2008年9月18日

要旨2

Genes&Development
Control of differentiation in a self-renewing mammalian tissue by the histone demethylase JMJD3.

 

要旨
カルシウムによって誘導される分化においてH3K27me3がこれらのプロモーターからはずれ、それに一致してPcG蛋白も離れるが、JMJD3の結合が増加する。反対にJMJD3が欠失すると分化がブロックされる。このことからJMJD3が遺伝子発現の抑制を解除する働きにより哺乳類の表皮組織の分化が誘導される可能性が示された。

 

Fig1
表皮は外側にいくほどより分化が進行しており、それに伴ってカルシウム濃度が高くなる。培養表皮細胞においてもカルシウム刺激により分化が誘導される。カルシウム+/-の培地で72時間培養した角質細胞を抗H3K27me3抗体でChIPを行い、tiling microarrayを行った。その結果、H3K27me3 は2335個のプロモーターに認められた。Gene Ontologyでは転写調節および発達、分化に関与する遺伝子に多く認められた。分化の過程で発現が4倍以上上昇する559個の遺伝子のうち、94個にH3K27me3が認められ、そのうちの半数以上を占める52の遺伝子で分化の過程においてH3K27me3が2倍以上失われていた。

 

Fig2
A:分化において誘導される遺伝子(KRT1,S100A8,IVL)のプロモーター領域にH3K27me3の結合は有意に減少している。その動き方はSUZ12(PcG蛋白の一つ)と同じ。それとは逆にJMJD3はカルシウム+で増加している。(IVLを除く)
B:カルシウム+(分化誘導)で遺伝子のmRNAレベルは上昇
C:WBで蛋白の発現量はカルシウムの有無で差はない。また、H3K27me3自体がなくなってしまうわけでもない。
PcG蛋白複合体とJMJD3が逆の動きをすることはnon-HOX遺伝子を直接制御している可能性がある。


Fig3
JMJD3のSiRNAで欠失させたところ、免疫組織染色でもKeratin1,10が消失し、mRNAレベルでもKRT1,S100A8の発現が低下した。ただし、IVLでは変化がみられなかった。

 

Fig.4
JMJD3をOverexpressすると、発現量は増加するが、遺伝子変異体(H1390A)を作ると発現量は低下する。経時的変化をみてもJMJD3をoverexpressした場合はControlよりも早く分化が誘導される。

 

(三村)