2009年7月 1日

Nature:A spatial gradient coordinates cell size and mitotic entry in fission yeast.他

1: Nature. 2009 Jun 11;459(7248):857-60. Epub 2009 May 27

A spatial gradient coordinates cell size and mitotic entry in fission yeast.

Moseley JB, Mayeux A, Paoletti A, Nurse P.

 

2 : Nature. 2009 Jun 11;459(7248):852-6. Epub 2009 May 27.

Polar gradients of the DYRK-family kinase Pom1 couple cell length with the cell cycle.

Martin SG, Berthelot-Grosjean M.

 

 

真核細胞では通常一定の大きさにまで成長してから細胞周期が進行するが、これにはサイクリン依存性キナーゼ Cdk1(cdc2) によって制御されている。このCdk1 の活性制御は一連のリン酸化kinase による抑制制御のカスケード (Wee1-Cdr1-Cdr2) が関与することは詳しく解明されていたが、細胞の大きさを監視する仕組みはわかっていなかった。

ロックフェラー、Paul Nurse ら

分裂酵母を用いて、G2-M の移行エンジンとなる Cdk1 には15番目のY をリン酸化して活性を抑制する Wee1 と逆にこのY15 リン酸化を外してCdk1 を活性化する Cdc25 phosphatase の大きな制御のバランスがある。

この人たちは前にWee1 を今度はリン酸化して活性を抑制するキナーゼCdr2 を同定していたが、proteomics 的アプローチから Cdr2 に相互作用するものとしてBlt1, Mid1, Cdr1 を同定した。

図1,Cdr2, Blt1, Mid1, Cdr1 がいずれも細胞の中心部(間期細胞の中央部ノード(集合点)に局在する。各々物理的相互作用もある。

図2,Cdr2 がこの集合体の要であって、Cdr2 欠損株だとMid1, Cdr1, Blt1 いずれもノードに集合できなくなる。Supplemental Fig. S3 には欠損株の組み合わせがあるが、Cdr2 がないときだけ、この集合がおかしくなる。図2cde のデータからまたWee1 もこのcomplex に入っていてやはりsupplemental S5 からもCdr2 が欠損するとこの集合体に集まらなくなる。

図2にあるようなCdr2 をtop とする制御ネットワークとmitotic entry 制御ネットワークとの相関をしらべるために、cell polarity factor がCdr2 のノードへの局在を制御しているのではないかと考え、polarity factor である For3, mod5, orb2, orb6, pom1, tea1, tea4 の各々の欠損株からの forward genetics アプローチからPom1 (dual specificity tyrosine phosphorylation regulated kinase ) が重要であることがわかった。

図3a、Pom1 欠損だとCdr2 がnode にいけなくなる。さらにSupplemental Fig. S8 から、Mid1, blt1, Cdr1 もnode に集まらなくなる。

図3b、Pom1 はCdr2 をリン酸化している。図3c、WT の分裂酵母の長さに対して、Pom1 欠損だと、M期移行が早くなってその分細胞が短いが逆に Cdk1 の活性化酵素 Cdc25 を不活化するとM期移行が不全で細胞が長くなる。その後は関連性を欠損株の組み合わせで見ているが、Pom1 とCdc25 は独立しているので各々の機能が長さに反映するが、 Cdr2, Cdr1, Wee1 は 同じ系なので、足し算、引き算効果が認められない。Supplemental Table S1, S2 も参照。Tea1 はPom1 の局在制御関連なので、cdc25 とは独立しているが、Pom1 やCdr2 とのdouble mutant でも更なる変動は認められない。

図4,Pom1 の発現濃度が細胞の両端が濃く、そこからのgradient がある。即ち細胞が大きくなると細胞中心のPom1 濃度が最も低くなる。そこで細胞が大きくなるとcell middle でのPom1 がなくなり、Cdr2 の抑制が外れ、一連のキナーゼが活性化され、Wee1 をリン酸化し、Cdk1 の抑制を外し、G2-M が移行していくというモデルが提唱される。図4d ではPom1 を異所性に発現した場合、Cdr 2のnode 局在が崩れていることを示している。図4e ではPom1 の異所性発現でCdr2 のdysfunction があって細胞のG2-M 移行が遅れること、これはCdr2 欠損と同じでCdc25 とは独立の系であることを示している。

Martin, SG らのpaper

ほとんど同じことを似たapproach で発表。追記点としては、Cdr2 のpathway にある Cdr1 の活性を阻害する kinase が Nif1 であり、これのNif1 欠損株ではCdr1 が活性化するためwee1 の阻害がかかり、Cdk1 がより活性化され、細胞のG2-M が促進(細胞サイズが小さくなる)こと、Cdc25 のPathway には Wis1 とSty1 というのがあって、これらの欠損株では cdc25 の活性化が不十分となることを Table 1にて示している。

一番のkey は 図3cである。

さらに、Supplemental Fig. 2 にてPom1, Nif1 ともにcell edge に局在するが、この局在制御にPom1 がactin 非依存的、微小管依存的であるのに対し、Nif1 は逆でactin polymerization に依存していることを示している。

(南)