2010年1月28日

Controlling Hematopoiesis through Sumoylation-Dependent Regulation of a GATA Factor

Controlling Hematopoiesis through Sumoylation-Dependent Regulation of a GATA Factor

Hsiang-Ying Lee1, Kirby D. Johnson1, Tohru Fujiwara1, Meghan E. Boyer1, Shin-Il Kim1 and Emery H. Bresnick1,
Published: December 24, 2009.  Molecular Cell


背景
血球系分化においてGATA-1はmaster regulatorとして様々な遺伝子の発現を誘導または抑制する。重要な遺伝子の発現制御にはFOG-1との相互作用が不可欠である。
現在までにGATA-1には様々な翻訳後修飾が報告されているが、それが機能とどう結びつくか詳細な報告がない。今回はSUMO化に着目して赤血球分化における役割を調べた。

実験ツール
細胞
・G1E cell
マウスESのGATA1 null cell line
Estrogen receptorとGATA1をつないだconstructをstableにtransfectionしてある。
Estradiol刺激によってGATA1が誘導されることで赤血球分化が誘導される系。
・FOG1-null cell

Construct
ER-GATA-1
ER-GATA-1 (K137R, K137A) :SUMO化サイトである137番目のKにmutation
ER-GATA-1 (E139A) :同じくSUMO化できない
ER-GATA-1 (V205G) :FOG-1と結合するサイトである205番目のVにmutation
ER-GATA-1 (C261P) :DNAと結合するC端zinc finger内にmutation
ER-GATA-1 (SUMO/K137R) :SUMO化できないGATA1にSUMO-1をfusionしたもの
ER-GATA-1 (SUMO/V205G) :FOG-1と結合できないGATA1にSUMO-1をfusionしたもの
ER-GATA-1 (SUMO/C261P) :DNAと結合できないGATA1にSUMO-1をfusionしたもの

結果
Fig.1
A: ER-GATA-1の模式図、137番目のKがSUMO化に重要
B: GATA1 null G1E cell lineにER-GATA1, K137A, K137Rの3種類のconstruct (数字がclone No.)をstableに発現させた際のGATA-1 Western Blotting。ER-GATA-1は75kD、SUMO-ER-GATA-1は105kD。137Kにmutationを加えるとSUMO化されていない。
C: β-estradiolを加えて48時間たつと、ER-GATA-1は赤血球に分化する。しかし、K137にmutationを加えると赤血球への分化が抑制される
D: G1E cellにstabeにWT, K137R, K137Aを発現させ、estradiolを添加して24時間後のGATA-1標的遺伝子のmRNA発現解析。本来なら誘導または抑制されるはずの標的遺伝子の中でGATA1がSUMO化されないとその効果がなくなるものがある。

Fig.2
A: estradiolで24時間刺激した後のG1E cellを用いたIP-WB。WBの抗体はGATA1。SUMO-1の抗体でIPしてGATA-1でWBすると105kD付近にband。
B: FOG-1 null cell lineにstableにER-GATA-1を発現させた際のGATA1のWB。
C: SUMO-ER-GATA-1の模式図。G1E cellにSUMO-ER-GATA1 (K137R)とER-GATA-1 (K137R)をstableに発現させた際のWestern。SUMOをつなぐと105kD、K137RのみではSUMO化されないために75kD
D: Cの細胞にestradiolを加えて24時間後のmRNA発現解析。先ほどFig1でK137Rによって発現が抑制された遺伝子はSUMOをつなぐことでrescueされる。
E: G1E cellにtransientにER-GATA-1, K137R, SUMO1-K137Rをtransfectionした際のWestern。
F: Eの細胞にestradiolを加えた際のmRNA発現解析。Staableと同様にK137Rで発現が減少し、SUMOをつなぐことでrescueされる
G: G1E cellにE139Aをtransientにtransfectionした際のWB。E139AでもSUMO化は起こらない。同じくその際の発現解析では、E139AもGATA1標的遺伝子の発現は減少する。
H: ER-GATA-1、K137Rが核にあるか細胞質にあるか調べたWB。両方に存在する。
I: G1E cellにtransientに各constructをtransfectionした際の免疫染色。ER-GATA-1は核内に均等に存在するが、K137にmutationを加えるとsubnuclearに存在するようになる。

Fig.3
A,B:β-globinのpromoter, enhancer領域のGATA-1のChIP-PCR。Eyはネガコン。HS3ではK137 mutationで変化がないが、HS2, βmajor, HS26, α-globin, AhspではK137にmutationを加えることでGATA1の結合が減少する。K137はGATA1の結合に必須ではないが、結合をより増強する役割を果たす。
C: 同時にpolIIのoccupancyも減少する。

Fig.4
A: β-globin領域におけるFOG-1, CBP, TRAP220のChIP-PCR。先ほどGATA1の結合が減少していた場所はCBP, TRAP220共に減少している。
B: α-globin, Ahspのlocusも同様。
ただし、両方ともFOG-1の結合には変化がない

Fig.5
A: 模式図。GATA-1がSUMO化されることで活性化される標的遺伝子はFOG-1依存的か、非依存的か?
B: 模式図。V205G (GATA-1とFOG-1が結合できない)、SUMO-1/V205G (SUMO-1を更に結合させたもの)
C: G1Eに上記コンストラクトをtransientにtransfectionした際のWB。
D: FOG-1依存的なβmajorとαglobinはV205Gで発現が減少するが、SUMOをつけることで回復する
E: C261PとSUMO-1/C261PをG1Eにtransientにtransfectionした際のWB。
F: GATA1とDNAの結合を阻害すると、SUMOをつけてもrescueされない。

Fig.6
A: G1EにstableにV205G, SUMO-1/V205Gを発現させた際の免疫染色。V205GはK137Rと同様にsubnuclear localizationを示す。
B: V205GによってFOG-1とGATA-1の結合が阻害されたかどうかを確かめたIP-WB。FOG-1の抗体でIP、GATA-1の抗体でWB。
C: GATA-1が発現していることを確認したWB。
D: V205GでGATA-1標的遺伝子は確かに発現が落ち、SUMO-1をつなぐことでrescueされる。
E: GATA-1, FOG-1, PolIIのChIP-PCR。V205Gで結合量は減り、SUMOをつなぐことで回復する。発現と一致
F: 模式図。通常であればSUMO化されてかつFOG-1と結合することで標的遺伝子を活性化している。SUMO化が阻害またはFOG-1との結合が阻害されると発現誘導活性は著しく低下する。ただしこれらは独立して起こっている。

Fig.7
A: G1E cellにstableにER-GATA-1とK137Rを発現させ、estradiolで24時間刺激した際の3D immuno-FISH.青:nucleara lamine。K137Rで発現が減少する遺伝子群は、刺激を加えてもsubnuclearに存在したまま。WTは刺激を加えると中心部へ移動する。K137Rに応答しない遺伝子群は刺激前後で辺縁にあるまま。
B: Aをグラフ化
C: 模式図

結論
・    FOG-1依存的なGATA-1標的遺伝子はK137のSUMO化で発現が誘導される
・    V205GとK137Rのphenotypeは似ているが、互いに独立している
・    FOG-1依存的遺伝子へのGATA-1 recruitはV205GやK137Rで阻害されるが、SUMOをGATA-1にconjugateすることでrescueされる
・    FOG-1, SUMO-1依存的遺伝子は分化に従って核内でperipheryから離れるが、非依存的遺伝子は分化前後でperipheryのまま
・    核内の位置情報で制御機構が分かれている