2009年4月 7日

NEAT1 RNAのparaspeckleの形成における役割

An Architectural Role for a Nuclear Noncoding RNA: NEAT1 RNA Is Essential for the Structure of Paraspeckles

Christine M. Clemson,1,* John N. Hutchinson,2 Sergio A. Sara,4 Alexander W. Ensminger,2,3 Archa H. Fox,4 Andrew Chess,2 and Jeanne B. Lawrence1,*

Molecular Cell. 2009 Mar 27;33(6):717-26. PMID: 19217333

 

概要 

        NEAT1 RNAは、約4kbでpolyAを持ったnoncoding RNAである。その局在は、mRNAの核内に貯留する役割を担っていると考えられているparaspeckleと共局在する約10-20のfoci状の構造を核内に形成して存在する。 NEAT1 RNAのknockdownは、paraspeckleを消失させる。また、paraspeckle局在タンパクであるPSP1とは異なり、NEAT1 RNAの過剰発現は、paraspeckleの増加を引き起こした。 さらに、Paraspeckleの形成は、NEAT1の転写領域から放射状に広がっていく。ParaspeckleにおいてRNAのA-I editingに関与するPSP1やp54/NRBの局在は、それらの分子内にあるRNA結合領域を介してNEAT1によって制御されている。NEAT1 RNAは、その他の核内貯留型non-coding RNAと異なり、A-I editingを受けない。これは、paraspeckleにおいてNEAT1 RNAが構造的な役割を担っていることと一致する。以上の知見は、NEAT1 RNAがparaspeckleの形成に必須の決定因子として機能していることを示すものである。

 

 

イントロ

       Large(数kb) noncoding RNA (ncRNA)の同定が近年増加してきている。例えば、XistなどはX染色体の遺伝子量補正にかかわっているし、NRONは、NFATの核輸送に、HOTAIRは、HOXD領域の抑制に関与している。

        彼らはヒトfibroblast及びLymphoblastの核と細胞質の発現RNAを比較することによって2つのNuclear-enriched autosomal transcript(NEAT) ncRNAを同定していた。NEAT2/MALAT-1 RNAは、8kbでSC-35ドメインに局在するがNEAT1は、4kbのncRNAでSC-35ドメインの辺縁部に局在していた。これまで多くの場合でRNAの分布はその機能を知る上で重要な知見を与えてきた。例えば、Xist RNAの局在は、不活化したX染色体を取り囲むように局在する。今回、NEAT1 RNAの機能を明らかにするために既存の様々な核内構造との関連について検討した結果、NEAT1 RNAは、Interphaseを通じて全ての細胞で見られるparaspeckleと呼ばれる核内ドメインに局在し、その形成に重要な役割を担っていることを見出した。

 

図1 mouse及びhumanの種々の細胞を用いたNEAT1 RNAとParaspeckleの局在検討

(A-D)大半のNEAT1 RNA由来のFociは、PSP1のドット状に集積している部位(Paraspeckle)とmerge.  (E-H)p54/NRBとも同様の傾向.  (I-K)TIG1: human fibroblast(日本人由来).  (L) HT-1080: human fibrosarcoma, (M) 293, (N-P) MEF

 

図2 siRNAによるNEAT1 RNAのknockdownはParaspeckleの消失を引き起こす

(A & B) (A) Control siRNA, (B) siNEAT1,  (B)においてPSP1の局在が核内にdiffuseに広がっている。核質内におけるPSP1の量は増加。

(C) siNEAT1によってp54/NRBの集積は消失する。

(D & E) (D) Control siRNA, (E) siNEAT1, (E)においてp54/ NRBによるfociが消失している。但し、(B)同様、核質におけるp54/NRBの量はControlに対して増加している。

(F) (A-E)を定量化したもの。

図3 NEAT2/MALAT-1に対するsiRNAは、SC-35 domainには影響しない。

(A & B) (A) SC-35 domains, (B) NEAT2 RNAの免疫染色。共にControl siRNA

(C) NEAT2 RNAをknockdownした時のSC-35 domains (Red), NEAT2 RNA (Green)の免疫染色。

(D) NEAT2 RNAをknockdownした時のParaspeckle(PSP1: Green)の免疫染色。

 

図4 NEAT1Fociとして形成されるParaspeckleは、NEAT1 RNAの転写部位から広がっていく

(A) NEAT1 RNA Fociは、NEAT1の遺伝子座より広がっている

(B) Paraspeckle(PSP1)においても同様にNEAT1の遺伝子座より広がっているように見える。

(C & D) G1の初期において2つのNEAT1 FociがNEAT1遺伝子座近傍で観察される(earliest paraspeckle)。その後、G1の進行に伴いNEAT1 Fociは、広がっていく。

(E & F) G1の初期ではearliest paraspeckleにおいてのみparaspeckleタンパクの集積が見られる。

図5 NEAT1の過剰発現はparaspeckleを増加させる。

(A) Control : mockのstable cell line、B4、B5: Controlに対して20%、50%発現亢進stable cell line。B4、B5共にparaspeckleの顕著な増加が見られる。

(B) YFP-PSP1の過剰発現細胞ではparaspeckleの数に変化は見られなかった。

(C-E) NEAT1 RNA及びControlのstable cell lineにおけるPSP1の免疫染色。増加したparaspeckleと思われる大半のNEAT1 FociはPSP1陽性である。NEAT1のstable cell lineにおいて核質にdiffuseに拡散したNEAT1の増加は見られず、Controlでは見られないControl細胞では見られない小さなNEAT1 Fociが観察された。

(F) NEAT1 RNAとYFP-PSP1の共局在。共局在は、paraspeckleで見られる。

 

図6 in vivo及びin vitro両方においてNEAT1 RNAはparaspeckleタンパクと結合する

(A) 各種抗体を用いたIP-qPCR

(B) 各抽出液からのPSP1のimmunodepletion

(C)Nitorocellulose binding assayを用いた結合実験。ヘパリンは強くネガティブにチャージしている為、タンパクなどのポジティブの電荷をカバーし非特異な電荷による核酸の結合をブロックする。Sense NEAT1 RNAはPSP1/p54複合体に特異的に相互作用する。ヘパリン存在下ではSense鎖のみ特異的に結合。GSTに対しては、PSP1/p54複合体との結合に見られるようなタンパク濃度依存的な結合がみられない。S6で見られるようにRNA-タンパクの結合曲線を描くとsense鎖のみ濃度依存的な特異的結合が見られる。

 

図7 RNA Recognition Motif(RRM)の決しつはPSP1のNEAT1 RNA Fociへの局在を消失させる

(A-B) PSP1-236-523: RRM欠失変異体。 p54/NRBとは結合。この変異体は、paraspeckleには局在しない。PSP1のRRMは、p54との結合を安定化するとの報告有り。この複合体は、協調してparaspeckleにおいてNEAT1 RNAに結合?

(C-F) PSP1 1-236: p54/NRBとの結合ドメイン決失変異体。核質にdiffuseに存在。Paraspeckleへの集積にこのドメインが必要。NEAT1 RNAやparaspeckleとは共局在しない。(C) PAP1 antibody (Red), (E) NEAT1 RNA

 

以上の知見は、NEAT1 RNAがU2やsnRNAなどの核型のその他のnoncoding RNAとは異なり、paraspeckleに単に局在しているだけでなく、タンパクの集積を介してparaspeckleの形成を行っていることを示唆するものである。

(砂河)