2010年12月17日

ホスホリパーゼCβとGq複合体の構造を解明

LSBMシグナル伝達部門特任教授の小笹徹博士がノースカロライナ大学医学部のJohn Sondek, Kendal Harden博士との共同研究で、Gαq-ホスホリパーゼCβ(PLCβ)複合体の構造をはじめて明らかにし、その成果をサイエンス誌に報告しました。

GPCR-Gq-PLCβのシグナル伝達系は、心血管系調節や神経伝達物質分泌など広範囲の生理機能の制御に関わっています。PLCβはGαqとの 相互作用により直接活性化されると同時に、Gαqに対するGAP(GTPase activating protein)活性を持ち、Gαqを不活化する特徴があります。今回の複合体結晶構造解析から、GαqがPLCβのC2ドメインを介してPLC活性を促 進すると同時に、PEF handドメインを介してGαqに対するGAP活性化に関わっていることが明らかになりました。また、このGαq-PLCβ複合体の構造が、生理的な状態 を反映していることをショウジョウバエの遺伝学を用いて証明しました。 これらの結果より、GPCR-Gq-PLCのシグナル伝達系において、Gαq-PLCβ間の双方向制御がシグナルの時間空間的分解能に重要であることを 結晶構造でも示すことができました。


Science. 2010 Nov 12;330(6006):974-80. Epub 2010 Oct 21.
Kinetic Scaffolding Mediated by a Phospholipase C-β and Gq Signaling Complex
Waldo GL, Ricks TK, Hicks SN, Cheever ML, Kawano T, Tsuboi K, Wang X, Montell C, Kozasa T, Sondek J, Harden TK.

PubMed
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