2009年3月17日

Origins and Mechanisms of miRNAs and siRNAs

Origins and Mechanisms of miRNAs and siRNAs

Richard W. Carthew and Erik J. Sontheimer            (Cell 136,642-655)

 

『役割』クロマチン構造、クロマチンの分離、RNAプロセッシング、RNA安定化および翻訳制御→主として遺伝子の発現抑制による制御。RNAiの機構と一致する。

 

『分類』役割、由来、複合体を形成するタンパクの種類によりsmall RNAは3つのグループに分類できる。

 Short interfering RNA                (siRNA)

  microRNA                                    (miRNA)

  Piwi-interacting RNA                  (piRNA)

これらのRNAは真核生物のみに存在する。一方、small RNAと結合するAgonauteタンパクはバクテリアや古細菌に存在することが知られている。

『識別』

siRNAとmiRNA:系統発生的、生理学的条件、先駆体の二重鎖の性質により分類

piRNA      :初期は動物種で発見。生殖細胞系列で最も機能を発揮。先駆体は明らかではないが、一本鎖由来と推測される。

『結合タンパク』

siRNA/miRNA  :Ago, Argonaute

piRNA           :Piwi

 

siRNAs and miRNAs : Themes in common

1993年:developmental Timeを制御する内在性の因子としてlin-4がC.elegansで発見

1999年:外来性dsRNAが特定の遺伝子発現を抑制することを報告 ~21-23nt RNAi

2001年:多くの植物、動物種でsmRNAが発見された。

     →miRNA:内在性遺伝子の発現制御

      siRNA :外来性ゲノムの侵入を防ぐ

     一本鎖miRNA、siRNAのRNAはRNA-induced silencintg complexes(RISC)           と相互作用する

初期の分類

1:miRNAは内因性遺伝子の発現制御

  siRNAは外来性(ウィルス トランスポゾン等)の遺伝子制御

2:miRNAはstem-loop先駆体RNAから生成

  siRNAはlong formから完全一致dsRNAが生成

(Fig1A)先駆体からDicerによってsmall RNAが形成され、Agoタンパクと結合する。

Dicer:A portal into RNA silencing

(Fig1 B)RNAaseⅢがmiRNA/siRNAを生成すると考えられており、これがDicerということがC.elegans、D.melanogasternoで示されている。特定のドメイン配列を持つ

『Dicerの数』

哺乳類 線虫           :1

ショウジョウバエ              :2(Dicer1→miRNA、Dicer2→siRNA)

シロイヌナズナ                  :4

複数のDicerを持つものは、それぞれ役割が限定

PAZドメインはdsRNAの3'overhang(~2nt)を認識.。PAZドメインとRNaseドメインの距離によりsmall RNAの長さが決まる。

 

Argonaute:At the Core of RNA Silencing

『分類』Argonatuteタンパクは3.つのサブグループに分類できる

Piwi       :piRNAに結合

Ago        :miRNA siRNAと結合

~           :線虫のみ

 

Dicerにより切断されたdsRNAは巻き戻され、一方の鎖のみRISC複合体に組み込まれる。残りは廃棄される。

Argonauteタンパクは複数存在する。ショウジョウバエ5 ヒト8。結合するRNAに若干の違いがあるが、ヒトではその専門性が明らかになっていない。

 

siRNAs Sources of siRNA Precursors

基本的なRNAiは長く、直鎖状、完全一致dsRNAで直接細胞質に取り込まれる。

初めsiRNAは植物で発見され、ウィルス等のから遺伝子を防御するものとして見つかった。

(Fig2)

 

RISC Assembly and siRNA Strand Strand Selection

dsRNAは直接Argonauteタンパクに結合できないため、RISC assembly pathwayを利用する(fig2)

この複合体はDicer TRBP Ago2タンパクを含む。最終的にdsRNAはsiRNAに形成されRISCにロードされる。

どちらの鎖が選択されるかは5'末端のベースペアの熱力学的安定性による。二つの鎖の安定性が同じ場合は、RISCに誘導される頻度は同じになる。機構はまだ明らかになっていない。

 

