2010年7月20日

転写ファクトリー仮説を支持するChromatin conformation captureの結果がPLoS Biology誌に掲載

2010年7月14日付でオックスフォード大学との共同研究 "Active RNA Polymerases: Mobile or Immobile Molecular Machines?" がPLoS Biology誌に掲載されました。

昨年我々はTNFαで刺激された内皮細胞において転写活性化される遺伝子上でnascent RNA産生の波を観察しました(2009年10月14日ニュース) が、これはクックらが提唱していた転写ファクトリー仮説を支持するものでした。 これは組織化されたRNAポリメレースIIを含む転写ファクトリーに遺伝子が動員されて転写と修飾が同時進行するという概念です。さらにファクトリーの数 は誘導される遺伝子数より遙かに少ないので、ファクトリーは複数の遺伝子を同時に転写すると考えられます。 そこで、我々が既報で解析したSAMD4Aと同じ14番染色体上にあり、TNFαで誘導される遺伝子群から、Chromatin conformation capture (3C)-PCRによって転写が進む時に限って空間的近接関係が認められる遺伝子としてTNFAIP2を同定しました。 加えて別の染色体上にもSAMD4Aと近接関係のあるSLC6A5を見出しました。さらにRNA-FISH法により、産生されたRNA自体も核内で近接関 係にあることを確認しました。 今回の報告は、TNFαで駆動される転写ファクトリーは"複数の遺伝子を同時に転写することができる"という新たな概念を支持するものです。 今後より網羅的な解析によってファクトリーが同時に取り込み、転写する遺伝子群の組み合わせが明らかになると、核内の微細環境で起こっている転写のメカニ ズムがより詳しく解き明かされると考えられます。

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