2008年6月27日

SETDB1はKAP1を介してH3K9をメチル化し、その結果HP1がリクルートされて遺伝子が不活性化される

抄読会まとめ SETDB1について  児玉

SetDB1の性格 Genes and Development 2002, 16; 919-932
SETDB1: a novel KAP1 (TRIM28) associated H3K9 specific methyltransferase that contributes to HP-1 mediated siliencing of euchromatic genes by KRAB zinc fingers

Figure 1. KAP1とSETDB1の相互作用
A. コーサプレッサーKAP1の構造 RINGフィンガー、コイルドコイル、HP1結合、PHD、ブロモドメインの順番で、ブロモドメインのところへ SETDB1が結合する。KRABと結合するのとオリゴマー化は下線でしめしたRBCC部位で、ここに対して抗体を作って解析している。
B. 酵母2ハイブリッドアッセイでPHDとブロモドメインにMi-2aとSETDB1が結合する。
C. Mi2aまたはSETDB1とKAP1の結合がおちると、KAP1による抑制も低下する。
D. SETDB1をflagタグ付きで過剰発現し免沈するとKAP1がついてくる。
E. KAP1のRBCC部分でウェスタン

Figure 2.
A. SETDB1の構造模式図 MBDはCpG DNA methyl-binding domain その後にpre SETとSET、途中に挿入部位。KITはKAP1結合部位。
B. SERDB1は、酵素部分ではヒストンメチル化できない。大腸菌発現したGST融合タンパクの模式図 PRMT1, SUV39H1, G9a, SETDB1の酵素部分をもつクローン1(585?1291)、2(661?1291)のクマジーと、インビトロのH3,H4への3Hmethylの取り 込みアッセイでSETDB1にはメチル化活性がみられない。ヒストンタンパクのクマジー
C. 全長はヒストンメチル化する。FLAGつきSETDB1の過剰発現後の免沈からFLAGペプチドで溶出した全長のSERDB1は、H3を強烈にメチル化する。
D. Sf9細胞に発現したSETDB1の精製プロトコール 
E. 動物細胞発現SETDB1は活性をもつ。翻訳後修飾かコファクターが必要なのか?

図3。SETDB1の変異体
A. 変異部位
B. SETドメインをこわすとメチレース活性が消失する。KAP1との相互作用がないと活性はます。モノヌクレオソームヒストンでも同じ。
C. ヒストンのテイル配列のGST融合体 9リジンはN9とK4RとK27R
D. 9番目のリジンがあるものだけがメチル化される。

図4 HDAC2を含むNuRD複合体で染色体を処理するとSETDB1でのメチル化の効率があがる。ペプチドを表記のように処理してからメチレース活性をみると、K9-Me2, K9-Ac, S10-Pなどが活性をおとす。

図5 SETDB1によるH3K9メチル化がHP1の結合を促す。

図6 SETDB1が主要なH3特異的な内因性のメチレースである。
A. 核抽出液をフォスフォセルロースで分けていくと、SETDB1の多い画分にメチル化活性がある。
B. SETDB1抗体で免沈した上清では、メチル化活性がなくなる。
C.  SETDB1は主にユークロマチンにあって、核小体やHP1のあるヘテロクロマチンとオーバーラップしない。

図7 KRAB1-KAP1による抑制システムは、SETDB1とH3K9メチル化とそれに続く、HP1結合を呼び込む。
A. レポーターとレプレッサーのモデル図。レポーターはPAX3のDNA結合配列の下にルシフェレースを発現させる。一方、サプレッサーは、KRABにPAX3のDNA結合ドメインをつけてある。
B. 株の性質
C. Chip解析。両方を発現していながら、ルシフェレースが抑制されている細胞では、KAP1とSETDB1がTKプロモーター近くに動員されている。
D. Chip解析。 クローン74ではかなりのTKプロモーターがKAP1,SETDB1で占められている。
It takes a PHD to SUMO  TIBS Vol33 No5 P191 概要 PHDフィンガーとブロモドメインはクロマチン関連タンパクで近接して存在している。PHDフィンガーをもつKAP1コレプレッサーはとなりのブロ モドメインのE3SUMOリガーゼであることが示された。PHDによるSUMO化はブロモドメインのSETDB1とNuRD 複合体との結合を安定化し、遺伝子発現をサイレンスする。

