2009年3月 2日

ヒストンメチル化

(1)H3K9me2について Nature Genetics 2月号 真貝/Feinberg

Large histone H3 lysine 9 dimethylated chromatin blocks distinguish differentiated from embryonic stem cells.
Wen B, Wu H, Shinkai Y, Irizarry RA, Feinberg AP.
Nat Genet. 2009 Feb;41(2):246-50.

(2)H3K36me3について

Differential chromatin marking of introns and expressed exons by H3K36me3.
Kolasinska-Zwierz P, Down T, Latorre I, Liu T, Liu XS, Ahringer J.
Nat Genet. 2009 Mar;41(3):376-81.

(3)H4K20me1について
Monomethylation of Histone H4-Lysine 20 is involved in Chromosome Structure and Stability and is essential for Mouse Development.
Oda H, Okamoto I, Murphy N, Chu J, Price SM, Shen MM, Torres-Padilla ME, Heard E, Reinberg D.
Mol Cell Biol. 2009 Feb 17. [Epub ahead of print]

 

(4)クロマチンの成熟をうながすH4K20のモノメチル化

Monomethylation of lysine 20 on histone H4 facilitates chromatin turation.
Scharf AN , Meier K , Seitz V , Kremmer E , Brehm A , Imhof A ,
Molecular and Cellular Biology. 2009 Jan;29(1):57-67.

概要 in vitroのショウジョウバエのクロマチンアセンブリー系を用いて、ヒストン修飾とそれにつづくヒストン沈殿をみた。ダイアセチル化(Ac2)されたヒストン4の脱アセチル化は、クロマチン会合に依存する。ヒストンをDNAの上にまきつけると、H4K20がモノメチル化されて、それがH4の脱アセチル化に必要である。H4K20me1がおこるとdl(3)MBT (maliganat brain tumorという名のクロマチン凝集因子のハエホモログの3番)が結合する。dl(3)MBTとdRPD3(ショウジョウバエのHDAC1:単独で転写抑制に働く脱アセチル化酵素)複合体が形成され、脱アセチル化はdl(3)MBT依存的におこっている可能性がある。これらの結果はヒストンモノメチル化が、クロマチンアセンブリーとともについたりはずれたりダイナミックに動いていることを示す。

イントロダクション
ヒストン凝集は、H3とH4沈着と、H2A/H2B沈着、続いてリンカーヒストンに結合するH1によりクロマチン繊維(30nm)が形成される。新規に合成されたH4はK5とK12がアセチル化される。HeLa細胞ではH3は主にK14とK23がアセチル化され、ショウジョウバエではK14とK23がアセチル化されている。これらのアセチル化はクロマチン凝集とともにすみやかにとりのぞかれる。今回の論文ではこの脱アセチル化が、H4K29me1化とそれにつづくMBT/RPD3=HDAC1動員によることを示す。

図1 ショウジョウバエのエンブリオのS150クロマチン凝集エクストラクト(DREX)を用いた。この抽出物をもちいると大きなDNA断片を秩序正しいクロマチン構造にまとめることができる。ウニの5S rRNAをリニアリズしてビオチン標識し、ストレプトアビジンビーズに結合させる(Fig1A)。約1時間でヒストンの集積がおこるが(Fig1b)、きちんとしたスペースをもったMNaseで切断して確認できるヌクレオソーム構造は数時間かかってできてくる。

図2 質量分析でみると、実験に使うH4のN端側のアミノ酸はジアセチル化しているものが多い(Fig2a). 質量分析でマップするとK5とK12がジアセチル化している(Fig2C)。組み替えで作成した酵母のHAT1酵素を用いて、K5とK12をアセチル化したH4を用いて脱アセチル化を見ることができる。比較的ゆっくりおこり、モノアセチル、修飾なしができてくる。DNAがないと脱アセチル化はおこらない。

図3 クロマチン化の最初の6時間でおこるのはH4K20me1修飾だけである。H4をプロテアーゼで切断してみると1時間からH4k20me1がある。ウェスタンでみると2時間くらいから急速に増えている。

図4 PR-SET7を大腸菌で組み替えで酵素を作る。ヒストンを組み替えで作ると、ヌクレオソームの形でだけH4メチル化がおこる。組み替え8量体でもメチル化はおこらない。(図4a,b)   DREXにはPR-SET7とdRdp3(dHDAC1)が多量にある。 H4K5またはK12をyHAT1でアセチル化しても、DREXによるメチル化はかわらない。

図5 メチレース活性の測定 SAH (a) s−アデノシルホモシステインでの抑制 (b) ウェスタンでの抑制の確認 (c) PR-SET7を抑制しても、ヌクレオソーム形成はかわらなく見える。
(d) ところがPR-SET7を抑制して4時間でみると、H4K20me1がへって、脱アセチルされたH4
も減っている。SAH(s-アデノシルホモシステイン=メチレース阻害)では、脱アセチル化活性は低下しない。しかしHDAC活性の増加も認めない。

これらの関係をみるため、BMTを検討した。ショウジョウバエには3種のBMTがあり、SCMとdSMBTと、dl(3)MBTがクロマチン凝集にかかわる因子と知られる。

図6 (a) クロマチン凝集とともに30分からdl(3)MBTがくっついてくる。 (b) H4K20のメチル化されたペプチドにMBTはよく結合する。 (c) バキュロウィルスの発現MBTがあるとHDAC活性が結合している。 そこにはdHDAC1(dRpd3) が共局在している。dHDAC3 は一緒でない。
(d) HDAC活性はMBTとそくくっついている。(e) dRpd3(dHDAC1)の結合はメチレース阻害剤(SAH)で抑制される。