima N, Sakakibara I, Jiang S, Hasegawa G, Kim I, Osborne TF, Naito M, Gonzalez FJ, Hamakubo T, Kodama T, Sakai J..
Cooperative interaction between Hepatocyte Nuclear Factor 4{alpha} and GATA transcription factors Regulates ATP-binding cassette sterol transporters ABCG5 and ABCG8.
Mol Cell Biol. 2007 Apr 2; [Epub ahead of print]

PubMed
 SOX6が膵β細胞からのインスリン分泌を抑制すること、インスリン抵抗性モデル動物においてその発現が減少することを我々は以前報告した(J Biol Chem 280, 37669-80, 2005)。
 今回我々は、SOX6がβ細胞の増殖を抑制することを新たに見出した。siRNAを用いたSOX6の発現ノックダウンにより増殖能の増強が認められ、逆 にSOX6を過剰発現させたβ細胞由来細胞株(INS-1E、MIN6細胞)において、細胞増殖が抑制された。SOX6はβ細胞の機能・増殖に重要な働き をすることが知られているβカテニン(PNAS 104, 6247-52, 2007)と結合しHDAC1をリクルートすることで、その転写活性を抑制することを明らかとした。
 このようにSOX6はβカテニンシグナルを阻害しcyclin D1等の遺伝子群の発現を負に制御することで、細胞増殖を抑制するメカニズムが示された。以上の結果から、SOX6はインスリン分泌とβ細胞増殖の両者を 制御するユニークな転写因子であり、インスリン抵抗性状態のβ細胞に役割を担っていることが示唆された。

Iguchi H, Urashima Y, Inagaki Y, Ikeda Y, Okamura M, Tanaka T, Uchida A, Yamamoto TT, Kodama T, Sakai J.
SOX6 suppresses cyclin D1 promoter activity by interacting with beta -catenin and histone deacetylase 1 and its down-regulation induces pancreatic beta -cell proliferation.
J Biol Chem. 2007 Apr 4

PubMed

このアーカイブについて

このページには、2007年4月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2007年3月です。

次のアーカイブは2007年10月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。