用語 
PHDフィンガー C4HC3ジンクフィンガー2個からなり、C3HC4のRINGフィンガーコンセンサスとよく似ている。PHDのあるグループ は(1)メチル化リジン、(2)修飾されていないヒストン3、(3)フォスファチジルイノシトールリン酸、の認識にかかわり、E3Ligaseとして働く 可能性もある。
ブロモドメイン ほとんどのヒストンアセチル転移酵素にあるドメインで、アセチル化リジンに結合しタンパク=タンパク相互作用を担う。

SUMOの総説 NCB 2007 vol8 p947
small ubiquitin-related modifier 10kDaで最初の10-25aaが特徴的。ヒトにはSUMO1から4までの4つの遺伝子がある。1-3 はユビキタスで4は腎臓、脾臓、リンパ節である。 Gly-Glyの後ろに2-11aaの余分な配列をもちプロテアーゼで切断される。酵母に続いてヒトのRAD51, RAD52, FAS, PML, RanGAP1などで発見された。現在、修飾される標的の配列予測は ΨKxE(Ψプサイ:脂肪族の分岐アミノ酸 、バリン、ロイシン、イソロイシン)。KはリジンでEはグルタミン酸。それ以外セリンがリン酸化されるとSUMO化されるΨkxExxSPがある。 一方、相互作用する標的はSUMO-interaction/binding motif (SIM/BIM)と定義されている。 NCB(図1)***GGXXXX → SUMOプロテアーゼ→ ***GG → E1 活性化酵素に結合 → E2結合酵素で仲介タンパク質に転移される →E3酵素により標的に転移される。 SUMO E3の最大のグループはSP-RINGファミリーである。 その中にはPIASファミリーとMMS21/NSE2はDNA複製にかかわる。 RanBP2もE3だが異なるタイプでHDAC4, Sp100, PMLのSUMO 化が促進される。 ポリコームのPc2はコレプレッサーのCtBP1, CtBP2をSUMO化する。 HDAC4はそれ自体SUMO化されるが、MEF2をSUMO化促進する。LXRβと腫瘍抑制因子HICもMEF2のSUMO化を促す。 多重的なSUMO化(ポリSUMO化)はSUMO2/3でみられるがよくわかっていない。 特異的なプロテアーゼによりSUMOは取り除かれるので可逆的な反応である。 NCB(図2)SUMO化により結合するタンパク質が変換されることが重要である。 NCB(図3)低いレベルの転写因子のSUMO化は定量的な抑制につながる。 NCB(図4)酵素によっては活性化サイクルごとにSUMO化を必要とする。 NCB(図5)SUMO化は細胞内のいたるところでみられる。
TIBS図1 (a) KRABという転写因子がアセチル化されて活性化されているクロモソームに存在するとKAP1が結合する → KAP1 PHDがユビキチンリガーゼ (E3)として働き、E2酵素のUbc9を結合して、SUMOがとなりのブロモドメインに転移される。 (b) NuRDがリクルートされて、リジンが脱アセチル化される。
(c) SETDB1がリクルートされるとH3K9がメチル化される。
(d) HP1がリクルートされて遺伝子が不活性化される。

Mol Cell PHD domain-mdiated E3 ligase activity directs intramolecular SUMOylation of an adjacent bromodomain required for gene silencing Ivanov et al. Mol Cell 28 p823-837
図1 KAP1のSUMO化はPHD依存的である
KAP1/TIF1β/TRIM28(tripartitemotif containg protein28)は最大のファミリーの転写サイレンス因子で、KRAB結合ドメインをもつジンクフィンガータンパク質である。N端から RING=B1=B2=coiled coilでKRABに結合し、次にHP1結合部位、NHD、プラントホメオドメイン、ブロモドメインからなる。 A. KAP1の中のSUMO化コンセンサス配列 Ψkx(E/D) EもDも陰性荷電
B. KAP1のモデル図。黒い筋のHP1BDはHP1結合ドメイン。
C. KAP1抗体で免疫沈降したものをantiSUMO-1抗体(invitrogen mouse anti-SUM01/GMP1 monoclonal antibody)でウェスタン
D. HEK293をコントロールまたはHA-SUMO1プラスミッドでコ・トランスフェクトしてKAP1抗体でウェスタンブロットして矢印がSUMO-KAP1だという(本当か?)
E. P32SUMOを用いたin vitro SUMOylation. GST-KAP1をリコンビナントE1,Ubc9,32PSUMO1存在でインキュベーションしてクマジー染色とオートラで示した。
F. HEK293をFLAG-KAP1とT7-SUMOプラスミドでトランスフェクトした。FLAG抗体でウェスタンした。KAP1C651AというPHD破壊するとSUMOつかなくなる。
G. GST融合KAP1 RBCCHにはSUMO化活性ない
H. GST融合KAP1 NPBにはSUMO化活性がある。

