2008年6月19日

Position effect variegation ant the genetic dissection of chromatin regulation in Drosophila

Seminars in Cell and Developmental Biology 14, 2003, 67-75
Scotta, Ebert, Dorn and Gunter Reuter ハーレ マルチン・ルター大学

 真核細胞では多くの遺伝子がサイレンスされているがこれは完全にサイレンスされているconstitutiveなものと、一時的または条件によりサイレ ンスされるfacultative(条件的)なものに分けられる。条件的なものの代表はメスのほ乳動物におけるX染色体の不活性化である。雄はXYでメス がXXの場合、メスの2つのXのうち父親由来の染色体領域をヘテロクロマチンにして不活性化し遺伝子の量が2倍にならないようにする。

図1 クロマチンの変化にすごく敏感なショウジョウバエのWm4変異体
ショウジョウバエのX染色体に目の色の赤い色素を作るwhite遺伝子変異があると目が白くなる。White変異という。Wm4変異はwhite 遺伝子が染色体の点座でセントロメア周辺のXヘテロクロマチンとユークロマチンの境界に位置している。両側がヘテロクロマチンの構造をもつなかにユークロ マチン配列がほうりこまれた形のため、まわりのヘテロクロマチンの位置効果position effectによりwhite遺伝子はほとんど(95%)の細胞で抑制され、白い斑入り(variegated)になる。これを塩に5%くらいコショウの はいっている調味料にたとえてsalt and pepper appearanceともいう。斑入りになるのは発生途上の網膜細胞の分化で特定のクラスターでヘテロクロマチン化がうまくいかない場合が記憶されてしま うからである。

図2  Suppressor of Variegation Su(Var) スーバー Enhancer of Variegation E(Var) イーバー
エンハンサーは目の色が真っ白くなる。サプレッサーは目の色が赤くある。これは、whiteを含む領域が完全にヘテロクロマチンになるか、ユークロマチンに戻るかによる。
(a) ヘテロで完全に目が白くなるE(Var)3-1
(b) E(Var)3-1のバックグランドのハエにドミナントで強いSu(Var)2-1が加わるとと多少赤くなる。
(c) Su(Var)3-1のヘテロは目が真っ赤になる。
(d) Su(Var)2-1は強いサプレッサー
(e) Su(Var)2-1のハエにγ線をあてて変異を導入すると新たなE(Var)変異が見つかる。
(f) この変異体をもとのWm4に加えると完全に白くなるのでE(Var)がヘテロで強く働く変異であることがわかる。

表1 スクリーニングの数
EMS 化学物質で1塩基変異を作り出す。変異体はとりやすいく種類がたくさんできるが、リバータント(復帰変異)ができやすく安定しない場合もある。 γ線 大きなデリーションが多い。復帰変異がおこりにくいが機能が大きく損なわれるので数はとりにくい。 下の方はpエレメントなどの挿入変異でE(Var)が多くとれている。

図3 ジャンプスターター種からのmatingでのモディファイヤー探索  X染色体にPエレメントを挿入したハエを使った新たなスクリーニングでサプレッサーを1コピーもつハエを作りエンハンサー(サプレッサーへのモディファイヤー)を探索した。 trithorax遺伝子群の多くがエンハンサーであるが、polycombは一つしたサプレッサーでなかった。

図4 遺伝子の量的な影響
左側 1遺伝子の欠損 ハプロサプレッサー
3遺伝子の存在 トリプロエンハンサー  su(var)3-9 H3K9メチレース
右側 1遺伝子の欠損 ハプロサプレッサー
3遺伝子の存在 トリプロサプッレッサー
一覧表(実験医学)

図5 su(var)3-9のさまざまなrearrangementでの効果
(a) ある種でのlacZの抑制のvariegation これにsu(var)3-9変異を加えたヘテロの場合 抑制が不十分になる。
(b) white遺伝子の抑制 su(var)3-9野生型を2分子いれると強くなる。
(c) yellowのvariegationでもsu(var)3-9変異をいれると抑制がはずれる。
このようにwhiteだけでなくさまざまな標的のin vivoのヘテロクロマチン化を制御していることがわかる。