2010年4月14日
Structural Biology of Human H3K9 Methyltransferases
Structural Biology of Human H3K9 Methyltransferases
PlosOne January 2010 | Volume 5 | Issue 1 | e8570
ヒトH3K9メチルトランスフェラーゼの構造生物学
SETドメインメチストランスフェラーゼは、ヒストンテールの特異的なリジン残基にメチルマークをつけ、遺伝子転写のエピジェネティックな制御に主な役割を果たしている。既知のヒトH3K9メチルトランスフェラーゼ8種(図1)のうち4種であるGLP、G9a、Suv39H2およびPRDM2の活性ドメインの構造を、アポまたはメチル基を与えるコファクターまたはペプチド基質とのコンプレックスの状態で、解いた(図2)。メチル化状態の特異性を決める構造因子を解析し、H3K9をトリメチル化できるG9aミュータントを設計した(図3)。またI-SETドメインが固いドッキングプラットフォームとなり、誘導されてフィットするPost-SETドメインが触媒能力のあるコンフォメーションを取ることを示した(図4、5)。酵素とヒストン基質を長期間静電的に結合させるモデルを提案し(図8)、ターゲットリジン残基の上流のひとつのアルギニン残基の存在が結合と特異性に重要であることを示した(図6)。
図1 ヒトヒストンメチル化酵素の系統樹
図2 4種のヒトH3K9 HKMTの構造: 4つの構造の重ね合わせ(E6)
図3 G9aのモノ/ジメチル化の特異性を決定している構造
GLPの構造を元にヒストンとの位置関係を見るとG9aのY1067がK9ジメチルの方向を決めてAdoMetからメチル基を転移出来なくしているためトリメチル活性がない。Y1067F変異体はトリメチル活性を持つ。F1152Y変異体ではモノメチル活性しかもたない。(E25)
図4 I-SETドメインは比較的固定した保存された構造を持つ(E8)
図5 Post-SET(青)とI-SET(シアン)とヒストンの水素結合によって全てのHKMTの構造が保存されている。H3R8は広い範囲でI-SETドメインと接触している。
図6 GLPとH3K9me,me2の複合体ではH3K4はH3R8と重なっている。(E17)
図7 Suv39H2の自己阻害構造。
Suv39H2の構造解析でPost-SetドメインのC末端側のK264がヒストンのH3K9の占める部位と重なっていることが示された。
図8 H3K9ペプチド結合部位の静電コンポーネント
ヒストンテールは正の荷電しているのに対し酵素の基質ポケットは負の電荷を持つ。(E19-23)