2012年10月18日

The long-range interaction landscape of gene promoters

The long-range interaction landscape of gene promoters

ヒトゲノムにおけるプロモーター領域と長距離転写制御領域間の相互作用の全体像
Sep 6 (2012), vol 489, Nature

これまでの Encode コンソーシアムの成果により、ヒトゲノムに散らばる非常に多数
の機能エレメントや疾患につながる調節性変異が特定された。しかしながら、それら
遺伝子から遠方の機能領域と標的遺伝子との関係性を規定する原理はまだ不明確で
ある。この研究では、5C(chromosome conformation capture carbon copy)と呼ば
れるゲノム上の機能領域間の相互作用を特定する実験手法を用いて、ヒトゲノムの
1%に当たる ENCODE の試験的計画領域において、転写開始点(TSS)と遠位エレ
メントの間の相互作用を総合的に解析した。5C マップは GM12878、K562、HeLa-S3
細胞に対して作成され、各相互作用領域の転写活性の特定には ENCODE コンソーシ
アムで行われた ChIP-seq、CAGE、DNase-seq のデータを用いた。結果として、そ
れぞれの細胞株において、プロモーターと遠位部位(エンハンサー、プロモーター、
CTCF 結合部位)との間に、1,000 個以上の長距離相互作用を特定した。更に、それ
ら相互作用のゲノム上での位置関係の傾向を解析する事により、長距離相互作用は明
らかな非対称性を示し、TSS の上流に位置する遠方機能領域との相互作用に対する
偏りがあることがわかった。また ChIP-seq データとの比較により、長距離相互作用
は CTCF やコヒーシンの結合部位によって阻害されないことが特定され、これら因
子のインスレーター以外の機能の可能性を示唆している。更に、最も近傍の遺伝子と
のループ形成による相互作用は全体の約 7%のみであり、単純にゲノムの近接性から
長距離相互作用を推測できないことを示している。また、各 TSS は複数の遠方の機
能領域と相互作用を行い、複雑な相互作用により遺伝子発現が制御されていることが
わかった。

担当:仲木