図2 SUMO化サイトと抑制ドメインの一致 convergence
A. GST融合ドメインのSUMO化の観察 PHDがKからRになるとだめ。ブロモドメインのKKKがKRKかKRRになるとダメ。
B. そのときのRexA=TK-luciferase融合プラスミッドの活性化のKAP1変異体での抑制。PHDがKからRになるとだめ。ブロモドメインのKKKがKRKかKRRになるとダメ。
C. PBの変異体の組み合わせ。SUMO化サイトがなくなると抑制がなくなる。
D. T7-PGとLexレポーターを共発現。SUMO化がないと抑制できない。
E. SUMO化を阻害するタンパクのGAM1を発現すると、抑制がなくなる。
F. G.H.はNPBドメインの発現でのSUMO化と抑制の一致。

図3。PHDドメインのUbc9への結合と隣接ブロモドメインのSUMO化
A. C651をSUMO 化できなくしても、K779がSUMO化されている。
B. K779Rの変異で抑制効果はなくなる。
C. GST-PHD(下のほうのバンド)はUbc9に特異的に結合してsae1やsae2にはつかない。
D. GST-PHD(下のほうのバンド)のUbc9に特異的に結合はPHDの変異体できえる(ちょぼい)
E. ほかの類似のTIF1α、γ, sp100cのSUMO化は弱い。
F. KAP1のブロモドメインを含むPBを特異的にSUMO化する。
G. PHBでもBPHでもSUMO化される。

図4 KAP1 PHDへのUBC9結合サイトのマップ
A. KAP1-PHDのUbc9存在での変化らら結合サイトの同定
B. モデル図
C. 黄色が変異するとKAP1-Ubc9相互作用を阻害したアミノ酸
D. L653とL2の重要性

図5 KAP1のSUMO化のKRABドメインによる抑制への作用
A. PBとKRABにより特異的の抑制され、それがGAM1野生型で阻害される。
B. Myc-GAM1によるSUMO化抑制
C. GAL4-KRABの抑制のshKAP1での消失
D. KAP1の変異体での抑制の消失

図6 SetDB1とCHD3のKAP1相互作用はSIM(SUMO interaction motif)依存性
A. 酵母での増殖セレクション NPBの676番目のリジンがsetdb1とchd3(NuRD複合体の一つのタンパク)結合に大事です。
B. K676とK779が大事。酵母のSUMOタンパク質smt3pはKAP1につく。
C. SETDB1側では、113-380が大事で、そのN端側の113から136がないとだめ。
D. SUMO1だけでなくSUMO2も結合する。
E. SETDB1とCHD3の比較からSUMO interacting motifのコンセンサスを求めた。
F. Setdb1をS35標識したビーズで、図に示した大腸菌で作ったSUMO化GST融合タンパクと結合をみると、SUMO1への結合はSUMO1の変異体でなくなる。
G. 逆にSETDB1とCHD3のSIM変異体で、KAP1のSUMO化が消失する。

7 KAP1のSUMO化は、SETDB1のターゲットプロモーターへの誘導と、酵素活性化をもたらす。
A. まずshKAP1でKAP1をつぶしたU2OS0-K4細胞に変異FLAG-KAP1を恒常的に発現する細胞で生理的発現量に近いものをセレクトした。 KAP1, p53,HP1が発現している。C2はKRADドメイン変異体で結合できないもの、M2はHP1結合できなもので核内移行異常、K6RはSUMO化できな いもの、dBはdeletion of BromodomainでSUMO化が低下。
B. SUMO1,SUMO2結合はWTで顕著
C. TKプロモーターへのKAP1によるSETDB1とCHD3の誘導。GAL4-KRABを発現するとSETDB1が集まりH3K9が増える。
D. PBドメインおよびSUMO1-PBの増加でのH3K9メチル化の増加
E. モデル