Posttranscriptional Silencing by siRNA

RNAiの機構ではsiRNAがRISCに取り込まれ、完全一致の標的遺伝子に結合後切断が起こる。(Fig3右)この切断は、厳密であり、siRNA複合体の10-11塩基の間が切断される。一度この切断が起きると、エンドヌクレアーゼがこの分子をターゲットとして働く。

不完全一致siRNAでも転写後抑制が見られる(fig3上)翻訳抑制はエクソ切断等のmiRNAの機構に近い。実験に使用するsiRNAで完全一致でない遺伝子の抑制が見られる(off-target)。

siRNAの翻訳抑制は細胞質内で起きていると考えられている。

線虫AgoタンパクNrde-3はsiRNAの結合により核から細胞質へ移行することが知られている。

 

Priming the Pump:siRNA Amplification

線虫等のある生物種は、ひとつのdsRNAがあらたなsiRNAを生み出す。(RNA-dependent RNA polymerase :RdRP fig3下)RdRPをコードする遺伝子は昆虫や脊椎動物を除く真核生物で見つかっている。

1        セカンドsiRNAはファーストsiRNAのアンチセンスと一致する。熱力学的に選択されるなら両方が混在するはずなので、これまでの推論と一致しない。

2        RdRPが生成できない5'末端がジ、トリリン酸でありDicer(モノリン酸)によって生成されるものと対照的

つまりsiRNAは必ずしもdsRNAから生成されるわけではない、siRNAはRISC assembly pathwayを迂回する可能性を示している。

 

siRNA Can Induce Heterochromatin Formation

siRNAはヘテロクロマチンを誘導する(Fig3左下)

RISCはクロモドメインを有するSwi6を誘導し、ヒストンメチル化酵素(HMTs)のH3K9のメチル化にも寄与している。(hig3左上)

これによりsiRNAの効果を強め遺伝子抑制につながっている。

 

MicroRNA Biogenesis

多くのmiRNAは2つ以上の転写産物ユニットから生成される。

転写物はmiRNAクラスターをエンコードしているか、miRNAとタンパクの両方を含んでいる。後者の場合はmiRNAはイントロン部位に位置している。

プロセッシングはmiRNA内でのステムループ構造に依存している(fig4)

miRNAとsiRNAの違いは末端の正確さである。MicroRNAは多少の違いがあるが、多くの遺伝子の末端のように明確なENDをもつ。一方siRNAの末端は統一されていはいない。

多くのmiRNAの発現は遺伝子に制御されている

 

Yan-| miR-7-| Yan(翻訳)ハエ

let-7-| Lin28-| let-7   C.elegans

 

MicroRNA Associatein

miRNAの鎖の選択性は熱力学的なもので、5'末端の安定性が弱いものが選ばれるが、必ずしも完全ではない。実際両方の鎖がAgoタンパクと複合体を形成し検出されている。一般的に、相互作用する鎖をmiRNA、残りの鎖をmiRNA*と呼んでいる。Fig4

 

Posttranscriptional Repression by miRNAs

例外を除いて、動物種のmiRNAの結合サイトはmRNAの3'UTRに複数存在する。ほとんどの領域で、ミスマッチやバルジ構造をとる。一方植物は完全一致配列で遺伝子のCDS領域に結合する。

シロイヌナズナでミスマッチのmiRNAが見つかっていることから、完全一致のmiRNAは後から獲得された機能で、翻訳阻害がデフォルトであると考えられている。

 

どのように翻訳阻害が起きているのか?3つのモデルが提唱されている

1        miRISCとeLF4EがmRNA5'キャップ構造への結合を阻害するモデル(fig5 左上)

2        miRISCがmRNA tail1の脱アデニル化を促進させるモデル(fig5 下)

3        miRISCが60sリボソームユニットの結合を阻害するモデル(fig5 左下)

 

Bind Men and the Elephant?

細胞の状態によりmiRNAの役割が異なる。

let-7:増殖中細胞の翻訳は阻害するが、G1アレストでは翻訳活性化因子となる。

細胞のステージに依存し、増殖中かアレストなのかには依存しない。

またリンパ球でのTNFαはマクロファージの熟成に必須であるが、グロースアレストの状態になるとmiR-369-3pはTNFα抑制から活性へと変化する。

またmiRNAが3'UTRか5'UTRに結合するかで、抑制なのか活性なのかが変化する。

(野中)