2009年3月24日

要旨(2)APCと局在RNA

Genome-wide screen reveals APC-associated RNAs enriched in cell protrusions

Stavroula Mili1, Konstadinos Moissoglu2 & Ian G. Macara1

1Department of Microbiology, Center for Cell Signaling, 2Cardiovascular Research Center, University of Virginia, HSC, Charlottesville, Virginia 22908-0577, USA.

 

要旨 高次生命体を形成する上で"極性"は重要な要素である。細胞における極性の形成についてRNAの局在も重要な役割を果たしている。本論文では哺乳類の細胞を用いて偽足に局在するRNAを網羅的に同定し、局在メカニズムについて解析した。その結果局在RNAの3'UTRが局在に必要かつ十分なこと、またAPC(adenomatous polyposis coli)やFMRP(fragile X mental retardation protein)蛋白が局在RNAと一致して認められ、特にAPCはRNAの偽足への局在に関与していることがわかった。

 

Fig.1 a. NIH3T3をLPA(chemotactic)あるいはFibronectin(haptotactic)によって刺激し偽足を伸長させた後物理的に分離して解析に使用した。b. 細胞体と偽足に分離できている。c. RT-PCRで偽足に蓄積するmRNAを確認。

Fig.2 a,b. mRNAが偽足に蓄積するメカニズムを調べるためにRab13, β-globinの3'UTRを組み替えた。Rab13の3'UTRをRhoAの3'UTRと組みかえると偽足への濃縮が見られなくなった。一方でβ-globinにRab13の3'UTRを組み替えるとこのトランスクリプトの偽足への濃縮が見られた。このためRab13の3'UTRが偽足集積に必要かつ十分と考えられた。c,d,e. RNAの細胞内局在を可視化するためにMS2システムを使用した。RNAに組み込んだMS2-binding siteにGFP融合MS2タンパク質が結合し標的RNAの細胞内局在が調べられる。この系でも特定の3'UTRがmRNAの偽足集積に必要であることがわかった。

Fig.3 a. RNAのターンオーバーを見るためにFRAP(fluorescence recovery after photobleaching)を行った。局在RNAはstableな状態であることが示された。b. 局在RNAはtubulinのplus endに一致して集積していた。 c. 局在RNAはtubulinの中でもacetylated microtubulesではなく、比較的変動の少ないdetyrosinated microtubulesのplus endに集積していた。 d, e. Nocodazoleによってmicrotubuleを脱重合させると局在RNAは有意に減少した。

Fig.4 a. 90%以上の局在RNAが APCと共局在する。b. 抗APC抗体を使った免疫沈降によりFMRPタンパク, PABP1(cytoplasmic poly(A) binding protein)タンパク, Rab13 mRNA, Pkp4 mRNAの濃縮を認めた。c. RNase存在下ではAPCとPABP1は共沈せずmRNAの介在が示唆された。d, e. FMRPも局在RNAと共局在する。f. shRNAを使用してAPCをknockdownしたところ偽足形成には変化はなかったが、局在RNAが減少した。g. β-globin/Pkp4-3'UTRの局在も同様にshRNAで減少した。

(佐藤輝)