2008年9月 3日

MLL (2)

MLL protects CpG clusters from methylation within the Hoxa9 gene, maintaining transcript expression

Erfurth FE , Popovic R , Grembecka J , Cierpicki T , Theisler C , Xia ZB , Stuart T , Diaz MO , Bushweller JH , Zeleznik-Le NJ , Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2008 May 27;105(21):7517-22.

 

 

Homeobox遺伝子(HOX遺伝子)は、胚発生や造血形成の過程で細胞運命を決める決定的な役割を担っている。MLL関連白血病では、HOXA9を含む一連のHOX遺伝子の高発現がみられる。MLLはこれらの標的遺伝子の発現誘導というよりはむしろその維持に関わっているとされているが、その機序についてはわかっていない。

この論文では、MllがHoxa9領域の特定のCpG配列に結合して転写制御を行っていることを示している。Mll存在下ではこれらのCpG領域がメチル化から保護されているが、Mllをknock downすることによってこれが解除される。Mll knock out細胞でもCpGのメチル化が認められるが、この細胞にMllを導入することで、メチル化の消失が認められる。すなわち、MllがDNAメチル化から保護する役割を示している。興味深いことに、MLL-AF4融合タンパクもこれらのCpG領域の一部の領域に対して同様の作用を認める。このような転写制御様式はMllが転写の維持に働いているだけでなく、他のCpG DNA結合タンパクに対しても作用している可能性を示唆している。DNAメチル化からの保護は、DNAメチル化転移酵素を制御しながらエピジェネティック情報を伝達していく重要なメカニズムかもしれない。

 

(Fig.1A.)(Fig.S1.) (Fig.S2.) (Fig.S3.)      

·           従来より知られている canonical HOXA9(CD exon)の上流からの転写産物(AB exon)が存在し、このプロモーター領域はCpGアイランドを有する。いずれのプロモーター領域にもMllが結合した。

·           AB exonのプロモーター領域(CpG1)のメチル化状態をみると、Mll-/-MEFに比して、Mll+/+MEFでは優位にメチル化が減少していた。CD exonのプロモーター領域(CpG3)やhomeodomainを含むCDⅡ(CpG6)では、違いはなかった。

·           CpG3は、Mll+/+MEF、Mll-/-MEFともにメチル化の程度は低い。

·           CpG1に関してはMllに依存したメチル化の違いがみられるが、CpG3にはそのような差はなく非メチル化状態にある。

         

(Fig.2.)(Fig.S4.) (Fig.S5.)         

·           Mll-/-MEFでは、ABからのHoxa9、CDからのcanonical Hoxa9ともに発現が低下している。

·           Mll shRNAでknock downにより、Hoxa9(AB)およびcanonical Hoxa9(CD)の発現が低下する

·           AB exonにはMllが結合していることが、ChIP実験により確認され、その結合領域にはCpG領域が複数存在する。

 

(Fig.3.)(Table 1.) (Fig.S4.) (Fig.S5.) (Fig.S6.)

·           TC(等温滴定カロリメトリー)で、CpGを含むオリゴとMLLタンパクのCXXCドメインの相互作用を測定した。

·           CpG1の配列のオリゴ(CpG1Ⅰ、CpG1Ⅱ)とは、1:1の結合で同程度の結合強度であった。

·           CpG1Ⅲの配列に対しては、2:1の結合で、結合強度はやや弱かった。(この領域は、Mllの強制発現でメチル化から保護されるが、Mll-AF4では保護されない。)

 

(Fig.4.)

·           MLL-A4融合タンパクによるメチル化からの保護効果は、MLLタンパクの強制発現で保護されるCpG領域の一部の領域にみられる。

 

(Discussion)

·           MllのCXXC domainがHoxa9 AB exonのプロモーター領域のCpG配列に結合することで、de novoメチル化に対してprotectiveに働き、Hoxa9遺伝子発現を維持しているモデルを示している。

·           作用機序は?

-            de novo DNA methyltransferaseのアクセスから保護する?

-            HATやHDACと相互作用することで、その領域のaccessibilityを制御する?

-            MLLが直接標的となるCpG領域のメチル化を戻している?

·           HOXA9のalternative transcriptについて

-            MLL関連白血病に、HOXA9(CD)がどの程度関わっているか、HOXA(AB)はどうなのか?については、依然不明である。

-            mir-196bもHOXA9 AB exonに存在しており、間接的な制御があるかもしれない。

·           HOXA9のプロモーター領域について

-            Hoxa9(CD)のプロモーターはATG配列をもつ古典的なタイプのプロモーター配列だが、Hoxa9(AB)のプロモーターはATG配列をもたないタイプのプロモーター配列である。

-            ヒトのHOXA9との相同性は Hoxa9(AB)の方が低い。MllのCXXC domainはこの上流側のHoxa9(AB)の直接結合していると考えられる。

·           MLLとCpG配列の相互作用について

-            MLLには高度に保存されたMT domain(aa1147-1244)もあり、ここにもCXXC domainが存在する。

-            このMT domainはSPR法でCG配列と結合することが報告されており、今回作成したGST-MTは2ヶ所でCG配列と結合する可能性がある。