2010年3月30日

大腸癌肝転移のゲノムコピー数解析

研究員の山本尚吾、緑川泰らは、大腸癌肝転移に関連するゲノムコピー数異常についてGenes Chromosomal and Cancer誌に報告した。

大腸癌の治療方針の決定に際して腫瘍の転移の可能性を推定することは重要である。多くの癌では染色体欠失、増幅などのゲノム変異が生じているが、大腸癌の最も一般的な転移先である肝臓への転移において特徴的なゲノムコピー数の異常を同定することで、転移プロセスの解明や転移の可能性を推定する手掛かりになる。

本研究では、肝転移を認めた大腸癌症例19例及び肝転移のない大腸癌14症例について、SNPアレイを用いたゲノムワイド遺伝子コピー数解析を行った。 肝転移の有無に関わらず14の染色体腕で増加や欠失が見られた一方、肝転移群では 20p13-p12.1、20q11.21-q13.33の染色体増加と、6q14.1-q25.1のヘテロ接合性消失(LOH)が高頻度に見られた。 また、同一症例の原発大腸癌と肝転移癌組織の染色体異常を比較したところ、大部分は共通の染色体異常が維持されていたが、原発巣のみで見られる遺伝子コピー数変異もしばしば見つかったことから、癌細胞の不均質性に由来すると考えられる。

本研究により、大腸癌の染色体異常は肝転移のあるなしに関わらずゲノムワイドに類似した傾向があるが、6q、20p、および20qの染色体異常は肝転移群で高頻度なことから肝転移プロセスに関わる可能性が示唆された。

Yamamoto S, Midorikawa Y, Morikawa T, Nishimura Y, Sakamoto H, Ishikawa S, Akagi K, Aburatani H.
Identification of chromosomal aberrations of metastatic potential in colorectal carcinoma.
Genes Chromosomes Cancer. 2010 Feb 19.

PubMed
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