2009年3月17日

スプライセオソームのダイナミクスについて

The Spliceosome: Design Principles of a Dynamic RNP Machine

スプライセオソームのダイナミクスについて

Cell 136, 701-7018

 

pre-mRNA スプライシングとsnRNPのremodeling (Fig.2)

Exon GURAGU          YNYURAY      Y10-12 YAG Exon

スプライシングはスプライセオソームとよばれる複合体で行われる。スプライセオソームはU1, U2, U4, U5, U6 snRNPと50-100個のnon-snRNPタンパクで構成される。SnRNPはsnRNAとそれに結合するタンパク質複合体である。スプライシングにおける主用なシスエレメントは、5' splice siteと3' splice siteおよびbranch pointであり、7-14ntの短いコンセンサス配列を持つが、高度に保存されている酵母とは対照的に高等動物ではこれらの配列は厳格なものではない。この他には高等動物では、exonic enhancer、intronic enhancerの調節エレメントが知られている。これらの調節エレメントが認識されると、配列特異的なRNA結合タンパクがスプライセオソームに構成する。

E complex : U1 snRNAと5'ssで塩基対を形成して U1 snRNPが5'ssを認識する。

A complex : U2 snRNPがイントロンのbranch pointに結合する。ATP依存的。

B complex : tri-snRNP ( U5, U4/U6)がリクルートされてくる。U4とU6 snRNAは相補的な配列なので結合している

B* complex : 活性化型スプライセオソーム。U6 snRNAのfoldingが変わって、U4/U6は解かれU6はU2 snRNAと結合する。一方U1 snRNPは5'ssから離れて、そこにU6 snRNAが入る。U4 snRNPはスプライセオソームから放出される。B → B* complexへの変換には大幅なrearrengement, comformational changeが必要。

C complex : 1st catalytic reactionで5'ssが切断されBranch pointに結合し、ラリアット構造ができる(C complex)。U5 snRNPは5'側のexonと3'側のexonに結合して両exonを連結しており、つづいて2nd catalytic reactionで3'ssが切断され両exonが結合し、mRNPとして放出される。一方intronは放出され分解される。U snRNPsは解離して次のスプライシング反応に再利用される。

 

E complexとA complexの構成分子(Fig.3)

E complexでは、U1 snRNAと5'ssとの結合はSRタンパクやsnRNPにより安定化されている。またBranch PointにはSF1/BBPが、polypyrimidine tractにはU2AF(U2 auxiliary factor)が結合している。これらの結合因子はイントロン5'ssおよび3'ss部位の認識に重要である。

A complexでは、SF1/BBPがU2 snRNPに置き換わり、U2-associated proteinであるp14がBrach pointとU2AF65にコンタクトしてU2 snRNPのSF3b155が結合できるようにする。U2 snRNAとBranch pointの結合はU2 snRNPとU2AF65のRS domainによって安定化する。

 

Spliceosomal RNA(タンパク)ネットワーク(Fig.4、Fig.6)

U1snRNAが5'ssに、U2snRNAがBranch pointに塩基対を形成すると(complex A)、U4/U6.U5のtri-snRNPがリクルートされてくる(complex B)。U5 snRNAは5'exon 、3'exon両方に結合し、U6は3'端で、U2の5'端と結合する。U6はその相補的な配列でU4と結合している。Complex B*へと活性化される過程でダイナミックな変化が起こる。U1は5'ssから解離し、U4/U6の塩基対の結合は解消される。U6のACAGAG配列が5'ssに結合し、またもう一方ではU2/U6の塩基対が形成される。RNAだけでなく、タンパクも同時にスプライセオソームのアッセンブリの過程でダイナミックなリモデリングが行われる。特にU4/U6.U5のtri-snRNPではComplex BからComplex B*へスプライセオソームが活性化される過程で、U4/U6-associated proteinsが全て解離し、freeになったU6 snRNAはpre-mRNA(5'ss)、U2 snRNAと新たにPrp19/CDC5複合体と結合することにより固定される。

 

スプライセオソームの構成タンパク質 (Fig.5)

affimity-purifyにより精製されたComplex A, B, Cを用いたMS解析により、それぞれの複合体の構成タンパク質が同定されてきている。その結果、各ステップでタンパクの劇的な入れ替えが見られた。A,B,CすべてのcomplexでU2-関連タンパクと、SRタンパク、hnRNPが見られる。A→Bではtri-snRNPとPrp19/CDC5が加わり、B→CではPPIaseとEJCが増えるが、U4/U6タンパクはなくなる。A→Cを比べるとAで見られたタンパクの多くがCではなくなっていることから複合体タンパクの大規模な入れ替えが裏付けられる。

 

スプライセオソームのリモデリングに関わる酵素(Fig.2B, Fig.4B&C)

DExE/H-type RNA-dependent ATPases/helicasesは酵母からヒトまで高度に保存された遺伝子であり、それぞれのスプライセオソーム会合の過程で特異的に働く('Prp'は'pre-mRNA processing'で酵母の温度感受性スプライシング変異株)。Sub2, UAP56, Prp5はE complex形成過程でのBranch pointでのSF1とU2 snRNPの入れ替えに関与する。Prp28, Brr2, Prp8はB* complexへスプライセオソームが活性化する過程に重要で、Prp28は5'ssにU1→U6への移行に関与し、それに引き続いてU4/U6の2本鎖がBrr2によりほどかれる。Prp28, Brr2はPrp8により調節されている。Prp8はC末端にRNase H-like domainとJab1/MPN domainを持つタンパクであるが、Prp28はPrp8のRNase H-like domainを介してhelicase活性を持つ。またBrr2はPrp8のRNase H-like domainとJab1/MPN domainに結合し活性化する。さらにPrp8はユビキチン化による調節を受けており、ユビキチン化されるとBrr2の活性化を抑制する。Brr2はSnu114 GTPaseにより調節を受け、GTP結合型のBrr2がhelicase活性を持つ。

 

まとめ

・pre-mRNAのスプライシングには数ステップのスプライセオソームの会合からなるRNA, タンパクのダイナミックなremodelingが起こる

・スプライセオソームのダイナミクスにはRNA・タンパクのcomformational, compositional change合が重要な役割を担っている。

・RNA-RNA interactionは弱い結合であり、安定して結合できるようにsnRNPsのタンパクにより結合が補強されている。

・会合の各ステップで、複数のタンパクに認識される仕組みにより、スプライシング部位認識の正確性とスプライセオソームとの強い結合が得られる。

(堀内)