2009年4月22日

Tyrosine dephosphorylation of H2AX modulates apoptosis and survival decisions

Tyrosine dephosphorylation of H2AX modulates apoptosis and survival decisions.

Peter J. Cook, Bong Gun Ju, Francesca Telese, Xiangting Wang, Christopher K. Glass & Michael G. Rosenfeld

Nature 458, 591-596 (2 April 2009)

 

Cookらは、ほ乳類胎児の腎組織において protein tyrosine phosphatase のEya (Eye-absent)-1 及び -3 がIR stress を受けた際の細胞の2つの選択(apoptosis と遺伝子修復による生存)のうち、高効率なDNA 修復の促進に寄与していることを明らかにしている。

Phoshatase である Eya-1/-3 がヒストンcomplex の一つ H2AX のC末端のリン酸化tyrosine (Y142) を損傷シグナルに応じて脱リン酸化することで、修復酵素 (MDC1, MRN complex) のH2AX への結合を促進し、逆に Fe65/JNK1 のH2AX への結合を阻害する(Y142 が脱リン酸化されるとJNK1が結合できない)ことで積極的に遺伝子修復の方向へ向かわせていることがその作用機構である。

Eya 欠損により、腎組織及び眼の異常apoptosis が生じることから、in vitro の系として HEK293T を使用している。IRstress を受けた際の核内でのapoptosis か遺伝子修復を介した生存かの選択制御が Eya phosphatase と4量体ヒストンの一部 H2AX によって決まっていることを生化学的に証明している。General に細胞全てに当てはまるかは不明。

 

Fig. 1: EYA 欠損でTUNEL  positive のapoptotic 細胞が増えている (A, developing kidney, B, renal tube). HEK でsiRNA-Eya1 およびsiRNA to Eya3 処理し、低酸素におくことによってapoptosis 細胞が増加。

 

Fig.2: Flag-H2AX とHA-EYA1 や HA-EYA3 が IR 刺激のあとで相互作用している(A)。内因性での H2AX (IR 刺激でS139 がリン酸化された H2AX,gamma-H2AX) と Eya3 との相互作用(B)。sonicate した chromatin 状態でも互いの相互作用が認められる(C)。免疫染色での H2AX と Eya1/3 の共局在(D)

 

Fig.3: Eya はDNA-damage 依存性のkinase (ATM/ATR) によってリン酸化されることで H2AX と結合しうる。

A, IR 刺激下、ATM-リン酸化特異的Eya-3 抗体でもってEya-3 が検出されている。B, ATM-kinase 阻害剤のcaffeine を加えると、 IR 依存的な H2AX と Eya の相互作用が阻害されている。C, Eya3 のATM によってリン酸化される部位 (S219) をS219  to A にしておくと、H2AX との共局在が認められない。D,そのことを co-immunoprecipitation で証明。E, IR 刺激前からも Eya-1/-3 はcomplex 形成している。

 

Fig.4: A, IR 刺激、DNA トポイソメラーゼ阻害剤 (camtothesin, CPT)、hypoxia ショックによって H2AX のtyrosine リン酸化量が減少している。B, 組み換え精製 Eya-1 /-3 によって H2AX のtyrosine リン酸化は低下するが、phosphatase 活性を消失した mutant (Eya1, D323A; Eya3, D246A) ではその低下活性が認められない。C, H2AX のIR によるtyrosine リン酸化量減少はEya-1 あるいは Eya-3 のSiRNA ないしはEya-1/-3 両方に対する siRNA を処理することで消失する。D, Eya-3 siRNA によるIR 依存性 H2AX のphospho-tyrosine 減少の阻害効果は組み換え型 Eya3 の添加で相殺されるが、 phosphatase 欠損のEya3 の添加では相殺されない。E, H2AX のEya-1/-3 のtarget tyrosine 脱リン酸化部位はY142 である。F,  Eya-3 のC末ドメイン WT では H2AX の Phospho-tyrosine を含む C末ペプチドの脱リン酸化を行うが H2AX のPhospho-serine では活性を示さない。 Eya-3 C末の酵素機能欠損では H2AX のいずれのC 末ペプチドに対しても効果を示さない。

 

Fig. 5: A, 今度は H2AX の Eya-1/-3 の基質となるY142 を F に換えたmutant では IR ストレス時での gamma-H2AX (H2AX のS139 リン酸化型)が生じる率が WT に比べ減少した。B,(一番の key となる図) 293T 細胞核抽出液を H2AX のphospho-S-Y あるいは phospho-S-phospho-Y のペプチドを吸着させたビーズで吸着反応をさせたところ、Eya-1/3 でもって脱リン酸化された状態をmimic した phospho-S-Y では修復酵素がくっつくが、Yがリン酸化された状態のままだと、apoptosis 誘導性 JNK1 がくっつく。C, 強制発現 H2AX WT では内因性 JNK1 が相互作用するが、 H2AX Y142F ではその結合が大きく減少した。D, H2AX のaffinity chromatography で とれたSH2 あるいは PTB ドメインをもつ核内タンパクを supplemental Table1 で示しているが、有意な Fe65 が強制発現 H2AX の co-IP 実験でも結合していることを示している。E,  JNK1 と Fe65 が内因性でも結合しうることを示したもの。F, IR ストレス下、Fe65 がないと H2AX に JNK1 が結合できないことを示したもの。G, IR ストレス時でも Y142F mutant だと効率的な apoptosis が生じないことを TUNEL staining で示したもの。H,これまでのデータのモデル図。

(南)