2009年4月 7日

PWWPドメイン蛋白によるset-9でのH4K20メチル化の制御

Regulation of Set9-Mediated H4K20 Methylation by a PWWP Domain Protein
Yu Wang,1 Bharat Reddy,1 James Thompson,2 Hengbin Wang,3 Ken-ichi Noma,4 John R. Yates III,2 and Songtao Jia1,*

 

PWWPドメイン蛋白によるset-9でのH4K20メチル化の制御

コロンビア大学 Wang, Jiaら

 

概要 

 DNA損傷を認識するチェックポイントの活性化において、H4K20メチル化は、53BP1/Crb1の動員に必須である。分裂酵母では、Set9が、me1,me2,me3化をになっているがそのメカニズムは不明であった。

 今回我々は、PWWPドメイン蛋白のPdp1がヒストンに結合し、Set9のクロマチン局在に必須であることを発見した。Pdp1のない酵母は、H4K20のme1,2,3いずれもおこらず、Crb2動員も障害されている。H4K20メチル化ヒストンにPWWPドメインは結合し、その結合能力のない変異体は、in vivoでSet9のクロマチン動員も、H4K20メチル化も障害される。

 これらの結果は、PWWPドメインは新たなエピゲノムのメチルリジン認識モチーフであることを示す。

 

イントロ

 H4K20メチル化はヒトではPR-SET7/set8がme1を、SUV4-20h1,h2がme2,me3を担うが酵母では、set9という一つの酵素が存在するだけであり、Crb2をDNA損傷の部位に動員する。このCrb2のほ乳類ホモログは、53BP1という蛋白で種をこえてよく保存されており、H4K20me1,me2に結合する。

 この過程で、我々は、プロリンートリプトファンートリプトファンープロリン配列をもつPWWPドメイン蛋白のPdp1が重要な役割をもつことを発見した。PWWPドメインはRoyalファミリーに属し、Tudor, chromoやMBTドメインとともに、修飾ヒストンを認識する。

 

図1 Set9-Flagをもちいた複合体の精製

A. Set9欠損株は、UV刺激に弱くなる。それをFlag-Set9で回復する。

B. Pdp1が免疫沈降してくる。

C. ウェスタン

D. 質量分析結果

E. 模式図

図2 蛋白相互作用の証明 

図3 pdp1かset9のいずれが欠損してもH4K20がなくなる。

C. Set9の動員にはpdp1が必須である。 D. GST-Pdp1プルダウンでヒストンコア蛋白げ免疫沈降される。

図4 Pdp1はDNA損傷チェックポイントの活性化に必須である。

A. 紫外線照射や放射線照射において、酵母を希釈してプレートしておき、サバイバルを見る。

B. 生存率がCrb2欠損 < pdp1/set9欠損 < 野生型

C. chk−1キナーゼのリン酸化がおこらない

D. Rad3-chk1チェックポイントがおかしくなっている。(rad3欠損株ではそれ以上の効果はない)

 

図5 

A. Pdp1欠損細胞にGFP-Crb2を発現しておき、放射線をあてると、fociを形成する。

B. 放射線照射によりCrb2はゆっくり移動する複合体がみられる。

C. Crb2欠損だとpdp1欠損もset9欠損も同じ効果。

 

図6 PWWPドメインの疎水性の空洞が重要な役割をはたしている

A. PWWPドメインの配列

B. Pdp2のPWWPドメインの結晶構造 疎水性ポケットを作るのは、136F 緑  139W 青 169F 赤  コントロールは138W ピンク

C. Pdp1で上記のPdp2構造に相当するW66, F94アラニン変異株でのH4k20me3の消失  コントロールはW65 (Pdp2の138Wに相当) W63変異体は異なる挙動をしめしたが理由は不明

H4K20me2はかわらず、H4K29me1は増加

D. Pdp1の疎水性空洞を作る芳香族アミノ酸の変異体をつくるとset9がヒストンに結合しない

E. しかしこれらのPdp1変異は放射線、紫外線への感受性をかえない。Chk1キナーゼはDNA損傷でリン酸化される。

 

図7 PWWPドメインがH4K20me1に結合することの証明 過剰発現とGSTプルダウン

D.E PWWPはH4K20me1に特異的に結合する

 

 上記からえられる重要な結論は、H4K20me1,2はDNAチェックポイントに必要だが、me3は不要である。ほ乳類でも53BP1はH4K20me2に結合するがme3には結合しない。

分裂酵母ではset9欠損株はDNA損傷チェックポイント以外には、遺伝子発現やストレス反応には関係しない。 分裂酵母でのPdp2,3の機能はわかっていない。

 ほ乳動物ではメチル転移酵素のNSD1とNSD2はPWWPドメインをもつ。NSD1はH4K20とH3K36をメチル化する。SUV4-20はクロモドメインをもつHP1と結合している。多数のPWWP蛋白はヒストン修飾酵素、DNA修飾酵素、転写因子などにある。

(児玉)