2009年6月30日

インターフェロン誘導性のP200タンパクファミリー

インターフェロン誘導性のP200タンパクファミリー

(1) Blood Celss, Molecules and Diseases 32 (2004) 133-167

(2) Cytekine and Growth Factors Reviews 19 (2008) 357-369

我々は現在、H4K20をモノメチル化するPR-SET7の阻害剤を開発中であるが、PR-SET7高発現細胞であるK562細胞に100ug/ml投与すると増殖がほぼ完全に抑制される。そこで遺伝子の変動をみると容量依存的に誘導されているのが複数プローブで確認されたのがIFI16とサイクリンG2であった。この2つは増殖の早い腫瘍細胞で抑制されることがしられており、cellular senescenceにかかわると考えられている。最近、IFI16のファミリータンパクであるAIM2が細胞内のdouble strand DNA センサーであることがScience, Natureにあいついで報告された(2009 March)。これらのことからP200ファミリーについて検討することがH4K20メチル化の役割理解にも有用であると考えられ、その総説を中心に概要を紹介する。

文献1

P200遺伝子ファミリーは1982年インターフェロンにより誘導されるmRNAとしてP202がマウスで同定され、染色体1q21-q23領域に4つの遺伝子が同定された。ヒトでは3つの遺伝子が同定されている。

Table1をみると、マウスのp203→AIM2またはNMDA, p204→IFI-16, p205→MNDAと似ている。

図1の構造をみると、ヒトにホモログのないp202だけが変わった構造であるのがわかる。

N端側に90アミノ酸のアポトーシスとインターフェロン反応性にかかわるDomain in apoptosis and interferon response (DAPIN)をもつ。

中央からC端側には200アミノ酸のaドメインとbドメインとよばれるp200特有のドメインがある。このドメインには、MFHATVAT配列が2量体化などのタンパク相互作用をになう。

さらにLXCXE配列のRbタンパクの結合配列がある。

なお最近の報告ではウィルス感染などによる細胞質のdouble strand DNA感知について、p202はカスペース誘導を抑制し、AIM2は結合するとpyrin(DAPIN)ドメインを介してcaspase-1 活性化インフラメソームを活性化する。P202はネガティブレギュレーターなのであろう。

1) An orthogonal proteomic-genomic screen identifies AIM2 as a cytoplasmic DNA sensor for the inflammasome. Nat Immunol. 2009 Mar;10(3):266-72.

2) AIM2 activates the inflammasome and cell death in response to cytoplasmic DNA.

Nature. 2009 Mar 26;458(7237):509-13.

3) AIM2 recognizes cytosolic dsDNA and forms a caspase-1-activating inflammasome with ASC.

Nature. 2009 Mar 26;458(7237):514-8.

4) HIN-200 proteins regulate caspase activation in response to foreign cytoplasmic DNA.

Science. 2009 Feb 20;323(5917):1057-60.

図2既知の作用機構

IFI16はリンパ系、MNDAは骨髄系、AIM2は脾臓、小腸、マクロファージなどに存在。マウスのp204はMyoDと相互作用し、筋肉と心臓の分化にも重要。そこで対応するIFI16の組織分布をみると心臓、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞にもでている。血管内皮細胞ではTNFaのICAM1誘導などに必須。最近は膠原病のSLEの発症にかかわることが知られている。

5) Role of the interferon-inducible IFI16 gene in the induction of ICAM-1 by TNF-alpha.

Cell Immunol. 2009;257(1-2):55-60.

6) Interferon-gamma induces cellular senescence through p53-dependent DNA damage signaling in human endothelial cells. Mech Ageing Dev. 2009 Mar;130(3):179-88.

7) A novel role of the interferon-inducible protein IFI16 as inducer of proinflammatory molecules in endothelial cells. J Biol Chem. 2007 Nov 16;282(46):33515-29.

