2009年7月14日

Polycomb protein Ezh2 regulates pancreatic β-cell Ink4a/Arf expression and regeneration in diabetes mellitus

Polycomb protein Ezh2 regulates pancreatic β-cell Ink4a/Arf expression and regeneration in
diabetes mellitus
Hainan Chen, Xueying Gu, I-hsin Su, et al.
Genes Dev. 2009 23: 975-985
Abstract
膵島β細胞の増殖は自己複製と膵島の拡大にとって重要である。Cyclin-dependent kinase inhibitorである
p16INK4aと癌抑制遺伝子p19Arfの増加は老齢マウスにおいてβ細胞の再生に制限をかける。しかし、β細胞
におけるInk4aとArfの働きについてはよくわかっていない。ここでは、ヒストンメチル化酵素であり
Polycomb group (PcG) protein complexのコンポーネントである、Enhancer of zeste homolog 2
(Ezh2)が、β細胞ではInk4a/Arfを抑制していることを報告する。Ezh2のレベルが老化していく膵島β細胞
において減少すること、そしてこのことがInk4a/ArfにあるヒストンH3トリメチルを減少させp16INK4aと
p19Arfのレベルを上昇させる.Ezh2をβ細胞特異的にノックアウトした若いマウスでは、Ink4a/Arf ロー
カスにあるヒストンH3トリメチルが減少しておりp16INK4aとp19Arfのレベル上昇を引き起こしていた。これ
らの変異マウスはβ細胞の増殖能と大きさの低下、低インシュリン血症、軽い糖尿病というフェノタイプを
示したが、 Ink4a/Arf の germline deletion でそのフェノタイプはレスキューされた。コントロールマウス
にてストレプトゾトシン(実験的に糖尿病を引き起こす薬剤)を使用しβ細胞を破壊した場合、Ezh2の発
現が誘導され、それにより適応すべくβ細胞の増殖と大きさが大きくなった。一方、変異マウスに同じ処置
を行ったがβ細胞の再生は起こらず、糖尿病性致死という結果になった。このことから、Ezh2依存的なβ
細胞の増殖を証明することにより、糖尿病発症時において正常β細胞の拡大とβ細胞の再生ができないこと
の根底にはユニークなエピジェネティックメカニズムが関与していることが明らかとなった。
【ノート】
<前提条件>
Ink4a, Arfの発現増加に伴ってβ細胞の増殖が低下する(1999、2006年に報告)
ファイブロブラストにおいてPcGがInk4a, Arfの発現制御をしている(2003、2007年に報告)

<仮説>
β細胞の増殖とPcGは関係している
【結果】
1.Ezh2の発現レベルが下がることで膵島β細胞の増殖が落ちる
2.β細胞においてEzh2の減少が、 Ink4a/Arf ローカスのヒストン修飾を変化させる
3.Ezh2コンディショナルノックアウトマウスでは早期に Ink4a/Arfが発現誘導される
4.βEzh2KOマウスではβ細胞の発育不全、軽い糖尿病というフェノタイプが現れる
5. Cdkn2aを不活性化すると上記のフェノタイプがレスキューされる
6.ストレプトゾトシン処理を受けたβEzh2KOマウスはβ細胞の再生が起こらす重篤な糖尿病になる