2009年8月25日

GPS2 is required for cholesterol efflux by triggering histone demethylation, LXR recruitment, and coregulator assembly at the ABCG1 locus.

GPS2 is required for cholesterol efflux by triggering histone demethylation, LXR recruitment, and coregulator assembly at the ABCG1 locus.
Jakobsson T, Venteclef N, Toresson G, Damdimopoulos AE, Ehrlund A, Lou X, Sanyal S, Steffensen KR, Gustafsson JA, Treuter E.
Mol Cell. 2009 May 14;34(4):510-8.


要約
転写コレギュレーターはリガンドシグナルよりも、核内受容体シグナルにおいて文脈および経路の特異性を付与していると思われるが、そのような特性を与えるコレギュレーターおよび根底にある分子機構の正体の大部分は謎のままである。本論文では、オキシステロール受容体のLXR経路において、ABCG1コレステロールトランスポーター遺伝子転写およびマクロファージからのコレステロール流出における選択的なGPS2の必要性について言及する。GPS2がリガンド活性化に応答してABCG1特異的なプロモーター/エンハンサー領域にLXRのリクルートを促進することに関与しており、ヒストンH3K9脱メチル化に機能的にリンクしていることを見いだした。さらに、ABCG1とは別のGPS2の様式でLXRによって制御される遺伝子のABCA1について他のコレギュレーターとの関連も含めGPS2の基本的な機能の違いについて報告している。この論文では、ゲノム中の制御領域への核内受容体のアクセスをコレギュレーター依存的なエピジェネティックメカニズムが決定しているということを提唱している。この機序におけるパスウェイとコレギュレーター選択性は、選択的LXR作動薬の開発における薬理学的な可能性を含んでいる。

図1 GPS2の発現低下によってLXRによるABCG1の誘導およびコレステロール流出が障害される。
(A-C)HepG2あるいはTHP-1においてコファクターをsiRNAによってノックダウンした際のLXR標的遺伝子の発現変動。GPS2のノックダウンによってABCG1の発現が特異的に低下する。(D) ABCG1プロテインレベルに及ぼすGPS2の影響。GPS2のノックダウンによってLXRアゴニストによるABCG1タンパク発現の増加が認められなくなる。(E)THP-1細胞からのHDLによるコレステロール流出に及ぼすGPS2のsiRNAの効果。GPS2のノックダウンによりLXRアゴニストによるHDL介在性のコレステロール流出の増加が認められなくなる。

図2 GPS2とLXRがABCG1プロモーターに選択的にリクルートされる。
(A-C)HepG2あるいはTHP-1をLXRアゴニスト処理した後のChIP assay。ABCG1のプロモーター上ではリガンド依存的にLXRおよびGPS2がリクルートされ、HDAC3およびNCoRが減少する(A)。ABCG1プロモーター上ではリガンド依存的にLXR/RXRおよびGPS2がリクルートされており、CBPやSRC-1、pol IIがリクルートされる(B)。THP-1でも同じ(C)。(D, E) C57Bl/6JあるいはLXR-/-マウスをT0901317投与し、肝臓を用いてABCA1およびABCG1プロモーター領域についてChIP(D)およびRe-ChIP(E)を実施した結果、in vivoにおいてもリガンド依存的にABCG1プロモーター上へのLXR/RXRおよびGPS2がリクルートされるが、ノックアウトマウスでは認められない。

図3 GPS2とLXRとの相互作用部位の検討
(A) mammalian 2ハイブリッドアッセイ。GPS2のLXLLモチーフが持たない100-327 aa領域を用いて検討した結果、GPS2はSRC-2と同様なリガンド依存的な結合が認められた。(B)応答配列および精製タンパクを用いた複合体形成アッセイ。in vitroではリガンド非存在下でもLXR/RXRおよび応答配列が存在することで複合体を形成(レーン4)し、リガンド添加によりさらに結合が増加する(レーン5)。(C)LXRのインターフェース変異体を用いたGSTプルダウン。SRC-2は変異体を用いると結合がなくなるが、GPS2は影響を受けない。(D)Helix12を欠如させたLXRを用いたCoIP。GPS2はリガンドの有無に関係なく、Helix12ではない部分と結合している。(E) Helix12を欠如させたLXRを用いたRe-ChIP。Helix12がなくてもABCG1プロモーター上にLXR/RXRおよびGPS2はリクルートされるが、pol IIやSRC-1, 2などはリクルートされない。

図4 GPS2とLXRがH3K9脱メチル化を伴ってABCG1の転写を活性化する。
(A, C, D) Huh7にてGPS2, NCoR, TBLR1をsiRNAsによってノックダウンし、LXRアゴニストによるLXRやコファクターのABCG1のプロモーター、エンハンサー、およびABCA1プロモーターへのリクルートをChIPアッセイによって検討。LXRリガンド添加後、時間依存的にLXR/RXRおよびGPS2のABCG1プロモーターおよびエンハンサー領域への結合が増加した(A)。ABCG1プロモーター領域ではLXRアゴニスト処理に伴い、H3Acが時間依存的に増加し、H3K9me2が低下した(C)。LXRリガンド依存的にABCG1プロモーターおよびエンハンサー領域ではH3K9me2およびG9aが減少し、KDM1, KDM3AおよびKDM4Aのリクルートが増加した(D)。(B)3Cアッセイによるクロマチンループ形成に及ぼすGPS2の影響。LXRリガンド添加によりABCG1のプロモーターおよびイントロン領域がループを形成し、GPS2のノックダウンにより消失した。(E)ChIPアッセイを用いたABCG1プロモーター上へのKDMのリクルートにおけるGPS2のdeletion constructの影響。GPS2のLXR/RXRへの結合部位(150-264aa)を含むコンストラクトではABCG1プロモーター領域上でのH3K9me2の低下とLXRやKDMsのリクルートが認められるが、150-210aaのコンストラクトではH3K9me2の解除およびLXR/RXRやKDMsのリクルートが起こらない。(F)GPS2介在性のLXR転写活性化の仮説モデル。