IFI16はp53,Rbと相互作用する。MNDAは種々核タンパクと、AIM2はdsDNA=カスペース経路

図3 遺伝子座 マウスではp204, 205,203,202の順で存在する。ヒトではMNDA, IFI16, AIM2の順番で存在する。遺伝子進化は先祖のa,bドメイン構造が重複進化し、マウスでは同定されていない遺伝子や多数のp202アルタナティブスプライシングがある。人でも未同定のpseudo genes があるので要注意。遺伝子進化の早い領域なので、エピゲノム変化が注目される領域である。下記の文献の図を配布するので参照。

8) The mouse Ifi200 gene cluster: genomic sequence, analysis, and comparison with the human HIN-200 gene cluster Genomics, Volume 82, Issue 1, July 2003, Pages 34-46

(2)の総説 マウスのIFI-16ホモログのp204の役割に注目 

p204は72kD、640アミノ酸で、N端のアミノ酸は、DAPINドメインを作る。別名、CARDドメイン、Prin,AIM,ASC,and DD domain (PAAD)ともいわれる。DAPINドメインは90アミノ酸からなり、炎症性のタンパク質に共通の配列をもつ。一番 N端側は核移行シグナル KKXKXXKとともにcanicalは核輸出シグナル LXXXLLXXXLLをもつ。前にものべたが2つの200アミノ酸の1a,1bドメインをもち、pRb(リン酸化されたRb)の結合配列LXCXEをもつとともに、cAMP dependent protein kinase (PKA), PKC, MAP kinase, ATM, Cdk2, casein-kinase-2によるリン酸化サイトをもつ。

P204は、インタフェロンα、β、γや、Poly(rI:rC)で転写誘導をうける。

特に総説359ページからの「p204の生物学的機能」を紹介する。

P204は細胞増殖を阻害する。その機能はマルチステップと考えられている。

Rbとp53と結合するが、骨肉腫細胞のU2OS(p53+,Rb+)とSaos2(p53-,Rb-)で、IFI-16過剰発言は、U2OSで効くことはしられるが、Saos2では増殖抑制するという報告と、しなという報告がある。MEFではRbないとp204過剰発現でも増殖抑制しない。

もう一つの機能はp204がRNA特異的なUBF-1と結合すること、HDACであるSin3aと結合することなどリボゾーム機能、エピジェネティック機能が注目されている。

しかし、増殖抑制の本体はまだ不透明な感じが強い。

現在、もっともよく検討されているのは、マウスのC2C12筋芽細胞の筋管細胞への骨格筋の分化のモデルである。この分化につれp204のタンパク量が増加し、リン酸化され、核から細胞質へ運び出される。P204遺伝子のE-box配列にMyoDとmyogeninとE12/E47転写因子が結合する。P204過剰発現は、筋肉分化を促進する。逆にsiRNAやアンチセンスは分化を抑制する。

図1は、この過程を示す。リン酸化されたP204はIdと結合すると核の外へでてIdの抑制作用を抑制する。その結果、C2C12細胞ではMyoDが活性化して骨格筋に分化し、心筋ではGATA4とNkx2.5が活性化して心臓へ分化する。骨芽細胞ではCbfa1が活性化して骨へ分化する。

図2は軟骨細胞でのp204はCbfa1で促進され、Sox5で抑制される。誘導されたP204はCbfa1と結合してコファクターとして作用する。軟骨細胞では、IhhはPTHrPを増加させ、PTHrPは軟骨細胞を増殖させるとともにIhhを抑制しネガティブフィードバックを形成する。Ihhによりcollagne II陽性の軟骨細胞を増殖させられるが、collagenXを作る肥大化軟骨細胞の増加はPTHrPにより抑制されている。P204はここに介入し、Ihh機能をまし第一段階を進めるとともに、PTHrPを抑制して第二段階を進める。

もう一つ、重要なのは酵母2ハイブリッドで同定されたrasとの相互作用である。P204は細胞質で野生型と変異型の両方のrasタンパクと結合している。マウスの心臓ではcoimmunoprecipitationされている。H-ras-GTPハp204と結合するがH-ras-GDPは結合しない。Ras はp204のリン酸化と核外移行を促進する。これはPI-3K阻害剤Ly294002で阻害される。P204過剰発現はanchorage independent 増殖を阻害する。

(児玉)