2009年2月 9日
Aire's Partners in the Molecular Control of Immunological Tolerance
Aire's Partners in the Molecular Control of Immunological Tolerance
Abramson et al., Cell 140, 123-135, 2010
要約:
Aireは胸腺ストロマ細胞に多数の末梢組織自己抗原(peripheral-tissue self antigens, PTAs)の発現を誘導し、それらの自己抗原を認識するT細胞のクローン除去を促進している。
Aireがターゲット遺伝子(PTA)の発現を誘導する機構はほとんど分かっていない。
Aireをターゲットとした共免疫沈降・MS解析と、RNAiを用いたノックダウンによるバリデーションを用いて、Aireと会合する多数の蛋白を同定した。
それらの蛋白は機能から4つのグループ(核への輸送、クロマチン結合・構造蛋白、転写、pre-mRNAプロセシング)に大別された。
Aireと相互作用する蛋白の中で、DNA dependent protein kinase(DNA-PK)とそれと会合する一群の蛋白は、DNA double strand brakeを修復し、また転写の伸長を促進する。
もうひとつのAire複合体はpre-mRNAスプライシングと成熟に関与している。Aireの存在下でPTAの転写産物が効率良くプロセシングされることがこれにより説明される。
今回の結果は、弱く転写されているクロマチン領域にAireが広範に作用して活性化するモデルを示唆するものである。
Fig.1 Aireと会合する候補蛋白の同定
HEK293または胸腺上皮細胞由来細胞株にFLAG tagged Aireを強制発現。
FLAG抗体によるip → MS解析でAireと会合する候補蛋白を同定。 45個の候補蛋白が同定された。
Aire会合蛋白の候補は4つのグループに大別される。
Fig.2 Reciprocal co-immunoprecipitationによる候補蛋白とAireの相互作用の確認
Fig,3 A~C
Aire会合蛋白候補遺伝子を shRNAでノックダウンして、Aireで発現が制御される既知の遺伝子(KRT14)の 発現への効果を検討。
Fig.3D nuclear transport に関与する遺伝子(下段の4つ)をノックダウンすると、Aire (GFP-tagged、強制発現)が核に局在しなくなる。
Fig.4
Aire結合蛋白の一つであるDNA-PK(DNA dependent protein kinase)は PTA遺伝子群(Aire-dependent) の発現を制御している。
A: DNA-PKに変異のある scidマウスの胸腺上皮細胞 (MEC)では、PTA遺伝子群の発現が下がっている。
B: DNA-PK変異の有無で動く遺伝子群とAire-KOの有無で動く遺伝子群は overlapする。
C: DNA-PKはTop2a,PAPR1, H2AX, Ku80と共にAireと複合体を形成している。
E: DNA-PKをノックダウンすると、 AireとPARP-1が共沈しなくなる。
Fig.5 AireはTop2aによるDNAのDSB (double strand break)を促進する。
A: Aireとetoposide (Top2によるDSBを促進する薬剤)はどちらも、Aire-dependent genesの発現を上げる。
B: Aireで発現が上がる遺伝子とetoposideで発現が上がる遺伝子は相関している。
C: in vitroでのTop2aによるDNAの脱重合が、Aireの共存により促進される。
D: Aire陽性のマウス胸腺髄質上皮細胞(MEC)ではgH2AX (DSBのマーカー)が増加している。
Fig.6 Aireはpre-mRNAの processingを制御している
A: AireはsnRNP116/EFTUD2とnuclear specklesに共局在する。
C, D: Aire発現細胞では、Aire-dependent genesのmRNAはmature (spliced) formで存在する。
E, F: 他の転写制御因子(NF-kB, FoxP3)で制御される遺伝子の場合は、splicedとunsplicedの両方が検出される。(splicingの促進はAireに特異的)
Fig.7 Aireによる遺伝子発現制御のモデル
AireはK4-unmethylated H3に結合 → Top2aと相互作用してDNAのdouble strand breakを促進。 DNA-PKを活性化。
Chromatin remodeling complexを リクルート
Aireと会合した蛋白(DNA-PK, Top2aなど)は、PNA-pol IIの前方のH2A-H2Bを除去して,転写の伸長を促進。
Aireはpre-mRNA splicing factorsと 複合体を形成して、RNA processingを促進。