2012年10月18日

Loss of 5-Hydroxymethylcytosine Is an Epigenetic Hallmark of Melanoma

Loss of 5-Hydroxymethylcytosine Is an Epigenetic Hallmark of Melanoma

Cell 150, 1135-1146, September 14, 2012

DNA のメチル化 (C→5-mC)は、生物学的・病理学的に重要なエピジェネティックマークである。5-mCは TET family によって 5-hmC に変換されることが知られているが、まだ、5-hmC の意義は十分に解明されていない。本研究では、メラノーマにおいて、5-hmC の減少が重要であることを見出した。
まず、メラノーマと良性のホクロの組織を比較し、メラノーマにおいて 5-hmC が減少していることをIHC, dot blot, glucosylation assay にて確認した。また、メラノーマのなかでも、原発巣と転移巣で比較し、転移巣では、より 5-hmC が減少しており、予後とも相関する(5-hmC が少ないほど予後が悪い)ことがわかった。これにより、5-hmC の減少は、メラノーマの診断のみならず、予後予測にも重要であると言える。
次に、メラノーマとホクロのゲノムワイドな 5-mC, 5-hmC の分布を調べるため、MeDIP-Seq, hMeDIP-Seq を行った。グローバルに見てメラノーマでは 5-hmC の peak が明らかに減少していたが、5-mC はほとんど変化なかった。さらに、ホクロにおいてメラノーマに比べて、5-hmC が高く、かつ 5-mCが低い遺伝子を抽出し、GO 解析、KEGG pathway 解析を行ったところ、cell morphogenesis, cytoskeleton organization, Ras protein signal transduction, posttranscriptional regulation of gene expression, Wnt signaling pathway が抽出された。
メラノーマにおける 5-hmC の減少が、TET family やその cofactor であるα-KG をコントロールするIDHs の影響によるものか、RT-qPCR でその発現を調べたところ、IDH2、TET family(特に TET2)の発現が低下していることを見出した。
そこで、IDH2 の発現を回復させることで、メラノーマの形質に変化があるかどうか、zebrafish modelを用いて評価した。IDH2 を強制発現させた zebrafish melanoma model では、5-hmC が増加し、さらに TFS の延長が認められた。また、TET2 をメラノーマ細胞株で発現させ、MeDIP-Seq, hMeDIP-Seqを施行したところ、TET2 wild type を導入した株では、5-hmC が増加していることを確認した。なおCatalytic domain の変異株では、5-hmC の増加は認められなかった。TET2 導入株で、表現型の変化を見たところ、浸潤能・腫瘍形成能の低下が認められた。
以上から、メラノーマにおける 5-hmC の減少は、(多くは)TET2 もしくは IDH2 の発現低下を介して生じ、その発癌や悪性度に寄与していると考えられる。

担当:垣内