2008年9月18日

要旨3

【紹介論文】
The HRX Proto-oncogene Product Is Widely Expressed in Human Tissues and Localized to Nuclear Structures 
Blood, Vol 89, No 9, 1997: pp 3361 - 3370


【内容】
HRX-ENL融合蛋白質に対する抗体を作製し、ヒト組織、細胞株を用い分子の局在を観察した.
結果、多くの細胞で核内に点在することが確認された.
また、この結果は11q23のトランスロケーションには依存しなかった.


【解説】
I. ターゲット分子
  Fig 1. HRX + EML の融合蛋白質 (約220KDa)


II. 抗原
  A. 合成ペプチド for HRX(モノクロ)
     1.840 - 854 aa
     2.2370 - 2384 aa 
     3.2830 - 2845 aa
  B. GST fusion protein 大腸菌発現物(ポリクロ) 
     GST-HRX
         1.160 - 356 aa (197aa)
         2.428 - 498 aa (71aa)
     GST-ENL
         1856 - 1908 aa (53aa)


III. モノクロのスクリーニング
    合成ペプチド抗原固相ELISA


IV. ポリクロの精製
    GST fusion 抗原アフィニティー精製


V. 抗体機能解析
   Fig 2.
   Mammalian 細胞(Bosc 293 cell)による HRX+ENL 融合蛋白質発現 WBによる抗体の特異性を確認
   Fig 2A. Lane1, 5の比較から190KDのバンドはN端が切れている
   Fig 2B. 抗体により認識できる分子が違う、aHRX2 は190kDのバンドを認識できない
   Fig 2C. HRXキメラタンパクの発現確認: 11q23 translocation のある HB11;19, RS4;11細胞では220 kD, 240 kDの位置にバンドを確認。しかし11q23 translocation のないMolt-4細胞ではバンドを確認できなかった。


   Fig 3.
   ヒト組織を用いた免疫染色
   Fig 3a, b : Thyroid、Fig 3c, d: CNS、Fig 3e, f, g: cardiac myocyte
   Fig 3h, i : glomerulus of kidney、Fig 3j, k, l : liver
   Fig 3m, n : macrophage in the lung、Fig 3o, p, q : tonsil cell
   正常細胞におけるWild-type HRXの発現は幅広く発現していたが、細胞種により発現のレベルは異なった.(Table 2.)


   Fig 4.
   HRXは転写因子TAL-1, PMLと違う場所に存在している


   Fig 5.
   U937細胞とRS4; 11細胞を用いMoAb HRX107 とPoly-aHRX2とで染色像を比較
   両抗体ともHRXは点状核内分布を示した.
   細胞種によりドットの大きさなどに差は見られたが、11q23 translocation の有無には無関係であった.(Table 1.)

   Fig 6.
   Flagタグ付き強制発現系においてMoAb HRX 107とflag抗体との染色像は重なる


まとめ
今回はMLLファミリーの抗体を作製する際、過去の抗体作製方法を調査が目的であり、抗体作製方法の観点から情報をまとめる
と以下のようになる。
• MLLファミリーの抗体を作製する場合、抗原はペプチド免疫、 大腸菌 部分長発現精製物が有効
• 特異性確認は動物細胞による全長強制発現物の使用、セルラインの使用が有効

(杉山)