2009年10月21日

Nucleation, propagation and cleavage of target RNAs in Ago silencing complexes

Nature 461, 754-761 (8 October 2009)
Nucleation, propagation and cleavage of target RNAs in Ago silencing complexes

RNAiのkey complexであるRISCのternary complex (Ago, guide DNA(RNA), target RNA)の結晶構造解析を行った。ArgonauteはN-terminal, PAZ(RNA binding), MID(RNA binding), PIWIドメイン(endonuclease活性)を持つタンパク質で、Agoによるtarget RNAの切断には、guide RNAとtarget RNAの相補的な結合(position 2-8; seed segment, 10-11 step; cleavage site)が必要である。これまで、Agoとsmall RNAおよびtarget RNAの結合の分子メカニズム(ダイナミクス)はわかっていなかった。今回Agoの触媒ドメインのmutantを用いることでternary complexの解析を行った。

Cleavage site in Ago ternary complexes
(Supp Fig.1)Asn546 Agoとguide DNA(21nt), target RNA (12nt, 15nt, 19nt)を用いて結晶構造を解析し、guide鎖とtarget鎖の詳細なアライメントがモニターできた。
(Fig.1b)12ntの相補的なtarget RNA(21nt)を用いた解析では、guide鎖1-12, 20-21、target鎖2-12がモニターでき、両端はそれぞれAgoの結合ポケットに固定しているのがわかった。(Fig.1d,e) Cleavage siteである10-11 step リン酸基はAgo PIWI domainの触媒残基(Asp478, Asp660,Asn546mut)のそばに位置する。(Supp Fig.4、5)binary とternary complexを比較すると、guide鎖(直交から積み重ね)およびAgo(PAZ domain)の構造変化が見られる。

Release of guide 3'-end from PAZ pocket
(Fig.2b)15ntの相補的なtarget RNA(21nt)を用いた解析では、guide鎖1-16、target鎖2-16がモニターでき、guide鎖の5'リン酸はMid pocketに結合したままであるが、3'側は12-15のらせん構造形成によりPAZ pocketから外れた。(Fig.2c,d,e&movie2)相補的結合が12ntから15ntになったときのcomplexの構造変化。PAZ domainが旋回する。(Fig.2f)またPIWI domainのtargetと接触するloop1(loopからbeta-turn),2の構造も変化し、水素結合によりより安定化する。この変化は12-15の2本鎖が伸長して、PIWIとN domainの間が開き、L1,L2がguide DNAと衝突しないように構造変化を起こし、PAZ domaingが押されて3'端が外れると考えられる。以上の結果から、Agoとguide鎖による認識、targetの切断メカニズムは'two state'modelに合うと考えられる。

N domain blocks guide-target pairing beyond positon 16
(Fig.3b)19ntの相補的なtarget RNA(21nt)では、15ntのものと類似していた。(Fig.3c) N domainにより16ntより先の伸長が阻害され(guide鎖の16はTyr43に、target鎖の16はPro44に固定される)、それぞれ別々の方向に分かれた。

A pair of MG2+ cations mediates cleavage chemistry
(Fig.3e,f)RNase Hによる加水分解は2つのMg2+イオンにより増強される(position A; 核にアタックして水分子を活性化、position B; 転移を安定化)。Ago ternary complexへのMg2+の結合を調べるために、Mg2+存在下での構造を解析した。(Supp Fig.18) Mg2+1個と2個ではPAZ domainとtarget鎖の構造に変化が見られ、2個のときに触媒残基が最適な配置になることがわかった。
Analysis of the catalytic activity of T.thermophilus Ago&Minimal target DNA requirements
酵素活性をDNA target(RNAよりきれいな結果を得られるから)を用いて解析し、target鎖自体の性質を調べた。(Fig.4b)target鎖の長さを5'側から短くすると、切断活性16ntまで短くしても変わらず、15nt以下で活性が急激に低下した。切断には17より先の2本鎖は必要ないことがわかった。(Fig.4c)次に15ntのDNA targetをはじからずらして作成し用いると、4-18までは同等の活性が見られたが、5-19で活性が急激に低下した。切断に1-3は必要ないことがわかった。以上より4-16がペアになっていることが、21nt DNA guideのときに必要であることがわかった。一方guide鎖に関しては、9ntまで短くてもtarget RNAの切断に十分であることを前回報告している(10-16は必要ない?)。9ntのguide DNAは3'端がPAZ domain始めから結合していないことから、Ago ternary complexが切断活性化構造になるには、3'端とPAZとの結合がとれるのが必要で、それ(PAZの旋回によるguide DNAとの結合が外れること)は16ntまでの2本鎖形成により起こる。
Target DNA sugar-phosphate backbone role during cleavage
(Fig.5a)Target DNAの構造と切断活性との関係を調べるために、修飾DNAを用いて解析した。切断リン酸ジエステル結合部の近傍の11の2'-deoxyriboseを2'-OHを2'OMeにすると切断されなくなり、逆に2'-F(negative chargeなので)にすると増強された。(Fig.5b)切断部のリン酸基をO(Mg2+)からS(Mn2+)へ置換すると、Mg2+での切断活性がなくなり、Mg2+と直接連携していると考えられた。Rp型のSはMn2+の添加によりrescueされるが、Sp型はされない。Rp型は構造的に金属イオンAとのみ連携していることから、金属イオンAによる配置はflexibleであると考えれる。