2009年4月 7日

non-coding RNAのPcG/TrxGリクルートなどの制御への関与

Non-coding RNAs in polycomb/*trithorax* regulation.
Hekimoglu B , Ringrose L ,
RNA Biol. 2009 Apr 13;6(2) [Epub ahead of print]. PMID: 19270511

 

PcG: サイレンシング、H3K27メチル化

TrxG: アクチベーション、H3K4メチル化

PcG、TrxGはstem cell, 分化細胞の遺伝子発現パターンの維持に重要な因子であり、クロマチン構造の変化によりターゲット遺伝子のon/offを決めている。最もよく研究されているターゲット遺伝子はHox genesやDrosophila Bithorax complexである。PcG, TrxGが結合するcis elementはPRE/TRE (Polycomb/Trithorax Response Element) と呼ばれ、多くのPRE/TREからnon coding RNAが転写されていることがハエや脊椎動物で明らかとなっており、PcG/TrxGによる制御にはこれらのnon coding RNAが関わることが分かってきた。

 

Fig.1 細胞分化に伴うPcG, TrxGの役割 ES細胞では、H3K27, H3K4の両方がメチル化されている'bivalent'なクロマチンを形成する。細胞運命が決定するとより安定したサイレンス状態(PcG & H3K27Me3、Fig.1B)、活性化状態(TrxG & H3K4Me3、Fig.1C)となり、エピジェニックなマーカーとして細胞分裂を越えて維持される。

PcG はPRC2, PRC1, PHO、MBT複合体であり、SETドメインを持つEZH2(PRC2複合体の構成タンパク)はH3K27をメチル化する。PC(PRC1のタンパク)はクロモドメインを持ちメチル化部位に結合する。TrxGのタンパクでありSETドメインを持つASH1、Trx/MLLはH3K4をメチル化する。

 

Table 1 分化した細胞では多くのPRE/TREからのnon coding RNAがターゲット遺伝子の活性化と相関して発現している(temporally & spatially)。ターゲット遺伝子の発現と逆の発現パターンを示すものもある(correlation to regulated gene参照)。

 

Fig.2 PcG/TrxGはRNAに結合する。In vitro(Italic直接結合), in vivoの実験より。
PcG

Pc/CbxはssRNA, dsRNAに結合する。Ph/Rae28はssRNA, dsRNAに結合する。配列特異的ではない。EZH/EEDはXist RNA(non-coding RNA)に結合する(構造特異的)。EZH2, SUZ12はKcnq1ot1(imprinted geneのnon-coding RNA)と結合。EZH2, SUZ12はXistの5' Repeat A region(RepA)に結合する。SUZ12はHOTAIR(HoxCのnon-coding RNA)と結合。
TrxG

SETドメインがnascent RNAに結合する。ASH1のSETドメインはTRE1, TRE2, TRE3(UbxのPRE/TREから転写されるnon coding RNA)に結合する。MLLはEvx1as, Hoxb5/b6asと結合。

Cbx,ASHなどではRNase処理によりPRE/TREへの結合がなくなることから、RNAがPcG/TrxGのリクルート、固定に関与していると考えれる。

 

Fig.3 non-coding RNAによるPcG/TrxG制御のモデル

A sweeping。転写のプロセス自体が重要で、PcGをPRE/TREから外す。ハエのtransgenic reporter assay(Fab7, bxd,MCPなどのPRE/TRE non-coding RNA)で見られるように、actin promoter-PRE/TREとレポーター遺伝子(mini-white gene)を並べたtransgenicは、赤眼(WT)になるがactin-promoterをつぶすと白眼(mini-white geneのサイレンスが起こる)になることより、PRE/TREが転写されることが重要。他の例では、ハエ、mammalianのHox gene clusterのnon-coding RNAはHox geneよりも早く転写されており、クロマチンをopenにするのに関与していると考えられる。

B  PcG/TrxGが直接nascent RNAに結合する。PcG/TrxGのタンパクがssRNAやnascent RNAに結合することから(Fig.2参照)、nascent RNAにPcG/TrxGがリクルートされて来たり、さらに安定化させる機構があるかもしれない。

C & D 上の2つは転写自体が制御に重要なモデルであるが、C, Dは転写と制御が直接ではないモデルで、RNAが一旦転写されてからPcG/TrxGと結合してRNA-DNA(C), RNA-RNA(D) interactionを介して制御するモデル。例えば、ASH1とnon-coding RNAのbxd (TRE1, TRE2, TRE3 )。Bxdを発現させるだけで、ターゲット遺伝子のUbxの活性化に十分である。また、X染色体、Hox遺伝子への結合におけるnon-coding RNA(Rep A, HOTAIR)もこれに当てはまると考えられる(Fig.2参照)。Non-coding RNAではsense側、antisense側両方転写されるものもあるので、Dのモデルも考えられる。

(堀内)